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第17話:優しさと礼儀

エルフの討伐と、解毒を施して消えた巨人の報告を終え、剣士とレノアはギルドの椅子に深く腰を下ろした。


「……エルフと巨人は繋がっていたのかな。それとも、その巨人が変貌する前、エルフの中で偉い人だったのかな? わからないね。皮を剥ぐという残酷な行いも、外の人間を近づけさせないための、彼女なりの歪んだ守り方だったのかも……」


チノは顎に手を当てて考え込んだあと、重い空気を振り払うように明るく振る舞った。


「まぁ、どちらにせよ、お疲れ様! はい、報酬だよ」


「レノア、今日はまだ動けるか?」


剣士が問いかけると、レノアは申し訳なさそうに視線を落とした。


「いえ……すみません、魔力が底をついています……」


「わかった。今日は休もう。何か美味いものでも食うといい」


剣士は、受け取ったばかりの報酬の袋をそのままレノアに手渡した。


「え! 今までもほとんど報酬を頂いているのに、これ以上は! 剣士さんこそ、何か美味しいものでも食べてください」


「俺には食事は必要ないんだ。呪いの影響だろう」


剣士の身体は、死者の魂こそ渇望するが、生者の糧を必要としなくなっていた。


「今日の剣士さん、なんだか優しいですね」

レノアがふふっと微笑む。


感情を取り戻してきている影響か、剣士の心には「優しさ」が芽生え始めていた。いや、それは新しく生まれたものではなく、かつての彼が持っていた本来の形へと戻りつつあるのだろう。


「とりあえず、明日出発だ」


「次はどちらへ?」


「亡国の城跡だ」


その言葉に、チノが色をなして身を乗り出した。


「あそこは危険な魔物だらけだよ! ましてや、たった二人で行くなんて無謀すぎるわ!」


「……行かねばならん。あそこにいる巨人は、もっと大事な記憶を持っている気がするんだ」



ギルドを後にした剣士は、一人でドワーフの鍛冶屋へと向かった。


相変わらず愛想のないドワーフが、火花を散らしながら何かを打ち付けている。


「来たな。……剣を見せてみろ」


剣士は言われるがまま、背中の両手剣を差し出した。


ドワーフは刀身を鋭く見つめ、鼻を鳴らす。


「まるで何度も戦争を潜り抜けてきたような使い込みようだな。一晩預けろ。直しておいてやる」


「……ありがとう」


かつて騎士であった父に教わった礼儀か。自然と口を突いて出た言葉に、ドワーフは意外そうに眉を動かしたが、すぐに無愛想に仕事へと戻った。


翌朝には、さらに鋭さを増した「牙」が戻ってくるだろう。

失われた自分を取り戻すための、最後の戦いの地へ向けて。

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