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第7話:コボルト退治

翌朝。新調した重厚な両手剣を背負い、剣士はレノアと共にギルドの門を潜った。


「討伐の依頼はあるか?」


「剣士さん! 今日はコボルト退治があるよ。受ける?」


チノの問いに、剣士は短く頷く。

「ああ。それと……魔術師にまつわる話や、それに関する依頼はないか?」


「魔術師? んー、今のところはないかなぁ」


「そうか」


「頑張ってね、二人とも!」


チノの明るい声に見送られ、二人は町を出た。



街道を歩きながら、レノアが隣の鉄塊のような背中に視線を向けた。


「剣士さん、本当は名前なんて言うんですか?」


「……本当に、記憶がないんだ」


「何か、少しでも思い出せたことは?」


「断片的にな。俺は……ある魔術師を探している」


「魔術師……」

レノアは杖を握る手に力を込め、深く考え込んだ。


「何か知っているのか?」


「……一番有名なのは、大魔道士ラミレスですが……。でも、あれはほとんど神話の住人なんです。王国を一夜にして滅ぼしたという、あまりに有名な昔話。もし、剣士さんの探している人がその人物だとしたら……」


「話はあとだ。囲まれているぞ」


「えっ!?」

レノアが顔を上げると、周囲の茂みから十数匹のコボルトが牙を剥いて這い出してきていた。


その内の三匹が、獲物を定めてレノアへ飛びかかる。

だが、レノアが悲鳴を上げる暇もなかった。剣士の振るった両手剣が閃光のような弧を描き、三匹を空中で同時に真っ二つにした。


「……油断するな」


「す、すみません!」

レノアは自身の不甲斐なさを振り払うように詠唱を開始した。

その隙を狙って殺到する群れを、剣士は盾となって受け止める。新調した両手剣は巨体のコボルトの骨を容易く断ち切り、次々と骸を築いていく。


「——炸裂せよ!」


レノアの詠唱が完了し、周囲に爆破呪文が巻き起こった。

凄まじい衝撃波が残りのコボルトをバラバラに粉砕する。


「これが魔法か。……強力だな」


生き残った数匹が恐怖に鳴き声を上げ、合図と共に散り散りに逃げ出した。

だが、剣士は逃がさない。背を向けて走るコボルトを驚異的な脚力で追い詰め、一匹ずつ確実に処理していく。最後の一匹がレノアの放った火炎魔法に焼かれ、戦場には再び静寂が訪れた。


焼けた肉の臭いが漂う中、死んだコボルトたちから青白い魂が抜け出し、吸い寄せられるように剣士の甲冑へと消えていく。


「……あの、魂を吸い取ると、どうなるんですか?」

レノアが恐る恐る尋ねる。


「……自我を、保っていられる。吸わねば、俺はやがて消えるだろう」


レノアは悲しげに瞳を伏せた。

「……呪いですね。それも、恐ろしく強力な……」


亡国の紋章、神話の大魔道士、そして魂を喰らわねば維持できない存在。

深まる謎を抱えたまま、二人はさらに深い闇へと足を踏み入れていく。

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