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第9話:アンデッド

ギルドへ戻り、チノにジーンの最期を伝えた。


「そっか……ジーンは最後、笑って逝ったんだね。よかったよ。……これ、今回の報酬ね」

チノは寂しげに目を細め、報酬の袋を差し出した。


「討伐の仕事はあるか?」


「ここから少し遠い村からの依頼なんだけど、受ける? ……巨人がまた出たみたい。

でも、本当に大丈夫?」


チノの視線が、隣のレノアへと向けられる。


「だ、大丈夫です……っ!」


精一杯声を張るレノアだったが、その顔には隠しきれない疲労の色が滲んでいた。


「そうだな。レノア、この依頼は俺一人で行く。君はここで休んでいてくれ」


「大丈夫ですよ、私だって!」


「——そのままでは足を引っ張る、という意味だ」


突き放すような物言いに、レノアは一瞬言葉を詰まらせたが、やがて小さく頷いた。


「……わかりました。でも、休んだら馬を借りてでも追いかけますからね!」


「という事だ」


「わかった! じゃあ、お願いね」


こうして、剣士は再び一人、巨人退治の待つ地へと向かった。



村へと続く道中、薄暗い沼地に差し掛かったところで、剣士は異様な気配に包まれた。


泥の中から這い出してきたのは、生ける屍、アンデッドの群れ。


「!!」


剣士は言葉を失った。

そのアンデッドたちが纏っているのは、全身甲冑と——自分と同じ王国の紋章が刻まれた、ボロボロのサーコートだった。


剣士は無言で剣を抜き、襲いかかる亡者たちを切り伏せていく。だが、その剣筋にはいつものキレがなかった。

このアンデッドたちは、もしかしたら自分自身の成れの果てだったのかもしれない。戦いの中で、そんな思考が脳裏を掠める。


亡者たちの魂が、斬るたびに剣士の中へと流れ込んでくる。

その瞬間、うっすらとした記憶が強烈なフラッシュバックとなって押し寄せた。


『さすが隊長!』


『隊長、次もお願いしますよ!』


それは、かつての部下たちから向けられた、信頼と称賛に満ちた声だった。


剣士の瞳から、一筋の涙が溢れ出した。


「……すまない」


声にならない謝罪と共に、涙を流しながら、かつての仲間であったものたちを次々と切り伏せていく。


その涙は冷たい鉄の兜に隠れ、誰に見られることもなかった。


気づけば、全てのアンデッドは物言わぬ骸へと戻っていた。


剣士は溢れ出る涙を拭うこともせず、一つ一つ亡骸を丁寧に並べ、その胸に手を組ませて弔った。


かつての部下たちの魂をその身に宿し、剣士は重い足取りで目的の村へと向かった。

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