第6話:ドワーフの両手剣
ボロボロになり、鎧の隙間から灰を零しながらギルドへ戻った男を見て、チノは椅子から落ちんばかりに驚いた。
「もしかして……また倒してきたの!? どれも初心者がやるような依頼じゃないよ」
「これで、登録を認めてくれるな?」
「文句なしだよ! はい、これが報酬ね」
チノは手際よく金貨を袋に詰めて差し出した。
「討伐の依頼はないか?」
「今日はもうないよ。それに……剣を持ってないようだけど、折れたの?」
「ああ。じゃあ、また来る」
剣士は短く答えると、ギルドを後にして鍛冶屋へと向かった。
◇
鍛冶屋の暖簾をくぐると、熱気の中に頑固そうなドワーフが一人、無言で鎚を振るっていた。
「剣が欲しい」
「……どんな剣だ?」
ドワーフは鎚を止めることなく、低い声で問い返す。
「なるべく折れにくいものを」
「そこの壁に立てかけてある。好きなのを選べ」
剣士は指示された壁際から一本の両手剣を手に取り、一振りした。
空気を切り裂く鋭い音。その身のこなしを見たドワーフの眉が、僅かに動いた。
「……少し待て。お前に似合う剣を持ってこよう」
ドワーフは奥の工房へと消え、やがて一振りの重厚な両手剣を携えて戻ってきた。その刀身は鈍く光り、並の鉄とは一線を画す頑強さを物語っている。
「これを使え。……餞別だ」
「金ならある」
「いらん。他の道具はきっちり貰うがな」
剣士はドワーフの好意を黙って受け取り、予備の投げナイフやショートソードを買い足した。
「また刃こぼれしたら来い」
職人はそれだけ聞くと、再び火床へと向き直った。
外に出ると、待ち構えていたようにレノアが駆け寄ってきた。
「剣士さん! 無事だったんですね!」
「ああ」
「次の依頼は何ですか?」
「今日はないらしい。また明日だ」
レノアは真っ直ぐに剣士の兜を見つめ、決然と言った。
「私も、連れて行ってください」
かつての無力感、玉座の間で膝をつくしかなかった自分。その記憶が剣士の脳裏を過る。
「……わかった。だが、自分の身は自分で守れ」
「はい!」
レノアの顔にぱっと明るい笑みが咲く。
「じゃあ、明日。ギルドでな」
剣士は宿屋の扉を潜り、泥のような眠りについた。
暗闇の中、失われた王宮の景色と、魔術師の冷徹な眼差しが、再び彼を呼んでいた。




