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「ユティお願いがあるんだけど」
リアが畏まってるんだけど、私に出来ることなら何でも聞くつもりよ。
「今度の休日もユティのところに遊びに行ってもいいかしら?」
ああ目的はお兄様ね。
「ええいいわよ。その日はお兄様も1日家に居るって言っていたし、どうぞ」
ぱぁっと笑顔になるリア。
「お兄様って、入学式の時に母上達がいい男だと騒いでいたユティの兄上か?」
「すっごく素敵な人よ!ユティに似ているけれどお兄様の方が凛々しい感じなのに笑うと優しい人柄がでていてね、背も高くて引き締まった体に長い手足、黒髪にヘーゼルの瞳で一瞬で彼に目を奪われたわ!」
リアがこんなに興奮するなんて・・・
でも訂正はしとかないとね。
「リア、お兄様の髪の色はお父様と同じ濃紺なのよ」
「・・・確かに入学式でお会いしたラグーナ侯爵は濃紺だったけれど、デビュタントの時は黒髪だったような?」
首を傾げて考え込むリアはいつもより可愛いわ。
「太陽の光にあたると濃紺なんだけれどね、室内では黒髪に見えるみたいなの」
「光の加減で黒にも濃紺にも見えるってことか。俺もお邪魔してもいいだろうか?父上に『レグルス殿を見習え』って言われているんだ」
お兄様のどこを見習うのかしら?
「もちろんいいわよ歓迎するわ」
前回のリアの訪問は突然で何もおもてなしが出来なかったから、今回は侍女達にも相談して準備を手伝ってもらわないと。
そんなことを考えながら、リアとエドと一緒に馬車止めまで歩いていたら、前から赤いリボンをした上級生とすれ違いざまに肩がぶつかってしまった。
咄嗟に「すみません」と謝ったが、私に「汚らわしい」と肩を埃でも払うような仕草をして言われた。
汚らわしい?
なぜ私がそんなことを言われないとならないの?
「態とぶつかってきたクセに謝るならまだしもその言い草は何?名前を言いなさい!」
リアに睨まれた上級生は顔色を変えた。
「い、いえそんなつもりはなかったんです。マキュリー公爵令嬢・・・」
「私も聞きたいね。まあ名前を言わなくても君たちの顔は覚えたからね。調べれば分かる事だ」
エドまで彼女たちを冷たい目で見下ろしている。
「誰の指図か知らないけれど、マキュリー公爵家を敵に回す気ならどうぞ」
リアのような美人が凄むと迫力あるわね。
「オーラント公爵家もユティについていることを忘れるな」
え?そうなの?
リアとエドのご両親とお父様が仲良くしているからかしら?
2人に脅されるように言われた上級生たちは真っ青になりながらも「も、申し訳ございません」と頭を下げて走り去って行った。
私だって侯爵令嬢よ?
見た目だけだなら大人しそうに見えるらしいから舐められているのかしら?
今回はリアとエドが守ってくれる形になってしまったけれど、次があれば私だって負けないわ。
だって私がしっかりしないとお父様やお兄様にまで見下される事になってしまうかもしれないもの。
私がそんな決心をしている時、リアとエドが頷き合っていることには気づかなかった。
そして次の日、ランチを食べ終わりトレーを片付けようとした時、何かに躓いて転びそうになった。
そんな私を見てクスクス笑う赤いリボンの上級生たち。
『無様に転べばよかったのに』『偽物のくせに』『目障りだわ』等、陰口が聞こえた。
「わたくし見ていたわよ。食事中に足を出すなんてマナー知らずね。しかも怪我でもしたらどう責任を取るの?」
「私も見ていたが、君たちは侯爵令嬢のユティよりも身分が上なのか?」
また、リアとエドに庇われてしまった。
「2人とも私は大丈夫よ」
私はなんでもない事のように2人を止めてた。
それよりも今は周りで私を嘲笑っている令嬢たちに毅然とした態度を見せないとね。
でも最近聞こえてくる陰口は私に向けていたことが分かったけれど、原因は分からないままだ。
「まずは貴女、人に足を引っ掛けて転ばそうとするなんてそれが貴女のお家の教育方針かしら?」
「な!」
侮辱されたと思ったのでしょうね。
睨まれても怖くないわ。
「名乗りなさい!我がラグーナ侯爵家から抗議文を送るわ!」
抗議文を送ると言った途端俯くなんてね。
「それから『無様に転べばよかったのに』『偽物のくせに』『目障りだわ』だったかしら?貴女方もいい性格していますのね?」
ニコリと笑顔で問えば目を逸らすのね。
周りを見回して皆さんどう思われます?と聞けば、あちらこちらか最低だな、あんな女は嫁にはしたくないなと男子生徒たちの声が聞こえた。
これぐらい言えばもう大丈夫だとリアとエドに視線を送れば、リアとエドも満足したように頷いていた。
食堂から出ようとした時にリアが振り返り「そうそうわたくしとエドは両親からユティを守るように言われておりますの。我が公爵家は相手が学生だろうと敵とみなせば容赦しませんのでお忘れなく」
え~そんなこと聞いてないわ!




