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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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第71話 おじさんとおじさんの境界線


 凄い、最近のフルダイブVRってこんなに凄かったのか。

 イベントに参加したは良いものの、何をすれば良いのか分からず。

 料理してみようかなぁって思っていたのに、どこですれば良いんだって話で。

 結局街中をブラついた結果、お菓子を買ってみたのだが。

 ちゃんと、味が分かる。

 ゲームだし、何かこうボヤッと「美味しい」とか「不味い」って分かる程度なのかなぁって思っていたのに。

 今食べているカップケーキ、ちゃんと食べる場所によっても味の違いが分かる。

 トッピングされているチョコだけを摘まんでみれば、本当にその甘味だけが伝わって来るし。

 ケーキをパクッとやってみれば、しっかりとそっちの柔らかさまで食感があるのだ。

 へー、へー!? 本当に凄い!

 これはちょっと、本格的に料理出来る所を探してみようかな。

 とか何とか、公園のベンチで一人。

 チマチマとおやつを食べていると。


「あっ――」


 手に持っていたカップケーキが、ほんの一瞬で何者かに奪われた。

 敵!? とか思って腰のハンドガンへ反射的に手を伸ばしてしまったが……。

 私のケーキを持って行った犯人は、バッサバッサと羽音を立てながら空へ向かって帰って行った。

 と、鳥におやつ取られた……こ、こんな事、現実にあるんだ……。

 いや、今はVRなんだけどさ。

 海辺とかで何か食べていると、パンとかでも持って行かれるってネットで見た事はあったけど。

 街中でも、こういう事って起こるんだ。

 思わず唖然としたまま、遠くなっていく鳥の後ろ姿を見送っていると。


「何をやってるんだか……普段はあんなに反射神経良い奴が」


「え? あ、ど、どうも」


 声のした方向へと顔を向けてみると、呆れ顔の9Kが立っていた。

 どうやら恥ずかしい所を見られてしまったらしく、ポリポリと頬を掻きながらお辞儀してみると。

 彼はちょいちょいっと、周囲を指さして何かを教えてくれる。

 はて? と首を傾げてしまう様な行動だったので、私もそちらへと視線を向けると……なんか、そこら中の物陰にバッと隠れる影がいっぱい居た。


「なっ!? か、囲まれてる!?」


「いや遅ぇよ、気がついてなかったのかよ。“そういうイベント”だろうに」


 9Kから更に呆れた溜息を零されてしまったけど、そういえばそうだった。

 何をすれば良いんだろうって事で頭がいっぱいで、今回は完全に“見られる事”が仕事だと忘れていた。

 だとすると……もしかして、一人でオヤツを食べている所も見られてしまったのだろうか。

 ヤバイ、そうなるとかなり恥ずかしいぞ。

 他のプレイヤーにも、シックスは友達が少ないってバレるかもしれない。


「まぁ良いさ。どうせ合流したんだ、予定が無いのなら一緒に何処行くか? シックス」


「い、良いんですか!? ナインさえ良かったら、是非!」


「これも一応仕事だからな。それから、声は抑えろよ? お前の普段の喋り方だと、多分イメージ崩れるぞ」


 そうだった。

 賞金首の皆には、普段通り普通に喋っちゃってるけど。

 他の人には、シックスが喋っている所なんてほとんど見せた事が無い。

 私のキャラクターは、基本的に無表情のおじさんだし。

 こんなに落ち着きのない喋り方だったら、絶対落胆させちゃうよね……気を付けないと。


「き、肝に銘じておきます」


「程々に、くらいで良いと思うけどな。それで、何か予定は……これと言って無さそうだが。やりたい事とか、そういうのは無いのか?」


 という事で、イベント初日は9Kが同行してくれるらしく。

 最初から非常に頼もしい同行者が付いてくれた。

 一人きりでは、このまま食べ歩きとかするしかなさそうだったので。

 オンオフ共にぼっちの私としては、非常にありがたい。


「あの……ナインは、ガンサバの“クラフト機能”について、結構詳しかったりしますか……?」


「クラフト、か。まぁ程々には、くらいだが……俺の装備も、一応手を加えたりしているからな。それがどうした? 何か作りたい物でもあるのか?」


 おぉ、これは更に頼もしい。

 流石は9K、年上お兄さんって感じが凄い

 という事で……早速。


「料理って、どこに行ったら出来ますかね? あ、それから食材も買っておきたいんですけど……でも、差し入れを作るならお菓子の方が良いのかな……?」


「…………」


「ナイン?」


「あ、いや、まぁ良いか。料理、料理な……見た目だけは、おっさん二人で。了解、付いて来い。ホテルだと他のプレイヤーから見えなくなるからな、それ以外の場所でキッチンを借りられる施設へ行こうか」


 そんな訳で本日の予定が決定。

 9Kと一緒に、ガンサバで料理初挑戦。

 ガンアクションのゲームでやる事ではないと分かっているのだが、お兄ちゃんからもそっちの機能を試して欲しいって言われたし。

 平気、だよね?

 あとで「そういうイベントじゃないです」とか、運営から怒られたりしないよね?


 ◆


 シックスの要望に応える形で、食材何かを揃えているショップに案内してから。

 このイベントの要望に応えるために、それなりにオープンスペースで調理出来る場所へと連れて来てみたのだが……絵面が、酷い。

 無表情の殺し屋風おじさんが、スーツの上からエプロン付けてキッチンに立っている。

 生憎と此方は料理なんぞ出来ないので、椅子に腰かけたままシックスを眺めているだけになってしまったが。

 クラフト機能を教えてくれ、なんて言われたけども。

 ガンサバの“ゲームらしい要素”として語るのであれば、俺だって専門という訳では無い。

 というのも、現実には無いモノを拵える場合などはゲームアシストを使う事になるのだが。

 分かりやすく言うのなら、通常なら物凄く手間がかかる特殊装備など。

 設計から始め、新しい武器や防具を作るというのなら、そっちの専門家に頼めという話になる。

 しかしながら、“現実でも普通に出来る”事に関しては……何も難しい事は無いのだ。

 例えば今シックスがやっている料理などは特に。

 食材を揃えて、あとは普通にやれ。以上。

 俺の場合はギリースーツ(迷彩服)を作るクラフトなどはやった事があるが、そっちも各所簡単に出来る仕様にはなっていた。

 だからこそ、調理も色々と簡単になっているとは思うのだが……やった事が無いので、詳しくは知らない。

 そんな訳で、暇になった俺はスマホを取り出してプレイヤーの反応でも見るか、なんて思ってみれば。


「……まぁ、予想はしてたけども」


 掲示板には、散々な事ばかりが書いてあるではないか。


『なんだあのおっさんは。直接話しかけるとか、イベントの趣旨理解してんのか?』

『OK、通報完了したわ。多分その内運営からBANされる筈』

『お前等www アレ、9Kなwww 公式のページで、一応紹介されてるぞwww』

『一応とか言ってやるなよ。あれでもキルされた数の少なさでは、シックスと並ぶぞ。目立ってないけど、滅茶苦茶強いプレイヤーな? 目立ってないけど』

『まさかの賞金首だった件、草しか生えねぇ。一見普通のおっさん』

『ナインは初めて見たわ。PV出てる? 全然記憶にない』


 酷い言われ様である。

 というか通報されたのかよ、俺。

 まぁうん、目立つ行動、普段全然してないからね……。

 キャラの外見も目立たない様に、案外普通というか。

 服装だって顔を隠す様な物ばかり選んでるしね。

 普通に見たら不審者も良い所と言うか、そこらのプレイヤーにしか見えないのは分かるけども。

 こうも落差が付いてしまっているのは、少々納得いかないな。

 思わず溜息を零しながら、シックスの方の情報を探ってみると……そっちはそっちで、お祭り騒ぎだし。


『トンビからケーキを奪われるシックス、激写』

『その後、鳥に向かって銃を抜こうとする殺し屋の図。しかし鳥には銃口を向けない殺し屋』

『ぼっちから飯取るなwww 鳥www オイ返してやれwww 可哀想だろwww』

『不審者から声を掛けられても、丁寧にお辞儀をするシックス。案外社交的?』

『社交的な殺し屋とは、いったい』

『意外と丁寧で草、というか不審者じゃなくて9Kな。一応向こうも賞金首だぞ』


 オイ、こっちでも俺の扱いはこんなのかよ。


『シックスがナインに連れ去られた』

『え、何か料理し始めたが。おっさん二人で』

『よく見ろ、片方のおっさんは座ってるだけだ。役に立たねぇ』

『賞金首がエプロン装備してる(笑) え、なんか普通に手際良いんだが?』

『気を付けろ、あのエプロンもきっと防弾だ』

『料理中年、爆誕』

『いやもうシックス撮影してれば絶対特別賞取れる気がして来たわ』


 なんでこう、6keyはどこいっても人気が出るんだよ。

 というか何やっても話題になってるのは何なんだよ。

 おかしいだろ、この差。

 女性キャラだから分かりやすく人気を集めているとかいう現象でもないのに、何をしても肯定されてるのは何故だ。

 見た目はおっさんなのに、どうしてここまで差が生れるのか。

 な、なんか納得いかねぇ……とか何とかやっている内に。


「お待たせしました、ナイン。ゲーム内だとオーブンとか、茹で時間も短縮されていて凄く簡単ですね。どうぞ、食べてみてください」


「え、あぁ、すまん」


 早くも料理が完成したらしく、俺の前に出て来たのは……チキンステーキ。

 え、嘘。

 この短時間で、こんなの作ったのか?

 しかもそれだけではなく、次々と目の前の机には料理が並んでいくではないか。

 肉焼いただけ、とかなら分かるんだけど、そこらのレストランよりも豪華じゃないか? って程にフルセット。

 という訳で、早速用意された食事を試しに口に運んでみると。


「うっま!?」


「なら、良かったです。ゲーム内でも、ちゃんと作れるみたいですね」


 鶏皮とかパリッと良い音がする程だし、付け合わせの野菜を食っても十二分に旨い。

 白川妹が料理上手ってのは弟から聞いていたが……マジか、ここまですげぇのか。

 ソースとか何使ってるんだよ、これも今作ったのか?

 なんかもう夢中で食べ始めてしまったが、その後も料理やら菓子作りを始めていたシックスが、何やら端末を取り出した。

 そして。


「あの、ナイン……この教会って、結構遠いですか?」


「んん? 教会?」


 不思議な事を言い始めたシックスが、端末に映った文章を此方に見せて来た。

 どうやら、運営側からのメッセージの様だが……。


「octopus8(オクトパス・エイト)からの、呼び出しか?」


「はい、そうみたいです。イベント中にお話する約束はしたんですけど、詳しい予定は詰めていなかったので……」


 だそうで。

 意外とその辺は適当な所があるのか、コイツ。

 まぁ、これだけ目立つ行動をするシックスに付き合ったのだ。

 俺も今日は十分仕事をしたって事で良いだろう。

 というかこれ以上シックスと居ると、また他のプレイヤーから掲示板で叩かれそうなので。


「コレを食い終わったら、そこまでバイクで送ってやる。少し待っていてくれ」


「あ、ありがとうございます! それじゃ、それまでに差し入れ作っちゃいますね!」


 どうやら向こうにも何か土産を持って行くつもりらしく、パタパタとキッチンへ戻って行く無表情おじさん。

 なんというか……あの見た目で女子力高いって、存在そのものが違和感の塊だな。

 とはいえ、このギャップでも間違いなくファンを取得したらしく。

 掲示板を見る限り、今回のイベント効果は十分に発揮されていると見て良いのだろう。

 武装パックの売り上げ……お零れでも良いから俺のヤツも少しは伸びてくれねぇかなぁ……。

 そして弟……マジで早くこの子を射止めろ。

 ウチに連れて来てリアルで飯作って貰え、マジで凄腕だから。

 ついでに俺の分も作ってくれ、白川妹。

 などと、今は関係ない事を考えつつも。

 とりあえず、用意してもらった飯を平らげていくのであった。

 しっかし、8番目か……元silent(サイレント)の名の通り、ものっ凄く静かな奴だと記憶していたのだが。

 いったい会ってどうするつもりなんだか。



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― 新着の感想 ―
9Kは弟の応援する理由(おいしい食事の為)が増えましたね。 黒沢君は今のところ順調だと思うので、変な圧力がかからない事を祈ります。 ※シックスの料理がうまかったと言えても、『白川妹の料理』とは言えない…
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