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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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第74話 起きろ、賞金首


「ここから先、住宅地と駅近くになります!」


「つまり……ホテルや公衆電話が多い?」


「その通りです! しかしバイクではどうしても目立つので……」


「大丈夫です! 走れます!」


 私とエイトで、叫び合う様にして会話しながらも。

 民家やマンションが立ち並ぶ地域に突入。

 そんな中でもNPCに紛れる様にして、チラホラと武装した人達が現れる。

 これに対して、アサルトライフルで威嚇してみるが……駄目だ、やっぱりこの状況じゃ当たる気がしない。

 こうなれば、前回同様ショットガンで牽制した方が――


『夢月、よく聞け』


「え?」


 慣れないバイクと、物凄く揺れる状態での射撃にパニックになりかけていたのだが。

 インカムから、兄のとても静かな……というか、冷たい声が聞えて来た。


『どうした、“いつも通り”になってるぞ? いいのか? 今、お前は“誰だ”?』


 この言葉に、ゾクッと背筋が冷えた気がする。

 それと同時に、心の中がどんどんと冷たくなっていき……先程まで慌てふためいていた筈の心が、自分でも驚く程冷静になっていく。


『そろそろ本気を出せ。このままじゃ……間違いなく負けるぞ? いいのか? お前は、“シックス”なんだろう?』


「…………」


『いけるか? 賞金首』


「……了解」


 頭の中で、完全にスイッチが切り替わった気がする。

 “のめり込む”、それだけが私の認められた特技。

 ここで失敗すれば、シックスは死ぬ。

 だったら……“生き残る”以外に、方法なんか無い。


「サポーター、指示」


『任せろ』


 今だけは、“シックス”になりきれ。

 普段の私なんて、弱い自分なんて、今だけはいらない。

 生きる為に、殺す。

 ただそれだけで良い。


『バイクはもう邪魔だ、降りろ』


「エイト! ここからは走る! 降ります!」


「りょ、了解!」


 此方の声に対し、octopus8がブレーキを掛けようとしたのだが。

 正面から数名のプレイヤー達が現れたのが見えた。

 なので、真正面にショットガンを構えてから。


「アクセル! 飛び降ります!」


 ドンドンッ! と二連射して威嚇すると同時に、両者共車両から飛び降りた。

 結果、此方の攻撃に警戒した相手は一旦身を隠したが。

 再び顔を出した所に、誰も乗っていないバイクが突っ込んだ。

 とはいえ此方も無事とはいかず、派手に地面を転がってしまったが。

 しかしこっちは身体能力にステータスを振りわけているアバター。

 だからこそすぐさま立ちあがってから、倒れ込んでいたエイトを助け起こしてそのまま裏路地へ。

 やがて落ち着いて来たのか、彼女も普通に走り始めてくれたので、此方は武器を構えながら先頭を行く。


『次の角を曲がった二つ目の窓、左側の建物。そこから室内へ、廊下を突き抜けて反対側に抜ける』


「敵は?」


『さっきの派手な音で、それなりの数が警戒しながらそこへ向かってる。室内には居ないと見て良い』


「了解」


 兄からの指示を貰いつつ、窓を破って室内へ飛び込む。

 クリアリングを済ませてみれば、室内にはNPCが居たが。

 何やら叫びつつスマホを取り出していたので、額に銃口を突きつければ、黙って端末を床に投げ捨ててくれた。

 よし。


「エイト」


「問題ありません、行けます。大通りの様子は此方のサポーターが確認してくれています」


 私に続いて室内に入って来たoctopus8も、シレッとした表情のまま武器を準備。

 先程も使っていた大型のボウガンを手にして、身体にはやけにゴツイベルトが巻かれ……気のせいでなければ、銃火器と言うよりやはり爆発物が多い様だ。


『カメラの映像では建物内に敵影無し。但し外には居るからな? 姿勢を落として、窓の外から見つからない様に気を付けろ。部屋から出たら左に曲がって道なりに、105号室に入って窓から出ろ』


「分かった」


 淡々と続く指示に短い声を返してから、言われた通り低い姿勢のままなるべく急いで移動開始。

 廊下に出てみると、外で響いているらしい怒声がここまで聞えて来た。

 先程事故ったバイクを確認しているのだろうが、私達が居ない事が確認されれば周囲の探索に移るはずだ。

 だからこそ、こちらも急がないと――


「……えぃ」


 移動の途中、後ろから何やら気の抜けた声が聞こえ、チラッと振り返ってみると。

 octopus8が変なスイッチをポチッと押し込んでいるではないか。

 次の瞬間、建物の外からズドンッと大きな音と衝撃が響き。


「…………今のは?」


「あ、えと……気にしないで下さい。せっかくなので、残して来たバイクを派手に爆破しただけです」


 せっかくなので、とは?

 とか言いそうになってしまったけど、先程の爆発で建物が何やら嫌な音を立てている為、あまりゆっくりしていては不味そうだ。

 しかも彼女の方も“本当に気にするな”と言わんばかりに、ポイッと操作したスイッチを床に捨てちゃってるし。

 やってる事は派手なのに、何と言うか……ちょっと気が抜けるな、この人。


『夢月、遅いぞ。早く移動しろ』


「っ、ごめん。すぐ動く」


 兄からも催促されてしまい、そそくさと移動を再開してから、指示されたお部屋に侵入。

 どうやら先程の爆発音で、住民のNPCは野次馬に出たり、避難し始めた者も多いらしく。

 今度は誰も室内には残っていなかったので、そのまま窓から外へ。

 これまた裏道を進み、表の様子を警戒しながら進んで行けば……。


『突き当りに大通りが見えるな? octopus8が注目を集めてくれた影響で、結構な数のプレイヤーがそっちに走り寄っている』


「でも、まだ居る。そのまま姿を見せるのは……」


『その通り、だからタイミングを合わせて飛び出せ。古い路面電車が“丁度良く”通りかかるから、それに飛び乗って移動。少し行った所に公衆電話がある、そこに張っている奴等は――』


「分かった、片付ける」


『良い返事だ。大通りの監視は向こうに任せてあるが……今だ! 走れ!』


 声と同時に走り始め、通りに飛び出した瞬間目の前に現れる路面電車。

 これに飛び乗り、後ろに向かって手を伸ばせば。

 少し遅れてエイトが駆け付け、此方の手を掴んでから彼女もまた列車の後方へ。

 そのまま身を潜めていたのだが……やはり、そう上手くは行かない御様子で。

 此方の姿を確認したらしいプレイヤーが、路面電車に向かって攻撃を開始。

 そこら中に銃弾が当たり、電車は急停止するし周囲からはパトカーのサイレンが聞こえて来るしで、なかなか騒がしい現場となってしまったが。


『走れ! 列車の進行方向右側に、100メートル程度で公衆電話!』


「りょ、了解!」


 軽く姿を見せながら迎撃しつつ、二人で路面電車から飛び降りてダッシュ。

 とにかくoctopus8を先行させ、此方は背後の相手に向かって攻撃を続けていく。

 走りながら、しかも後ろに向かって移動しているのでは、当然当たるモノも当たらないけど。

 それでもとにかく威嚇射撃を繰り返し、弾切れを起こせばすぐさまマグチェンジ。

 散々ライフルの練習をして来た訳だが、やはりこっちはまだ慣れない。

 とはいえ長距離ならハンドガンよりも頼もしいのは確かなので、文句が言える筈もないが。

 などとやっている内に、狙っていた公衆電話が近くなって来たらしく。


「シックス! 正面に三人!」


「牽制!」


「はいっ!」


 適当に後ろに撃ちまくってから、また弾切れを起こしてマガジンを交換しつつ、正面を向き直ってみると。

 彼女が御自慢のボウガンを使ったらしく、前に居たプレイヤーの近くで爆発が起きる。

 これにふっ飛ばされたのが一人、残る二人もかなり驚いた様子で着弾地点に視線を向けている為。


「エイトはログアウト優先! こっちは任せて!」


「し、しかしっ!」


「いいから! この状況なら“慣れてる”!」


 迷うことなく、此方は一直線に敵の元へと飛び込んだ。

 その際ライフルからハンドガンに持ち替え、相手の腹に向かって数発連射。

 苦しんでいる敵を盾にしながら押し込み、もう一人の方へと進んでいく。

 向こうも混乱しているのか、此方に向かって発砲して来るけど。

 それらの銃弾は全て仲間? の背中に呑み込まれ、私にダメージは無し。

 充分に近付いた事を確認し、掴んで盾にしていたプレイヤーを蹴り飛ばし、もう一人に押し付けてから。

 二人の上に飛び乗って、それぞれ額に一発ずつ。

 よし、こっちは終わった!

 などと考えて、公衆電話の方に視線を向けた瞬間。


「キャァッ!?」


 受話器を耳に当てようとしていたoctopus8だったが……あと少し、という所で。

 電話ボックスにドデカイ穴が空いて、公衆電話そのものが破壊されたではないか。

 これって。


『狙撃だ! 恐らくアンチマテリアルライフル!』


「チッ! またソレか!」


 前回のイベントで、恐らく黒沢君と思われるスナイパーが使っていた“対物ライフル”。

 そもそも人間を撃つために使う兵器じゃないって教わったけど、そんな物をまた誰かが街中で振り回しているらしい。

 思わず舌打ちを零して、破壊された電話ボックスから彼女を引っ張り出してみると。


「シックスはそのまま指示に従って逃げて下さい!」


「けど!」


「別々に行動した方が、貴女は生存率が高い筈です! それに……ちょっとイラッと来ました。狙撃手はこっちに任せて!」


 なんか凄い事を言いだしたシスターが、先程銃弾が飛んで来たらしい方角へ向かって一直線に走り始めた。

 いやいやいや、これは……良いのだろうか?

 なんて思ってしまったが。


『夢月! 裏道へ向かって走れ! まだ狙われてるぞ!』


「りょ、了解! けどエイトが!」


『放っておけ! 彼女の言う通り今は単独の方が動きやすい! それに……賞金首同士は、仲間って訳じゃない。良いな?』


「っ!? ……了解」


 少しだけ納得いかないというか、仕方ない事だと分かってはいるのだが。

 前回チーム戦があった影響と、今回は彼女と仲良くなった事もあって。

 モヤモヤとした気持ちを胸に抱きながらも、指示に従って建物の影を進んでいく。


「助けに行くのは……無し?」


『無しだ。それからな……夢月、“信じろ”。彼女だって、お前と同じ“賞金首”だぞ? お前が守ってやらないといけない、か弱いシスターって訳じゃないんだ。だとすると、どうだ?』


「そういえば、そうだった。心配するだけ無駄って言うか、逆に失礼だね」


 そんな訳で、気を取り直してから此方も単独で逃亡を開始するのであった。

 どうか、無事で。


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