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第13話:約束

それは、命を賭した博打だった。

空中に放り出された剣士は、逆らうことなく重力に従い落下する。その加速を乗せ、手にしたショートソードを巨人の背中へ――魔法陣のど真ん中へと突き立てた。


断裂の感触。縦一本、魔法陣に深い傷を付けた。


だが、まだ足りない。この程度の損傷では、巨人の心臓部を止めるには至らなかった。


巨人は背中の異物を叩き潰さんと、再び背面から地面へ倒れ込もうとする。剣士は地面スレスレの高さで、間一髪飛び降りた。手元に残ったのはショートソード一本。あとは予備の投げナイフと、戦闘用ではない小刀のみ。


「……くっ」


巨人は怒り狂ったように、小さな標的を踏みつけようと何度も足を踏み鳴らす。回避はできるが、長くは続かない。


そこへ、岩の装甲に覆われた巨人の蹴りが飛んできた。


まともに食らった剣士は、木の葉のように吹き飛ばされた。村の建物の壁を何枚も貫き、無様に地面を転がる。


「……しまった……」


全身を走る激痛。この強敵を前にしての重傷は致命的だった。おまけに、唯一の武器だったショートソードすら、どこかへ落としてしまった。


万事休すか――。


巨人が無慈悲な足取りで、とどめを刺しに近付いてくる。


そこへ、聞き覚えのある鋭い声が響き渡った。


「――炸裂せよ!!」


ドォォォォォン!!


凄まじい爆発音が轟く。

巨人の肩が爆炎に包まれて吹き飛び、そこに突き刺さっていた「両手剣」が、都合良く剣士の足元へと突き刺さった。


「レノア!」


「遅れました……っ!」


約束通り、馬を飛ばして駆け付けたレノアがそこにいた。


剣士は迷わず両手剣を握り直し、巨人の懐へと駆け出した。


「レノア! 今のを足首に頼む!」


「了解!!」


再びレノアの詠唱が響く。巨人の右足首に向けて放たれた爆破呪文。


岩の装甲を完全に破壊するには至らなかったが、足元を狂わせるには十分だった。剣士はその一瞬の隙を逃さず、剥き出しになったアキレス腱に豪剣を叩き込んだ。


支えを失った巨像は大きく体勢を崩し、轟音と共にその巨体を地面に投げ出した。


剣士はそのまま止まることなく背中側へと走り抜ける。


「これで、終わりだ」

伏した巨人の背、魔法陣に向けて一太刀、また一太刀。

魔法陣の形が分からなくなるまで、ひたすら斬り刻んだ。


やがて巨人は力尽き、灰になって崩れ去った。

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