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「知りたいの。全部隠さずに教えて欲しい。なぜこんな事になったの?」
お父様とお兄様の顔色が悪くなったけれど、ごめんなさい知りたいの。
「ユティ全部話してあげるから先にお風呂に入っておいで」
「・・・ジル兄様、私臭いの?」
「臭くなんかないよ。ユティはいつも甘い香りがするけれど、ずっと体を拭くだけだったでしょ?温まっておいで」
確かにお風呂に浸かりたいわ。
「わかったわ」
それから専属侍女のベスとメイドたち3人がかりで体を洗ってくれた。
やっぱり髪が一番時間がかかったの。
久しぶりにお湯につかると本当に気持ちが良い。
みんな辛そうな顔で目に涙を浮かべて洗ってくれている。
痣だらけだと思っていた体は綺麗だったけれど、思っていた通りすごく痩せていた。
鏡を見るのが少し怖い。
「ねえベス、私は醜い?」
「いいえ!お嬢様はお可愛らしいままですよ」
「本当?」
「ええ!亡くなった奥様によく似ておりますよ」
よかった。
まだ足に力があまり入らないけれど、落ちた体力を元に戻す為に少しづつなら太陽の光を浴びてお外に出てもいいとお医者様が許可してくれたの。
もちろん付き添いは必要だけどね。
動きやすいワンピースを着せてもらって、ベスに抱きかかえられながら浴室から出ると、ジル兄様が待ってくれていた。
「ベス、ここからは僕が連れていくよ」
そう言ってジル兄様がいつものように私をお姫様抱っこしてくれた。
幼い頃からジル兄様は移動の時はよく私をこうやってお姫様抱っこする。
「ジル兄様もお兄様と一緒に卒業したの?」
「そうだよ。・・・ユティ本当に全部聞いても大丈夫かい?」
ジル兄様のお顔が心配そうに私を見ているけれど知りたい。
「はい、私も聞きたい事が沢山あるの。それにジル兄様が一緒にいてくれたら怖くないわ」
「わかった。無理はしないでね」
そう言って額にキスしてくれた。
ジル兄様の膝に乗ったままソファに座った。
後ろからはジル兄様が抱きしめてくれている。
お父様もお兄様も辛そうな顔で話してくれた。
お母様が亡くなってから仕事でお父様は外交で海外に渡り、お兄様は留学先の隣国に戻ってからすぐに、私が行方不明になったと知らせが来たそうだ。
知らせが届いてから帰ってくるまでに約1週間。邸に着いた時には行方不明になってからは2週間が経っていた。
(そうね隣国までは片道1週間かかるもの)
急いで帰ってきたら私の水死体が発見された。
膨れ上がった遺体は顔が判別できない程傷ついていて、髪の色が私と似ていて、瞳の色は濁ってきちんと確認は出来なかったけれど、私のお気に入りのワンピースを着ていたことと、お母様のネックレスをつけていたことで死んだと思い込んでしまったと・・・
誘拐なのか、自殺なのか分からないまま身内だけでお葬式まで行ったと。
ただジル兄様だけは、私が生きていると信じてくれていたそうだ。
ジル兄様・・・ありがとう。
「お父様はあの人と結婚したの?」
「まさか!私は亡くなったミルティーアだけを愛している」
そうだよね。
あんなに仲が良くて大切にしていたもの。
「じゃあ、あの人は誰なの?」




