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第20話:王の巨人

王の巨人が振るう剣は、もはや死そのものの具現だった。身をすくませるほどの風切り音を伴い、巨大な質量でありながら、その引きは驚くほどに早い。巨人となってもなお、その剣技は至高の領域に留まっていた。


剣士は盾の死角を突いて足首へ回り込み、退魔の剣を渾身の力で突き立てた。


「――通った!」


手応えはあった。だが、装甲の厚みに阻まれ、傷は浅い。あの顔面の魔法陣を仕留めるには、どうしてもその巨躯を転倒させる必要があった。


詠唱を続け、額に汗を浮かべたレノアが叫ぶ。


「剣士さん! 撃ちますか!?」


「まだだ! 引き付けろ!」


降り注ぐ踏みつけを紙一重で避けながら、剣士は周囲の状況を冷徹に観察した。一歩ごとに石畳が粉砕され、深い窪みができていく。


――これだ。


剣士はあえて一箇所に留まり、巨人の踏みつけを誘導した。破壊された石畳が不自然な段差を作り出す。そこへ王を誘い込み、狙い通りに踏み込ませた。


強固な支えを失い、王の巨体がわずかにグラついた。その一瞬の隙を、剣士は見逃さなかった。


「レノア! 撃て!!」


「――炸裂せよ!!」


放たれた爆破魔法が、剥き出しの魔法陣を直撃する。それと同時に、剣士は残された全力を振り絞り、巨人の足首へと体当たりを食らわせた。


轟音と共に、難攻不落の王が背後から崩れ落ちる。


剣士は灰を巻き上げて駆け出し、焦げた魔法陣へと横薙ぎの一撃を深々と叩き込んだ。


だが、まだ足りない。続けて放った縦斬りは、巨人が首を捻ったことでわずかに中心を掠めるに留まった。


「まだ……動くのか!」


上体を起こそうとする巨人の胸部へ飛び乗り、剣士は狂ったように刃を振るった。

もう一太刀、さらにもう一太刀。

最後は、全身の体重を乗せて退魔の剣を魔法陣の真ん中へと深々と突き刺した。

その感触と共に、王の顔面に大きな亀裂が走り、内側から眩い光が溢れ出す。


鉄壁の鎧も、誇り高き巨剣も、音もなく灰へと帰していく。


崩れ去るその寸前。


口も持たぬはずの巨人の、しかし確かに聞き覚えのある穏やかな声が、玉座の間に響き渡った。


「……ベルクートよ」


それは悲しげでありながら、我が子を呼ぶような慈愛に満ちた響きだった。

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