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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
4章

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第108話 楽しいを形に出来た気がする


「ほわぁ……」


 情けないため息を零しつつ、現在料理中。

 とは言うものの、炭火のキッチンをお借りしているので、いつもとは加減が違う。

 だからこそ、集中しないといけないんだけど……どうしても、心が追い付かなかった。


「シロちゃんシロちゃん! これもう食べて平気!? 超美味しそう!」


「あ、えっと……それじゃ、最後にタレを掛けますので。ほんのちょっとだけ、待ってください」


 そんな事を言いながらも、網の上に乗っかった串焼きを隅の方へ持って行き、専用のタレをヘラで塗り塗り。

 その後軽く焙ってから、目の前に居るsevenに渡してみれば。


「ん~~、美味しい! シロちゃんのご飯、ずっと食べたいと思ってたんだけど。キャンプ料理も上手なんだね!? すっご、マジで尊敬するわ!」


「きょ、恐縮です」


 受け取った串焼きにかぶりつき、頬を緩ませるseven。

 はい、現状何をしているかと言いますと。

 色々忙しいイベントが終わったという事で、賞金首を招いての謝恩会が開催されました。

 とはいえ固い雰囲気ではなく、ものっ凄くフリー。

 最初は兄の背中に隠れていれば何とかなる! みたいな雰囲気で参加したのに。

 本社へと向かってみればバスで長距離移動。

 ココどこですか? と聞きたくなる大自然の中へと連れて来られて、キャンプ合宿みたいなものが始まってしまった訳だ。

 これらも詳しく企画書に書いてあったらしいが……すみません、悶えるばかりで見落としてました。

 なんでも参加出来る賞金首と、そのサポーターと他少数名。

 これくらいしか集まらず、皆で休日だと思ってワイワイしましょう~という席みたいだ。

 そんな訳で、オフで会ったらまずsevenに絡まれるという。

 いや、此方としては非常にありがたいんですけどね?


「シ、シックス……えと、下処理これで大丈夫ですか? 間違ってたら、言って下さい」


「ありがとうございます。大丈夫ですよ、エイト。とっても綺麗に出来てます、凄いです」


 意外な事に、やっぱりオフ会というのは私の中でハードルが下がる様で。

 今回実際には初めてお会いした、octopus8。

 普段だったら絶対お互いペコペコしっぱなしになってしまいそうなのに、意外と普通に喋る事が出来た。

 ついでに、やはり彼女も知らない人と喋るのには慣れていないらしく。

 私の近くで、ずっと料理の手伝いをしてくれているという。

 こういう事は全然しないと言っていたのに、とても器用。

 お願いした海老の皮むきとかの処理を、凄く綺麗にこなしてくれたではないか。

 一回教えれば、本当に完璧にこなしてくれる。

 やっぱり、賞金首は皆凄い人揃いだ。

 そんなこんなしながらも、とにかくバーベキューメニューを拵えている訳だが。

 なんというか……凄い。

 賞金首の皆様は、意外と普通なんだけど。

 集まって来たサポーターの面々が、「自分も健康になるんだ」みたいな事を言いつつ私のご飯を食べてくれる。

 お手伝いは物凄くしてくれるけど、食べる事にも凄く夢中。

 えと……お役に立てたようで、何よりです?


「ハハッ、大人気じゃないか。俺達も貰って良いか?」


「そこの河原で魚釣って来ましたよぉ? こっちは網じゃなくて、焚火で焙るとかですかね? それっぽい簡易かまどは既にキャンプ地にあるし、魚も人数分以上はあるんで問題なしっす! シックスは忙しいみたいっすから、こっちは俺等がご馳走しますねー!」


 キャンプを満喫しているらしい4cardと555が、クーラーボックスを抱えて戻って来た。

 後者に関しては初めて会ったんだけど、なんかもう555って感じが凄い。

 わりと軽い雰囲気、でも大人って格好。

 なのに喋り方はいつも通りで、私にも喋りやすい環境を作ってくれる。

 あと、話の盛り上げ方がとにかく上手い。

 そんでもって、今回私がある意味一番驚いたのが……。


「白川妹、こっちの貰って良いか? うっまそう、一回食い出すと止まらねぇわコレは」


「あ、はい。どうぞ……その、“お兄さん”」


「こらこら、前みたいに普段通りで良いっての。気を使い過ぎると、逆に疲れるぞ? って、作らせっぱなしだもんな。俺等でも出来そうな事は代わるぞ? 白川妹も食え食え、タダメシなんだから」


 軽い口調でそんな事を言って来るのは、9K。

 どこからどう見ても、見覚えがあるというか。

 間違い無く、お会いした事がありますよね。

 顔合わせ云々の話があった筈なのに、既に個人的にリアルで遭遇してますよね?

 むしろ……。


「なんとお呼びすれば……」


「いつも通り、ナインで良いっての」


 黒沢君のお兄様が、何故かいらっしゃるのですが。

 よく考えればね? 確かに声似てたね?

 この落ち着いた雰囲気も、まさに9Kだったね?

 お仕事もVR関係だし、プロとか何とか色んなお言葉も聞いていた気がするね?

 何で気が付かないかなぁ……私。

 向こうはすぐに気が付いたらしく、キャンプ場に来てからネタばらしされてしまったが。

 しかしながらやはり、こういう“仕事”関係は家族にだって教えてはいけないらしく。

 黒沢君本人には内容を伝えていないとの事。

 つまり、私が6keyだって彼にはバレていない。

 よ、良かった……そこだけは、良かった。

 変な所で気まずくなるのとか嫌だし、私が性別偽って賞金首やっているってバレるのも恥ずかしいし。

 という事で、9Kに対しては今後ともゴマ擦りを徹底しておかなくては。

 などと思いつつ、彼に対して次々と料理を提供しているのだが。


「ホレホレ、若い子の料理にばっかり夢中になってる男性陣はこっちにもおいで~? 出来たぞー?」


「ウチの奥さんも料理上手ですから、良ければシックスも食べてみてくださいね? 後は焼くだけなら私に任せて……あぁ、最後に仕上げがあるんでしたっけ? そちらを軽く教えてもらって良いですか?」


「す、すみません先生……あと、奥様も。いただきます、凄く美味しそうです」


 元気な声を上げるのと、此方に対して自然と休む様に促して来るのは……なんと賞金首の2番目と3番目。

 この前のイベントでタッグを組んだsecond、しかもリアルでも会った事がある人だし。

 こちらは割と問題無く馴染めたのだが……奥様、まさかの奥様。

 夫婦揃って賞金首って時点で、物凄くビックリというか。

 いやなんだこの夫婦!? 凄すぎない!? って言いたくなる組み合わせではあったのだが。

 リアルで自己紹介されて、思わずポカンとしてしまった。

 だってこの人……メンタルクリニックに居た、看護婦さんだ。

 というか受付に居たので、全然意識していなかった。

 何だあのクリニック!? 賞金首が二人も居る!

 映画じゃないけど、襲撃とか掛けられても絶対生き残っちゃうタイプのご家族だ!

 などと思っていたんだけど、奥様は物凄くフレンドリー。

 しかもsecondと共に働いている影響か、話しているだけでも凄く落ち着く感じの女性だった。

 もう……色々凄い。

 賞金首がいっぱいだぁ。

 もはや意味の分からない感想を浮かべつつも、奥様に作って頂いた焼きそばを受け取り。

 網の方はsecondに交代した状態で、モグモグとご飯を食べ始めてみると。


「本来なら私達の方で全て整えるべきなんですが……すみません、夢月さん。こういう場所でも、凄く料理上手ですね」


「あ、早乙女さん! お疲れ様です!」


 隣に座って来た彼女、賞金首の統括役でありsevenのサポーター。

 我らが早乙女リーダーは、此方にジュースを差し出してくれた。

 ありがたく頂戴してから、クピクピと傾けていると。

 どうやら本日は運営陣もかなりフリーダムらしく、彼女の片手には昼間からお酒が握られているではないか。

 まぁ、そこは良いとしよう。

 こういう席で、しかも皆で楽しもう! っていうのが趣旨みたいだし。


「ぇと……今回、賞金首の1番目と10番目に関しては……」


「あの二人に関しては……すみません、どうしても予定が合わなかったみたいで。住んでいるのが遠方という事もあって、自分達に遠慮せず皆の時間が合うタイミングで~と。今回は、不参加という形ですね」


 この席に参加しているのは、2~9までのナンバーズ。

 担当さんは皆揃っているみたいだけど、此方としては二人程欠けている状態となってしまったのだ。

 そうなってくると、私達だけ良いのかな……とか、思っちゃったりもするけど。


「しかしお二人共、次の機会には絶対に予定を合わせて参加すると言ってくれていますから。これだけの面々が揃っただけでも、かなり貴重です。夢月さんは気にせず、存分に楽しんでくださいね?」


 こちらの心境を察したのか、早乙女さんからそんなお言葉を頂いてしまった。

 なので、ペコッと頭を下げつつ。


「私、こういうイベントって本当に苦手だったんですけど……でも今、凄く楽しいって感じてます。ほとんど知り合いみたいな感じですし、担当さん達も皆気さくに話しかけてくれ。なんて言うか、“ここに居て良い”んだなぁって」


「我らがシックスを否定する面子なんて、この場に居る訳がありませんよ。貴女はもはや、ガンサバイブオンラインにおいて“無くてはならない存在”になっているんですから。それこそ、宣伝頭ですね」


「そんな風に言われちゃうと……自信無いというか、恥ずかしいですけど」


 やけに褒めて来る早乙女さんに対し、此方は肩を潜めつつ。

 周囲の光景に視線を送ってみれば……なんて言うか、皆凄く楽しそう。

 美味しいって言いながら好きな物を食べたり、キャンプ場だからこそ出来る遊びを始めてみたり。

 私からしたら、皆大人だというのに。

 それこそ子供みたいに笑いながら、この休日を過ごしている雰囲気だった。

 なんか……良いな、こういうの。

 学校行事とかでこういう所に来た時は、全然居場所がないって思ってしまったけど。

 でも今は、多分何処に行っても受け入れてもらえる気がする。

 図々しい考えかもしれないけど、誰に話しかけても笑って声を返してくれる気がするのだ。


「夢月さんも、いっぱい楽しんで下さいね? それこそ今回は、本当に我儘を“上”に通して来ましたから。本気でフリーダムに過ごして問題無いです。夢月さんとしても、シックスとしても、どちらにせよ羽を伸ばして頂ければと」


「きょ、恐縮です。普段からお世話になりっぱなしなのに……」


 などと会話しつつ、二人で食事を進めていると。


「夢月、準備出来たぞ? もう始めちゃって良いのか? アレ」


 ウチの兄が、皆からちょっと外れた位置から此方へと帰って来た。

 そして、お兄ちゃんが親指で指し示す先にあるのは……銀色の箱。

 まごう事無き、“燻製機”である。

 我が家にも一個あって、本当に数回しか使った事が無い代物だったのだが。

 今回は何と、兄が会社に相談した結果。

 余った経費で早乙女さんが用意してくれたらしい。

 良いんですかソレは、と言ってしまいたくなったが……何か理由をつけてゴリ押すらしい。

 そんな訳で、食べ終わったお皿を片付けながら腕まくりをしてみると。


「は、始まるのね? やっちゃのね?」


 何やら期待した様子で、お酒片手に立ち上がった早乙女さん。

 彼女に対して、困った様な笑みを浮かべつつ。


「時間も無いので、本当に簡単な物だけですけどね? あ、でも……お試しで作ってみた物も持参したので、良ければ味見して下さい」


 そう言ってから、バッグに入ったタッパーを差し出してみれば。

 何故か、人が集まって来た。

 主に、お酒を飲んでいる方々が。


「「「ジャーキー!」」」


「え、えと……今日やるのは、ナッツとかチーズですからね? お肉は……それで全部になっちゃいます」


「マンションの屋上使用許可まで取って、妹が“お試し”で作ってくれた品ですので。皆味わって食べる様に」


 兄の一言が終わると同時に、皆様タッパーに詰まった干し肉に手を伸ばしていた。

 これには4cardや555、そして9Kまで加わっており。

 皆様、凄くガジガジしてから満足そうな表情を浮かべている。

 うん、今の様子を見るに、味は大丈夫そうかな?

 一応味見もしたけど、やっぱり不安だったので。

 この反応を見る限り、安心して良さそうだ。


「えぇと……燻製オツマミ作りますけど、良いですか? 食べます……かね?」


 そう問いかけてみると、未だ干し肉を齧っている皆様は激しく首を上下に振っている。

 ならまぁ、作ってしまいましょうか。

 せっかく野外だし、普段出来ない事をやらないと損だろう。

 ついでに言うと、4cardは以前角煮が好きだと言っていたし。

 今回の謝恩会はお泊りも込みみたいなので、じっくり作ってみようかと思います。

 ちなみに材料費は……全て、会社持ちなんだそうで。

 お兄ちゃんから「何が欲しい? というか何が作れそう?」とか聞かれたから、結構案を上げてしまったのだが。

 これ等を全て、早乙女さんが揃えてしまったそうだ。

 責任重大だぁ……。


「シ、シックス……私も手伝いますので。放置されると、困ってしまうと言いますか……」


「ありがとうございます、エイト。一緒にやりましょうか」


「シロちゃーん、私も混ぜてー! 普段料理しないけど、一応出来ない事は無いから!」


「とりあえず、料理中はくっ付かないで下さいね……ナナさん。普通に危ないので」


 そんな会話をしながらも、謝恩会はまったりと進行していくのであった。

 これだけ人数が集まっているのに、全然気まずくないの……もしかしたら、初めてかもしれない。

 やっぱり、ガンサバって凄いや。

 このゲームを始めてから、いっぱい友達が出来た。


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