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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
5章

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第111話 相手を知る為に


「お疲れ様、夢月」


「こ、怖かったぁぁ……」


 ログアウトしてからすぐに、私の部屋にはお兄ちゃんがやって来た。

 最近はサポート時に家で作業をする事を結構許されているらしく、度々家でお仕事をしている。

 リモートで働くとか、凄い。

 現代社会人だぁ~って感じがする。

 こういうのも、能力が無いと出来なそうだけど。

 とか何とか思いつつも、先程の戦闘が終わった事に思い切り安堵の息を零してしまった。


「この後、早乙女さんも含めて会議する予定だけど。夢月は自分の部屋で参加するか? 無理そうなら、休んでても良いけど」


「ううん、出る。変な勝ち方したから、スリーにも謝っておきたいし……」


 自分でも思うけど、アレは無い。

 だってこれ、銃のゲームですよ。

 だというのに、使ったのが子供だましみたいなトラップ。

 腐食した柱に鉄の棒を突き刺して、相手に突っ込んでもらうって……向こうが誘いに乗らなかったら、その時点でアウト。

 本当に今回は運が良かったとしか言いようがない。

 角度とか高さとか、ほんの少しでもズレていれば間違いなく負けていたのは私だろう。

 たまたま勝っただけで、もう一回やったら絶対対処される。

 というかあの一回でさえ、また“見てから回避”が発生しそうでビクビクしたくらいだ。


「とはいえ、勝ちは勝ちだ。そこを変に謝るのは違うぞ?」


「で、でもぉ……じゃぁなんて声を掛ければ良いのか」


 前にsevenと戦った時みたいに、すぐに相手の反応が知る事が出来れば良かったのだが。

 今回は映像の一角だから、サクッと撮ってそのままオンライン会議で~と言われてしまい。

 そのままログアウトする手はずとなっていたのだ。

 ふぉぉぉ……なんて声を掛ければ良いか分からないよぉぉぉ……。

 謝恩会の時は物凄く優しくしてくれたし、物凄く安心出来るお姉さんって感じだったのに。

 私、物凄く変な戦い方して失礼じゃなかったかなぁ!?

 なんて、不安に押し潰されそうになりつつグネングネンと身体を捻っていると。


「あ、あぁ~えぇと。俺の部屋で、一緒に会議参加するか? 放っておいたら、なんか暴走しそうだし」


「ごめんなさい、それでお願いします……一人で居たら、絶対テンパる自信がある……」


 という事で、良い歳の筈なのに。

 謝罪する時、親同伴で参上するみたいな情けない結果に。

 でもアレは無いよぉぉ。

 相手に恥をかかせたとか思われたら、本当にどう謝れば良いのか。

 もはや思考が全部悪い方向へ向かってしまい、兄の袖に引っ付きながら一緒のカメラに映る事にさせていただいた。

 ごめんなさい、いつも変な戦い方ばっかりで。

 このゲームの趣旨無視しまくっている上に、こんな事ばっかりやっていたらまた運営側を困らせそうで怖い。

 初期ハンドガンの件でも色々迷惑かけたのに、これ以上は本当に不味い気がする……。


 ◆


 その後皆で会議した結果……全然問題ありませんでした!

 伊丹さん(奥さん)に関しては、何かもう通話を繋いだ瞬間から大絶賛してくれた上に。

 あの戦闘を第三者として見ていたらしい早乙女さんからは、新しい一面が見られたと褒められた。

 映像も結構ハードめというか。

 アクション映画なんかに時たま発生する“ちょっとグロテスクなシーン”みたいで、むしろ話題性あるらしい。

 それは、良いのでしょうか。

 などと思っていたけど、スリーのサポーターさんからは、ちょっと引き気味な反応だったのでやはり反省。

 スミマセンデシタ。

 色々用意していた筈の謝罪の言葉は吹っ飛び、終始兄にしがみ付いたまま会議に参加するという情けない映像は残してしまったけど。

 とにかく、問題無く今回の件も一段落したらしい。

 ついでに言うと。


『かなり急ぎというか、今の熱が冷めない内に! って感じだとは思うんですけど、6keyさんが使用している新しいハンドガン。こちらもコラボモデルのトイガンとして企画が進んでいましてね? その試作品が近々会社の方にいくつか届く予定です。今度差し上げますので、是非実際手に持って感想を頂ければと思います。向こうも本人の意見を欲しがっていますし。という事で白川君、届いたら貴方が責任もって持ち帰って』


「うっす早乙女さん、了解しました。しっかし……完成版って訳ではないのは分かりますけど、早いですね」


 そんな話題が、急に上がって来た。

 えぇと? 私が、というか6keyが貰った新しいハンドガンって事で良いんだよね?

 アレが、もうリアルに存在するって事?

 いや、凄っ!?

 というか私が貰っちゃって良いのだろうか。

 だってソレ、まだ売ってないどころか、情報さえも公開されてないって事だよね?

 怒涛の如く新しい話題が降って来て、早速いつもの脳内フリーズ状態へと陥ってしまったが。

 翌日。


「んじゃ近い内にお土産持ち帰るから、楽しみにしておけよ?」


 なんて一言と共に、兄は出社して行き。

 私も普通に学校。

 前回のイベント中は結構バタバタしていたし、本当に一区切りついたって事で良いと思ったのだが……。


「あの、えぇと。黒沢君? 今日のお弁当、何か……思う所がありましたか?」


「い、いや!? そんな事無いよ!? いつも通り、滅茶苦茶美味しいです! ありがとうございます!」


 私がいっぱいいっぱいだった事もあって、リアルの方でもアワアワしていたので気が付かなかったけど。

 一度落ち着いてみると……なんか最近、黒沢君が変だ。

 ずっとソワソワしているというか、落ち着いていない感じ。

 もしかして、今日のお弁当が口に合わなかったのかな?

 なんて思ったりもしたけど……思い出してみると、ここの所ずっとこんな雰囲気だった気がする。

 私、何かまたやらかした?

 とか何とか、“いつも通り”の思考回路に逃げそうになるけど。

 これだって多分、言い訳だ。

 ついこの間までは“お仕事”があったからこそ、無理矢理にでもそっちに集中出来たが。

 それが終わってしまって、改めて向き合う他無くなった心境。

 今でも記憶に焼き付いているのだ。

 この人に、銃を向けた時の事を。

 だからこそ気まずくて、申し訳なくて。

 もっと言うのなら……もう一回真正面から彼の事を見つめる自信が無くて。

 ここ最近ずっと視線を逸らしていたのは、私の方だった。


「ごめん、なさい……」


「い、いや本当に美味しいよ!? 白川さんが謝る事とか、本気で一つも無いから!」


 慌ててそう声を掛けてくれるけど、その優しさが逆に心に来る。

 あんなの、ゲームなんだから大した事じゃない。

 分かっているのに、“のめり込んだ”私は……あの光景に、本気で恐怖してしまったのだ。

 VRをやっていて、こんな事を思ったのは初めてだった。

 普段怖い怖いと口走っても、心の何処かでは余裕があった筈なのに。

 悔しいと思ったから、本気で挑む。

 あの気持ちは、本心だ。

 でもそれと同時に、これまで以上に“のめり込む”癖が付いたのも確か。

 こんなんじゃ娯楽に触れる資格すら無い気がして来るけど……。

 けどあの一件は、タッグ戦の一戦目の最後だけは。

 心の底から、怖いと感じてしまったのだ。

 私があの時手にしていたのは、相手を殺してしまう武器なんだと改めて実感したと言っても良い。

 全身がゾッと冷えるどころではなく、硬直して動けなくなる様な感覚。

 こんな気持ちになるのなら、彼に撃って欲しかった。

 以前の“負けたくない”という決意を裏切る結果に陥っても、この人に撃たれるのなら納得出来るというか。

 6keyを倒すのが黒沢君なら……自然と、受け入れられる気がして。

 これすらも、私が苦しみたくないという“逃げ”の選択なのだと分かっていても。


「あ、あのさっ! ちょっとだけ、話題が変わっちゃうんだけど……良い?」


 此方の様子に気を使ってくれたのか、彼は元気な声を上げてくれる。

 それに対して、こちらも頑張って笑みを作ってから頷いてみると。


「その……さ。“デート”って、俺みたいな陰キャからすれば特大イベントで、それこそ辿り着いただけでもゴールって気がしてくるけど……さ。でも実際には、相手を知る機会でもある……と、思うんだよね」


「は、はい? えと、あぁ。そ、そうかもしれませんね? お付き合いして無くても、デートする人は居るって……思います。映画とかの知識ですけど」


 本当に急な話題転換に、こっちの思考回路が付いて行かなかった。

 しかも、よりによってまた“デート”の話題。

 私が一番慣れていないと言っても過言ではない、男女の話題というか。

 この手の話になると、やはり恥ずかしくなってしまい……。

 自分でも分かる程に、顔が赤くなっていくのが分かる。

 彼から“お誘い”を頂いているからこそ、というのもそうなのだが。

 相手をちゃんと知ってから、お互いに楽しめる環境を作る為に~とか言いつつ。

 いつまでも答えを出さない私に対し、それこそ催促されてしまったのか?

 だとすると、どうしよう。

 私は何と答えるのが正解なんだ?

 などと、早くも一人で脳内がパンクしそうになっていると。


「だから、ね? 白川さんが俺の事を知りたいって言ってくれた事は凄く嬉しいし、理解した上でって考えると……凄く、楽しそうだなって俺も思う。なんだけど……ね? 俺も、その……白川さんの事をもっと知りたいって言うか」


「わ、私の事ですか!?」


 どうしよう、コレは不味い事になった。

 私など知ってもらったところで、ボロしか出ない。

 前回映画に行った時ですら、全身sevenコーディネート。

 どうにか一緒に居ても失礼の無い“ガワ”を整えたに過ぎないのだ。

 つまり中身を知られれば、失望される未来しか待っていない気がする。

 だからこそ、どうにか格好悪い所は見せない様にと心がけていたのだが……。


「わ、私なんか、その……全然、大した事ない人間ですから。きっと、ガッカリさせちゃう事ばかりだと……思いますけど」


 いつも通りの弱音を口にしながら、これまた視線を逸らしてしまった。

 コレが、普段の私。

 自信が無くて、他の人に自慢出来る事など一つも無い。

 だからいつも、VRの世界では他人を演じる。

 これになり切る事で、リアルの私を忘れられる気がして。

 そんな風に思っていたのだが。


「自信が無いのは、俺も一緒だから! 別段顔が良い訳でもなく、運動神経も良くないし、頭だって良くない! ソレが俺で、白川さんに自慢出来る事なんて一つも無いんだよ!?」


 彼が慌てた様子でそんな事を言い放った瞬間、何も考えず相手の方へと顔を向けてしまった。

 そして。


「なっ!? ち、違いますよ! 黒沢君には、良い所がいっぱいあります! いつも凄いなって、尊敬するって思ってます!」


「だったら俺だって同じ気持ちだよ!? 白川さんの事を凄いっていつも思ってるし、一緒に居て凄く楽しいって思うよ!?」


「あり得ません! だって私なんか――」


 普段だったら絶対上げないような大きな声を上げ、思わず言葉にしてしまう。

 黒沢君が自己否定している所を、見たくなくて。

 それに、無理して私なんかを褒めなくて良いって思ってしまって。

 なんて、思ったはずなのに。


「また、私“なんか”って言った。そこだけは、嫌いだ」


「うっ……」


 彼から“嫌い”という言葉を貰った瞬間。

 自分でも驚く程に、ズキンと胸の奥が痛んだ気がした。

 弱い私は、たったそれだけで泣きそうになってしまったけど。

 けど彼の言葉は、そこで終わらなかった。


「だからさ、“普通じゃない”デートを……しませんか? お互いに凄いって言い合っても、多分納得しないから。だったら、一緒に出掛けて、お互いに駄目な所をいっぱい見せるデートを、しませんか?」


「…………え?」


 ちょっと、言っている意味が分からないというか。

 だってそういうイベントって、楽しいって思って貰える為に頑張るんじゃ?

 でもsevenの言っていた事を思い出すのなら、それだけじゃ駄目っていうか。

 あ、あれ? 本当によく分からないんだけど。

 再び混乱し始めた私に対し、彼は改めて正面から向き直り。


「俺は絶対に“完璧”ってヤツにはなれないからさ……こういう駄目な所もあるって、見て欲しいっていうか。それも、お互いに“知る”事な訳でしょ? それに白川さんが“自分は駄目だ”って思う所も、俺は知りたい。そういうのを全部ひっくるめて好――お互いを知る、のも……大事だと、思いまして」


「確か……に?」


 私だって、いくら頑張っても“完璧”というモノになれる気がしない。

 なので言っている事は分かるというか。

 頭では納得してしまったのだが……あれ? これは、デートとしてアリな事なのか?


「なので、ですね……それこそ、予定も何も立てずに……一緒に、格好悪いデートを、やってみませんか……という、お誘いな訳でして。もちろん急いでって訳じゃないから、ゆっくり、落ち着いてからで……良いので」


「え、と……ぁの、えぇと……はぃ」


 もはやポカンとしつつ、思わずそんなお返事を返してしまうのであった。

 よく分からないけど、どうやら……悪い所を見せるというデートが、決定してしまったらしい。


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