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順調にお友達が増え、授業内容にも不安もない楽しい学園生活。
私たち一学年では長期休暇が開けた秋に開かれる王宮でのデビュタントの話がどこへ行っても持ち切りだ。
今日も食堂でリアとエドとランチをしていても、周りからは誰にエスコートしてもらうか、どんなドレスを着るのかで盛り上がっている。
「ユティは誰にエスコートしてもらうの?」
「私はお父様よ」
実は私のエスコートを巡ってお父様とお兄様のどちらも引かず、結局チェスで勝ったお父様に決まったの。
4歳も年上のお兄様が本気で悔しがって、涙まで浮かべるのには引いてしまったわ。
「リアは?」
「・・・アルスト殿下よ」
第一王子のアルスト殿下?
「まあ!素敵!」
「リアは筆頭婚約者候補なんだ」
幼馴染だし公爵令嬢ですものね。
「違う!誰があんな腹黒と婚約なんてするものですか!」
腹黒?
リアがとっても嫌そうな顔になっているわ!
「お前はアルスト殿下の玩具みたいなものだからな」
「エド!・・・分かっているわよ!だから嫌いなのよ!」
過去に色々あったのでしょうね。
「で、エドは誰をエスコートするのよ」
ん?エドが苦虫を噛み潰したような顔になっているわね。
「・・・言いたくない」
声が小さくて聞こえないわ。
「っ!分かったわ!ブリジック侯爵令嬢ね!」
「リア、ブリジック侯爵令嬢って、お顔は知らないけれど2学年の方のことかしら?」
「さすがユティ!エドはブリジック侯爵令嬢が昔から苦手なのよ。彼女の母親とエドの母親が親友でね、お互いの家をよく行き来していたのよ」
なるほど。
チラリとエドを見ると、とってもイヤそうにしているわ。
「母上が勝手に決めたんだ!あれ程嫌だと言ったのにだ!」
「彼女エドが好き過ぎてやり過ぎたのよ」
「やり過ぎ?そんな生やさしいものじゃない!あの女は風邪で寝込んだ10歳の俺のベッドに下着姿で入ってきたんだぞ!思うように動けない俺はベタベタと身体中触られたんだ!思い出しても吐き気がする」
その時彼女もまだ11歳だよね?
確かに令嬢としては、はしたないわよね。
あら?今"俺"って言ったわよね?
「そもそも俺は昔からアイツが嫌いなんだよ!虫唾が走る」
好きでもない相手に、そんな事されたら嫌いになっちゃうのも仕方ないよね。
それなのにエスコートさせられるなんて、エドが可哀想だわ。
「仕方がないわね。エスコートの相手を交代できるかアルスト殿下に聞いてみるわ」
「頼む!リアが行く時に俺も一緒に頼みに行く!」
う~んエド必死ね。
いつもは冷静沈着な彼なのに、言葉遣いまで変わっているわ。
これが本来の彼なのかもしれないわね。
まあ、デビュタントは3ヶ月も先だし今から動けば大丈夫かも?




