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第18話:退魔の剣

翌朝、剣士は一人で鍛冶屋の暖簾をくぐった。


「……遅かったな。出来ているぞ」


ドワーフは作業の手を止め、一本の両手剣を差し出した。


受け取った剣は、昨日までのものとは放つ空気が違っていた。鈍く、しかし深く光るその刀身には、魔を退ける神聖な力が宿っている。


「この剣は『退魔の剣』だ。そこらのなまくらとは違う。どんな魔物だろうと、その刃は通るはずだ」


剣士は一振り、空を薙いだ。

驚くほど手に馴染む。まるで剣が己の腕の延長になったかのような、完璧な一体感。それを見たドワーフが、満足げに短く笑った。


「似合うじゃねぇか」


「……ありがとう」


剣士は感謝の印として、金貨の詰まった袋を台の上に置いた。


「おい、こんなにいらねぇぞ」


「礼だ」


振り返ることなく、剣士は鍛冶屋を後にした。



レノアと合流し、二人は亡国の城跡へと足を進めた。


近づくにつれ、周囲から生き物の気配が消えていく。鳥の囀りも虫の音も途絶え、代わりに目に入るのは、折れた剣、白骨化した亡骸、そして朽ち果てた盾の数々。


そこは、死の濃厚な残り香が充満する場所だった。


城跡の正門を潜ると、肌を刺すような強烈な殺気が二人の身体にまとわりついた。


「……魔物が、いない?」


レノアが不安げに呟く。チノから警告されていたような魔物の群れはどこにもいなかった。


代わりに支配しているのは、圧倒的な強者の気配。あまりに強い殺気が、他の魔物や動物を近づけさせない結界となっているのだ。


殺気の源を辿り、二人は広大な玉座の間へと辿り着いた。

かつての栄華を物語る高い天井、両脇に並ぶ騎士たちの鎧飾り。その中央、玉座へと続く道。


そこに、いた。


巨人は全身に豪華な鉄製の鎧を纏い、美しい装飾が施された巨剣と大盾を携えていた。


魔法陣は、顔の中央。だが、剣士の姿を認めた途端、巨人はバイザーを下ろし、弱点である魔法陣を冷徹に覆い隠した。

巨人はゆっくりと立ち上がり、巨剣を抜く。その一つ一つの動作には、抗いようのない高貴さと威厳が満ち溢れていた。


――これは、王だ。


かつての民を、国を、そして家族を守り抜こうとした、この国の主。


王の巨人は、重厚な金属音を響かせながら、ゆっくりと剣士へと歩み寄る。

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