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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
2章

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第50話 アベンジャー


 その後、どうなったかと言いますと。

 一応……勝ちました、賞金首チーム。

 最後に残った9Kが、敵側の狙撃手……というか、恐らく黒沢君を撃破。

 そして一人だけバイクに乗ってゴールまで一直線。

 残るプレイヤー達に関しては、大規模な警察の加入によってろくに動く事が出来なかった様だ。

 初回だからこその保険、というか。

 実のところ今回は、最初から完全勝利を狙うのではなく、とりあえず一回目はプレイヤー達の様子を見てみようという作戦で決行していたのだ。

 なので基本的に、それぞれの端末は自分で保持。

 だからこそ、最後は私が皆から預けられた訳ですけども……まぁ見事に、アタッカーは皆揃って爆散。

 もしかしたら端末くらいはどうにか残っていた可能性もあるのだが、それをプレイヤー側が確保する事は無かった。

 何と言っても、最後の盤面崩しでハチャメチャになったそうだ。

 簡単に言うと、最後まで私達を追い詰めたプレイヤー達、ほとんど皆逮捕されちゃった。

 なので、端末を回収する事が可能だったとすればポリスのみ。

 そしてどうやら黒沢君達のチームは、三人で参加していたらしく。

 運営側が確認した結果、自分達だけでは止められないと判断したのか……国家権力を盛大に招集したらしい。

 街中で賞金首とプレイヤーが暴れていたからね、ポリス側の警戒レベルも相当爆上げされていた御様子。

 そこに出っ歯さんが、アレコレと警察へと説明している“ゲーム内の通報”のログが残っていたそうだ。

 さ、流石にコレばかりは予想していなかった……というのは、私達賞金首だけでは無かったらしく。

 運営側も、今後は少しだけ手を加えると言っていた。

 まさかこのゲームの警察を、しかもイベントで、ここまで“正しく使う”プレイヤーが居るとは思っていなかったみたいだ。

 ついでに言うと、これをやって賞金首四人を一斉に処理した彼等のチーム……というか一番目立っていた“出っ歯”さんに、プレイヤー側から結構なヘイトが向いているんだとか。

 本人は高笑いしつつ、賞金首を倒したのは俺だぁ! とばかりに中継動画とかに映ってしまったみたいだし。

 それはもう見事に炎上し、運営側はむしろ彼に向かう矛先を収めるのに必死。

 まぁでも、ゲーム内にあるシステムを最大限使っただけだもんね。

 普通に凄いと思う、というか実際それで成果を上げたのだから、そこまで責められる行為ではないとは思うのだが。


「夢月~? 元気出せ? 大丈夫、ほんと大丈夫だから」


「…………うぅぅ」


 悔しくないかと言われれば、全然そんな事は無かった。

 むしろショックが何度もぶり返して、お兄ちゃんが帰って来るまでの間、布団の中でまた泣きました。

 初回のチームイベントが終わってから、賞金首の皆は「大丈夫だ」って言ってくれたけど。

 もしも私があの場でちゃんと生き残って、残る全ての端末をゴールへと運べていれば。

 負傷者は出したとしても、スコア的には大勝利だったのに。

 なのに、私がさっさと動かなかったせいで……“私達は”、少なくともアタッカーは負けた。

 何とか9Kが試合としての勝ちを拾ってくれたけど、それでもとんでもなく悔しかったのだ。

 試合に勝って、勝負に負けたってこういう事を言うんだろう。

 結局皆には謝ってばかりのままログアウトしたし、帰って来たお兄ちゃんにはずっと慰められているという。

 高校生になってまで、何をやっているんだと言われそうな状況になってしまった訳だが。

 それでも……泣く程に、悔しかったのだ。

 6keyで初めて黒星を上げた事もそうだけど、何より悔しいのは。

 皆が、私を頼ってくれたのに……その願いを、叶えられなかった事。

 いつもだったら、失望されたんじゃないかとか、私が居ない方が上手く行ったんじゃないかとか。

 そういう事ばかり考えて落ち込んでいた筈なのに。

 ずっとずっと、どうしようって焦ってばかりだった筈なのに。

 今だけは……今回ばかりは。

 情けない自分自身に、怒りを覚える程の悔しさを感じていた。


「……PVPって、ガンサバで初めてやった……けど」


「そうだな。いつもお前はソロで、NPC相手のゲームばっかりだったもんな」


 未だ情けなく布団に包まっている私に、お兄ちゃんはポンポンと優しく手を乗っけてくれた。

 普段の私だったら、無理だーとか、もうヤダーって兄に泣きついていた事だろう。

 けど、今だけは拳を痛い程握り締めていた。


「悔しいんだね……“負ける”って。やられるのが当たり前じゃない環境だと、こんなにも……“苦しい”んだね。しかも仲間もいる状態だと、余計に……自分が許せなくなるくらいに」


「そうだな。本気であればあるほど、真剣に向き合っていればいるほど。“対戦”ってのは、結構キツイんだよ。勝負は絶対に勝ち負けが発生する、皆がハッピーエンドって訳にはいかない。所詮ゲーム、なんて言ったところで……お前の悔しさは、間違いなく“本物”だ」


 今まで、私は勘違いしていたのかもしれない。

 ゲームは楽しむモノだから、自分が満足できる所まで突き進めれば良い。

 凄いスコアが出せれば、自分さえ納得出来ればそれで終わり。

 そういうプレイスタイルだったからこそ、見落としていたのだろう。

 ずっと一人で遊んでいたから、誰とも関わって来なかったから。

 けどPVPは相手だって同じ人間で、向こうだって本気で私に挑んで来るんだ。

 これまで培った物全てを使って、全力を出し切って。

 その上で、戦いを挑んで来る。

 これに対して、今まで6keyはどうだった?

 普段通りに、練習と同じ様に。

 ただただ出来る事だけを繰り返して、失敗しそうになると心の中でヒーヒー喚き散らして。

 どうにか形だけ取り繕おうと必死で、他の誰かの事なんて考えた事もなかった。

 お仕事だからとか、ゲームだからなんて今は関係ない。

 ちゃんと向き合った瞬間、というか“負け”というモノを本当の意味で味わった事によって。

 初めて、気がついた。

 私はずっと……“誰にも負けたくない”って、本気で思っていたからこそ頑張れたんだって。

 ゲームは人生の教科書みたいなモノだ、なんてお兄ちゃんが言っていた事があったけど。

 本当に、その通りだと思う。

 まさに“ロールプレイ”、キャラクターになってその人生を味わう事。

 でもリアルの私は、ずっと逃げ回ってばかり。

 絶対こんなに“本気”で、何かに挑もうとなんてしてこなかった。

 でもVRで、ゲームの世界でソレを知った。

 のめり込んで、全力を出して、自分の全部を使って。

 その上で“負けた時の悔しさ”まで教えてくれた。

 心が潰れそうになるくらい苦しくて、悔しくて悔しくて奥歯を噛みしめながらも、変えられない過去に涙が零れる。

 やっぱり、お兄ちゃんの作るゲームは凄いよ。

 だって……今、私。

 これまでに考えた事もない様な事を、馬鹿な願いを思い切り胸に抱いているんだから。


「お兄ちゃん、私……皆と同じ様に、“プロ”になりたい。せめて、そう名乗れるくらい上手くなりたい」


「賞金首の皆、って事だよな?」


「……うん、皆凄く強い、凄く格好良いんだよ。だから私も、胸を張って皆と並べるくらい……“強く”なりたい。ゲームの中でくらい、私は格好良い人間で、凄く強い人なんだって自分で胸を張って言えるくらい……皆みたいに、“凄い人間”になりたい」


「……そうか。良いんじゃないか? お前は、今でも十分強いが。それ以上を目指したいって思ったのなら、そりゃ良い事だ。所詮ゲーム、されどゲーム。遊びだろうが何だろうが、“てっぺん”を目指すってのは相当難しい事なんだ。でもお前は、“やってみたい”んだろう? だったら、お兄ちゃんは全力で応援するぞ? お前が“本気で願う”のなら、俺だって“本気で手伝ってやる”。それが、兄貴ってもんだ」


 兄の言葉を聞いてから、ノソリと布団から這い出した。

 そんでもって、グシグシと強めに目元を擦った後。


「これを仕事にしたいとか、これで食べて行きたいなんて大袈裟な事を言うつもりは無いけど……それでも、悔しいから。もう、負けたくないから。特に6keyは……皆の言う“シックス”は。私にとって、皆にとっての彼は、“負けちゃいけない”存在だから」


「ハハッ、いいね。お前がそこまで拘る事なんて、今まで無かったもんな。また一つ成長だ、夢月。だったら今度は……絶対負けないくらいに、本気になってみようぜ。そういう経験は、リアルでもすげぇ役に立つもんだ。また一つ、大人になったな? 偉いぞ、良くやった」


 そう言ってから、兄は私の頭をワシャワシャと撫でて来るのであった。

 遊びだから、ゲームだから、アルバイトだから。

 そういうのじゃなくて、とにかく“負けたくない”。

 確かな願いが、人生で初めて……揺るぎない感情と共に、この胸に復讐の炎を灯し始めたのだ。

 シックスは、もう死なない。

 一度死んで、棺桶から蘇る。

 これからの皆の前に現れる“シックス”は、絶対に負けないブギーマンになると誓おう。

 例えそれがヴァーチャルの世界だったとしても。

 その存在は、確かに皆の心に残る筈だから。

 だったら私は……“本物シックス”になる。

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