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偽物令嬢と呼ばれても私が本物ですからね  作者: kana


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~ディオリス殿下視点~


ラグーナ侯爵令嬢のクラスの黒板に彼女を偽物だと、出ていけと落書きがあったとくすくす笑いながら話す令嬢たちの噂話を聞いてしまった。


あんなか弱そうな令嬢を蔑んで笑い者にする令嬢たちの神経が分からない。


彼女は教室で自分はラグーナ侯爵家の娘だと毅然とした態度で断言したという。


彼女を慰めてあげたい。

私が彼女を守ってあげたい。


そう思っていたのに次の日から彼女は学園に来なくなった。


翌日には犯人が見つかったと耳に入ってきた。

エミリアとエドワードが彼女のために早朝から学園の護衛と張り込んで現行犯で捕まえたと・・・。


私はいつもこうだ。

行動が遅いんだ。


私が彼女を気にかけている所を見せれば、そんな噂をする者もいなくなるだろうと食堂で声をかけるつもりだった。


彼女を中傷した令嬢たちは謹慎を言い渡された。

原因となったオルト嬢は学園長から二度と彼女を偽物などと嘘の情報を流すなと厳重注意を受けた。

これは他の生徒達の耳に入ることは無いが、王族の私には報告があった。


これでオルト嬢が孤立するのかと思えば、教室の隅で小柄なオルト嬢がしくしく泣いている姿が余程痛々しく見えたのか同情する子息や令嬢が多く、皆はオルト嬢が本当の娘だからこそ、こうして泣いているのだと信じてしまったようだった。


そのオルト嬢の態度で彼女が偽物だと学園中に広まってしまったんだ。


休日明けには彼女が登校することを願って帰ろうと廊下を歩いている時に、角から飛び出してきたオルト嬢とぶつかりそうになった。


護衛が前に出ようとするのを目で止めた。


転びそうになったオルト嬢に思わず手を出して支えると私の袖を掴み、いかにも泣いていましたと分かるように私を涙目で見上げてきたオルト嬢に対し"王子の私を味方につけよう"と企んでいると直感が告げる。


普通の人から見たら小柄で可愛いオルト嬢は庇護欲をそそられるのだろうが、私はそんな甘い教育を受けてきていない。


「も、申し訳ございません。わ、わたくし・・・」


君はか弱い振りをした強欲な令嬢・・・だったんだね。


「貴族の令嬢なら廊下は走らないように教育されているばずだが?私には君が本性を隠し、被害者ぶった仮面を被っても通用しないよ」


「・・・な、何を仰っているのか分かりません」


俯いて泣き出すオルト嬢を冷めた目で見下ろした。


「私を騙せるとは思わないことだ」


オルト嬢にだけ聞こえるように囁いて、まだ私の袖を掴む手を振りほどいた。


ラグーナ侯爵令嬢のことを思い浮かべながら待たせてある馬車まで歩く。

あの、背筋を伸ばし凛とした彼女ならオルト嬢のような小賢しい真似は絶対にしない。


これ以上彼女を傷つけられないよう私が守ってあげよう。




休日明けやっと彼女が登校してきた。


私が馬車から降りた時、あの可愛らしい顔でエミリアとエドワードと笑いながら歩いていく姿を見て安心した。


だが、周りの生徒たちの中には顔を歪めてひそひそと話をしている者が何人もいた。

誰がどう見ても彼女に悪意ある話だと分かる。


こんなことは日常茶飯事だ。

余程暇なのか貴族の令嬢は噂話が好きだ。

特にひとの不幸話は好物のようだ。


私が前を通ると醜く歪んだ顔を隠し媚びるような目を向けて挨拶してくる。


気持ち悪いと思いながらも顔には出さず軽く頷いてその場を去る。


校舎が違うため、下級生の彼女と交流しようと思ったら移動教室の時か、食堂ぐらいしかない。

確実なのは誰もが使う食堂だ。



私の忠告が効いたのかオルト嬢は近づいて来ない。

いつもなら花が咲いたような笑顔で挨拶してくるのにね。


元々オルト嬢は私を落とそうとしていた訳ではなく、私の友人というステータスが欲しかったのだろうが当てが外れたな。


私から見たオルト嬢は強かだ。

忠告はしたが、まだ何かしら企んで彼女に害を与えるようとするだろう。


その前に彼女を私の庇護下に置こう。

誰も彼女に手出しができないように・・・





私が食堂に着いた時にはエドワードとエミリア、そして彼女がいつもの席で楽しそうに会話をしながら食べている姿を見つけた。


ただでさえ目立つ3人。


エミリアは派手な顔立ちでキツく見える見た目だが間違いなく美人。


エドワードも冷たく見えるがかなり見目はいい。


ラグーナ嬢はぱっちりとした大きな目に可愛らしい庇護欲をそそる見た目だが、実際は周りの視線も嫌味も聞こえているだろうに、背筋を伸ばし堂々とした態度を貫く姿は賞賛に値する立派なものだ。


偶然を装って自然に見えるように空いている席に座った。

円卓の前の席には彼女。


彼女を正面から見ていられるいいポジションに満足していると、まるで私を邪魔者扱いする言葉は幼馴染を理由に軽く聞き流しラグーナ嬢から目を離さない。

(妖精のような令嬢だな。近付きすぎたら消えてしまいそうだ)


私を前にしても機嫌を伺うことも、緊張した様子もない大したものだ。


もっと彼女を知りたくて話しかけようとした時、私とエドワードにだけ挨拶するブリジック嬢が現れた。


エミリアとラグーナ嬢を居ないものとして無視し続けるブリジック嬢。


エミリアと席を立とうとするラグーナ嬢に慌てて声をかけるが引き止める私に不思議そうな顔で首を傾げる彼女の可愛い仕草に見惚れ何も言えない間にブリジック嬢が仕出かした。


頭から料理を被り美しい髪も、シワのない制服もドロドロになってしまった。


医務室まで案内しようとしたが、『いいえ結構ですわ。ディオリス殿下はブリジック嬢とごゆっくりお過ごし下さいませ』と淑女の微笑みを貼り付け拒絶された。


エドワードの上着を肩にかけたまま、背筋を伸ばし凛とした態度で食堂から出て行く彼女に見惚れたのは私だけではなかった・・・


残された私の前には侮蔑の笑みを浮かべラグーナ嬢の後ろ姿を見送るブリジック嬢。


誰が見てもあれはワザとだ。


タダでさえ皆の視線を集めていた所でやらかしたブリジック嬢に周りは非難の目を向けていた。


気付いていないのはブリジック嬢だけだ。


「ディオリス殿下、わざとではありませんのよ?」


言い訳をしだすが今更だな。


私はブリジック嬢をひと睨みして席を立った。


また私は助けられなかった。


彼女はオルト嬢だけでなく、ブリジック嬢にも敵意を向けられていたのか・・・


次こそは私が守ってみせる・・・


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