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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
3章

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第68話 4696


「ねぇ兄貴、今度のイベントってさ……なんて言うか、あんまりガンサバらしくないよね」


「まぁな~とはいえ、賞金首の扱いがこうなってる以上仕方ないだろ。ついでに言うと運営側の狙いとしては、それと同時に販売開始される武装パックだよ。俺等のファンが増えれば、そっちの販促に繋がるだろ」


 ガンサバとは別のゲームにログインして、本日もスナイプを基礎から教えてもらっている状態。

 射撃の基本、それは“狩り”だ。との事で。

 最近は狙撃銃を片手に、山で獣狩りという。

 何とも時間が掛かる基礎訓練をやっている訳だが。

 相手を待っている間というのは、やはり暇になってしまうもので。

 これもスナイパーなら耐えて当然、という話だが。

 お喋りするなとは、言われていないので。


「お前は何か狙ってるのか? どれか買おうとしてるパックとか、イベント景品で貰えるモデルガンで欲しいのがあるとか」


「……どうかな。ゲーム内で言うなら、そこまで。モデルガンなら……まぁどれでも欲しいけど」


 ハンドガンに関しては、出っ歯から“シックスの2011”を貰ったので。

 “データ”としては、必要無い気がする。

 実物なら欲しいところだけど……でもアレがもしも手元にあったら。

 興奮の前に、嫉妬心の方が燻られる気がするのだ。

 俺はまだまだ全然凄く無くて、でも相手はずっとずっと格上で、このままじゃ俺なんか認めてくれないって分かるから。

 あのハンドガンだって、結局の所シックス専用という事ではなかったみたいだし、自分の考えすぎだって事は分かっているんだけど。

 いつか、白川さんのお兄さんに勝ちたい。

 シックスを倒したいって、本気で思ってる。

 前みたいなラッキーではなく、真正面から戦って実力で勝ちたい。

 だからこそ、今俺がやるべき事は。


「……ちょっと集中するね」


「おう、“来た”な」


 覗き込んだスコープの中に、一匹の獣の姿が映った。

 小さな動物、とはいえ近付けば犬くらいのサイズはあるんだろうけど。

 ソイツに向けて、スコープ内の十字を合わせ、呼吸を落ち着けていく。

 今やっているゲームなら、それなりにシステムアシストがあるけど……ガンサバにはコレが無い。

 だからこそ、俺が慣れようとしているのは相手の行動予測。

 そして何と言っても、観察力を鍛えた上で“当たる”という自信を持てる様になる事。

 これの有る無しで、射撃までの準備時間が随分と変わって来ると教わった。

 だからこそ、更に集中しながら無理やりにでも言い聞かせていく。

 大丈夫だ、当たる。

 この程度の距離なら、何でもない。

 俺ならできる、というか“当てる”。

 一発で、仕留める。

 そうやって自信を保ちながら引き金を引き絞り、パァンと乾いた音が響いてから……パタッと、獣がその場に倒れた。


「お見事、良くなって来たじゃないか」


「本当に少しずつ……だけどね」


「あったり前だ、バカタレ。誰でもいきなり上手くならねぇよ、それこそ“プロ”だってな」


 なんて会話をしながら、仕留めた獲物まで歩いて行くのであった。


「兄貴、確認なんだけどさ……次のイベント、時間が過ぎれば“無敵状態”は解除されるんだよね?」


「あぁ、そうだな。だからこそ、ログアウト時間は徹底しておかないと……それこそ遊びに夢中になって、時間過ぎました~なんて言ったら、周りのプレイヤーが一斉に襲い掛かって来るだろうよ」


 ハッ、と呆れた様に言い放つ兄貴だったが……賞金首だって、人間なのだ。

 例えプロだったとしても、“ミス”は出るかもしれない。

 イベントが一日限定という事でも無い以上、“全然慣れていない頃”か……もしくは、“完全に慣れてしまった後”なら。

 もしかしたら、チャンスがあるかもしれない。

 だってガンサバは、特定の場所に行かないと安全なログアウトは出来ないのだから。


「俺は、写真イベントには参加しないかも。ただ、ずっと相手を“見ている”可能性はあるけど」


「おぉ怖い怖い。ログアウトが一秒でも遅れたら、ズドンと一発ってか? 狙われた賞金首は、堪ったもんじゃないな」


「けど“狙われる”のだって賞金首の仕事の内、でしょ? それにちゃんとルールに沿ってる」


「その通り。まぁイベントの楽しみ方なんぞ、本当に人それぞれだ。好きにやれば良いさ」


 そんな訳で、俺達は練習用に使っているゲームからログアウト。

 あとは……白川さんがログインするようだったら、ガンサバに入ろうかな。

 彼女にはデートしようなんて言っちゃったけど……あの様子からして、しばらく返事は来ないだろうし。

 急かす気はないので、そっちは彼女自身が決めてくれるまで待つとして。

 俺の方は、そのお出かけが実現するのなら……出来れば、それまでにシックスと戦える様になりたいと思ってしまっている。

 もしも彼と戦える程の実力があると認められれば、それは俺にとっての自信にも変わるから。

 他の事には何も自信なんて持てなかった俺だけど、今回は本気で“認められたい”って思っているのだ。

 だからこそ……。


「絶対、倒す」


「はぁぁ……これだから思春期は。無駄に熱いのは嫌いじゃないが、冷静になるのも大事だぞ?」


 事情を知っている兄貴だけは、俺の決意に対してため息を零すのであった。

 そこは応援してくれても良いと思うんだけどなぁ……。

 それこそ、ついに言ってしまったのだから。

 デートしようなんて、もはや決定的な発言を。

 だからこそ、本気で挑まないと。


 ◆


「お、お? おぉ?」


 本日も、いつも通りサブキャラでログイン。

 こっちで早速、料理出来るのか試してみよう! とも思ったのですが。

 前回せっかくoctopus8から新しい靴を頂いたので、そっちを優先してみた結果。


「なんか……凄い。重いけど、凄い」


 装備してみれば、とにかくゴッツイロングブーツ。

 現実でこんなのって売ってるだろうか? などと思ってしまう程に、長い。

 太ももくらいまであるし、超ロングだ。

 いつもの恰好では履けなかったので、わざわざショップで短パンを買って来た程。

 なんかもうミリタリーって言うより、コレ自体が武器って感じの見た目だよ。

 あと、靴底が厚い。

 ちょっと身長が高くなった! とか喜んでしまったが、今はそっちでは無くて。


「なんか、変なギミックみたいなのが付いてるけど……コレは、どうやって使うんだろう?」


 靴の幅より広くなった靴底が、妙に周りに出っ張っているというか……足を囲む四辺に、変な筒みたいな装備が下向きにくっ付いてる。

 これは、何。

 絶対何か出来るやつでしょ。

 あと、裏返してみれば靴底の中にスパイクが見えるのだが。

 今の所トゲは引っ込んでいるし、どうすれば出て来るんだろう?

 アイテムの詳細を確認してみても、“クラフト装備”みたいな内容しか書いてないし。

 取り付けられたパーツ名とかは見る事が出来るけど、何がなんだか私にはさっぱりだ。

 こ、これが“クラフト機能”なのかぁ……って思うのと同時に、作成した人物がフレーバーテキスト(説明文)とか入れないと、使い方すら分かんないのか。

 見た目は凄そうだし、それこそ隠し武器とか出て来そうな外見をしているのだが。

 はて、どうしたものか。

 などと、公園のベンチに座りながら貰ったブーツを眺めていると。


「シロさん? あの……どうしたの? 片っぽだけブーツ脱いで」


「あ……す、すみません。お恥ずかしい所を」


 いつの間にかクロさんがやって来たみたいで、見事に変な所を見られてしまったではないか。

 慌てて眺めていた方のブーツも履き直し、よろしくお願いしますと頭を下げてみれば。


「装備、ちょっと変えたんだね? さっき見てたブーツ、どこかのクエストのレアドロップ品?」


「い、いえ! これは先日他のプレイヤーさんから頂いた物で……クラフト機能というヤツで作られた物みたいなんですけど、ちょっと使い方が分からないんですよね」


 クロさんの方も、変更した装備が気になったらしく。

 じーっと見て来たので、どうぞとばかりに片足をちょっとだけ前に出してみれば。

 相手は此方の正面にしゃがみ込んで、何やら指先をスイスイっと何もない所で動かしていく。

 多分、アイテムの詳細を見ている所なんだろうけど……。

 やってから気がついたけど、これ結構恥ずかしいかもしれない。

 傍から見たら、相手に自分の脚を見せているだけに見えるもんね。

 しかしながら、未だに装備ステータスを眺めているらしいクロさんは真剣な表情。

 服装もブーツに合わせて変えたから、中途半端に太ももあたりは露出しちゃってるし。

 タ、タイツとかも一緒に買った方が良かったかな……なんて、今更過ぎる後悔を抱きながらしばらく耐えていると。


「コレ……作った人、凄いね。結構取得難易度高い装置を、靴底にまとめて組み込んであるのに……全然エラーの表示が無い。つまり、ちゃんと正常に動作するって事だ。レアドロップ系の素材とかも惜しみなく使ってる」


「そうなんですか? 使い方とか、分かります?」


「えっと、そのままでも結構な防御力発揮そうな素材だから、普段はちょっと重いだけの防弾ブーツって考えて良いと思う。でも関節の所とかが、動きを補助する様な物に変わってるのと、靴底に関しては――」


 システムメニューを閉じたのか、此方を見上げようと動き始めたクロさんだったが。

 その行動が、ピタッと停止した。

 そして、一か所に視線を固定しつつ……徐々に、顔が赤くなっていく。


「クロさん?」


「ご、ごめんっ! 装備見るにしても、こんな所でこんな姿勢でやる事じゃなかったね!? ホントごめん!」


 バッと顔ごと視線を逸らし、そんな事を言われてしまったが。

 えぇと……さっき見ていた辺りというと?

 ここで、こちらもボッと顔が赤くなった気がする。


「す、すみません! お見苦しい物をお見せしました!」


「いえいえいえ! とても素晴らしい“絶対領域”でした!」


 絶対領域ってなんだ、とは思ったけど。

 多分露出した部分の太ももの事を言われているのだろうと理解し、意味は無いが手で隠してしまった。

 今度……やっぱりタイツか何か買おう。

 短パン履いてるから仕方ないって言えばそうなのだが、まさかあんな間近で見られる機会があるとは思っていなかったので。

 別に見られても問題無い所ではあるはずなのだが……何かこう、お互いに恥ずかしくなってしまったのであった。

 私なんかの脚を見ても、誰も喜ばないでしょうって分かってはいるんですけどね。

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