第25話:ドラゴン 中編
再び猛然と、ベルクートはドラゴンに肉薄した。
そこへ、巨大な鞭のような尻尾がベルクートを襲う。
だが、ベルクートはその攻撃に合わせるように、絶妙なタイミングで刃を引いた。鋼のように硬いドラゴンの鱗を断ち切り、その勢いのまま尻尾の先端を鮮やかに切断する。
「グォォォォォッ!!」
ドラゴンは短く悲鳴を上げると、怒りのままに巨大な爪を振り下ろした。
ベルクートはそれをギリギリのところで受け止めるが、衝撃を殺しきれず地面を激しく転がる。
すぐさま起き上がり、ベルクートは再び駆け出した。ドラゴンは千切れた尻尾でなおも打ち砕こうとしたが、ベルクートは今度はその半ばから尻尾を切り落とす。
しかし、斬るたびにドラゴンの鱗が放つ鋼のような振動が剣を伝い、ベルクートを蝕んでいく。退魔の剣を握る両腕は、もはや感覚がないほどに痺れ、手のひらの皮膚は無残に破れて血が滲んでいた。
「す、すごい……」
後方で見守るレノアの目には、勝負は互角、あるいはベルクートが押し始めているように映っていた。
ドラゴンが再び、大きく口を開き火炎を吐き出した。
ベルクートは退かなかった。逆にその猛火の中へと突っ込み、ドラゴンの胸元へ一太刀浴びせる。
だが、痺れきった腕には力が入りきらず、強固な鱗に小さな傷をつけたに留まった。
そのまま、ベルクートは巨躯を駆け上がり、ドラゴンの背に乗って翼の膜を切り裂いた。さらに背中へ剣を突き立てるが、傷は浅く、ただ腕を伝う痺れが強まるだけだった。
ドラゴンは狂ったように暴れ回り、ベルクートを振り落とす。ベルクートはそのまま硬い石畳の地面に叩きつけられた。
「ベルクートさん! 撃ちます!」
危機を察したレノアが詠唱を始めるが、ベルクートは叫んでそれを制した。
「手を出すな!」
その気迫に押され、レノアはビクッとして詠唱を止める。
そこからは、ドラゴンの暴威が吹き荒れる時間となった。
爪、炎、噛みつき。
ベルクートはそれら全てを、紙一重の回避で凌ぎ続ける。
ただ、泥沼のような腕の痺れが回復する、その一瞬を待ちながら。




