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結局エドと踊ったあとは、帰りたがるエドとお父様と踊って緊張しすぎて疲れたリアも帰ると言い出した為、私も帰ることにした。
帰ってから待ち構えていたお兄様とドレスを着替えないままダンスをする事になったけれど、嬉しそうなお兄様のお顔を見ると文句もいえない。
ジル兄様にデビュタントの感想のお手紙を書いてからベッドに入った。
翌日は学園も休日で邸でのんびりしていると先触れもなくリアが我が家に訪問してきたとメイドが伝えに来た。
貴族として先触れなく訪問するのは礼儀正しいとは言えず、余程のことがあったのだと想像がつく。
私はリアの待つ応接室に急いで向かった。
リアは私の顔を見るなり「ユティ!聞いてよ!」
どうしたのいつも冷静なリアらしくないわ。慌ててる?怒っているの?
「リア落ち着いて何があったの?」
「こんな手紙が届いたのよ!」
リアに読んでみてと渡された手紙はシワシワだけれどまさに脅迫状だった。
書いていたのは一言"エミリア殺す"なにこれ?
「ど、どうしてこんなものが?」
「分からないの」
リアが言うには早朝に門にこれが石と一緒に投げ込まれたと、門番が追いかけたが犯人を捕まえることは出来なかったそうだ。
「狙われているのに外出して大丈夫なの?」
「もちろん護衛を連れてきているわ。それよりも誰かに聞いて欲しかったのよ」
リアは気丈に振る舞っているけれど、手が震えている。
そりゃあ名指しで"殺す"だなんて・・・誰がリアを狙っているの?
私に何か出来ることは無いの?
「わたくしは公爵令嬢ですもの、人から妬まれる事は覚悟していたわ」
リア・・・
「でもこんな手紙が届くとね、わたくしは知らない間に相手に憎まれたり、恨まれるようなことをしたのかと思うと・・・」
ああリアが泣いちゃう・・・
私がリアに寄り添おうとした時ドアをノックする音が・・・リアの確認をとってどうぞと返事をして入ってきたのはお兄様だった。
「はじめまして、僕はユティの兄のレグルスと申します。マキュリー嬢にはいつもユティがお世話になっているそうで・・・」
あれ?リア?
お兄様もリアの様子がおかしい事に気付いたようで首を傾げている。
「リア?」
「は、はじめましてエミリアと申します。ぜ、是非リアとお呼びくださいませ」
「うん、よろしくねリア嬢」
「はい!あ、あのレグルス様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「いいですよ」
お兄様のその言葉に、ぱあ~と笑顔になるリア。
まさか、お兄様に一目惚れなんかしてないよね?
今のリアには手紙のことなど忘れているように見える。
お兄様は挨拶を済ませると部屋から出て行ったが、リアからお兄様のことを教えろと、質問攻めにされた。
まあ、お兄様には婚約者もいないし、リアも王子の婚約者になりたくないと言っていたし、縁があれば結ばれるのもありなのかな?




