76話 黒い繋がり
領主の屋敷を訪ねた、違和感のある老夫。
なにかしらの手がかりがあると感じた俺達は徹底した調査をすることに決めて、領主の屋敷の敷地内に侵入した。
方法は簡単だ。
俺が塀を飛び越えて、それから二人を引き上げる。
シンプルではあるものの、時と場合によってはこれが一番効果的な方法だ。
「でも、高さが三メートルくらいあって、ものすごーーーく頑丈そうな塀を乗り越えられるなんて想定は、普通しないと思います」
「塀というよりは壁だもんね。これを超えられてくるとか……魔法の対策として、魔力を検出する装置はあるみたいだけど、肉体だけで乗り越えてくることは考えていないわね」
「鍛錬を積めばこれくらいはできるようになる」
「なるかしら……?」
「ならないよねぇ……」
二人には、それだけの素質はあると思うがな。
まあ、その話はまた今度、機会のある時でいい。
「さっきのじいさんは……」
見えた。
ちょうど屋敷に入るところだ。
入口の前に警備の兵士がいるが、じいさんの顔を知っているらしい。
恭しく頭を下げている。
「追いかけるぞ」
「でも、どうやって?」
「忍び込むにしても、ちょっと警備が厳重よね……」
「大丈夫だ。ある程度近づけばいい」
警備の兵士の目に気をつけながら、茂みから茂みへ移動しつつ、俺達は屋敷の裏手に回る。
裏手には倉庫らしき建物。
それと、使用人が使っているらしき小屋。
他はなにも見当たらない。
重要なものはなさそうだから、警備の兵士もいない。
とはいえ、さすがに無警戒ということはないだろうから、時間毎に巡回しているのだろう。
「どうするんですか、セイルさん?」
「あたし達は周囲の見張りをしておく?」
「そうだな、頼む。俺は中の様子を探って、さっきのじいさんを探してみる」
壁に手の平を当てる。
続けて魔力を送り込む。
ユナとアズが小首を傾げた。
「なにをしているんですか?」
「それって……なんかこう、診察する時に出る光に似ているんだけど」
「同じことをしているからな」
「……どゆこと?」
「建物を診察しているんですか……?」
「似たようなものだ」
手の触診だけではなくて、時に相手の体に魔力を流して、その反応で異常な部分を探る方法がある。
これは一般的に使われているものだ。
俺は、その方法を応用して、建物に魔力を流して、その反応を見ている。
言うなれば、魔力を使い建物の内部を診ている……だ。
「こうすることで、ある程度だが、中の様子がわかる」
「「……」」
「どうした?」
「いや、だって……」
「医療技術が盗聴技術に使われるなんて……」
「人聞きの悪いことを言うな。これはこれで、立派な医療行為だ」
「どこが?」
「別に、治療対象は人だけじゃないし、動物や魔物も含まれる。なら、建物を『治療』してもいいだろう?」
「「……」」
「たとえば地震が起きた時。こうして建物を診ることで、内部の異常な箇所を調べることができる。そして治療……補修することができる。結果として、そこに暮らす人の安全を守ることができる、ってわけだ。ほらな、立派な治療だろ?」
「「えぇ……」」
おかしいな?
ものすごく理論的で正しいことを言ったはずなのに、ありえないという顔をされてしまう。
「セイルさんのその考えは立派ですけど……」
「そこに至る発想があいかわらずズレまくっているのよね……」
「ふむ?」
俺は色々とズレているらしい。
二人と出会い、最近、少しずつ理解してきたが……
まだまだ、ってことか?
ま、今の自分に困ってないから、あまり気にすることじゃねえけどな。
「っと……見つけた」
建物を診ること少し。
さっきのじいさんの反応を捉えた。
さらに集中。
範囲を絞り、様子を探る。
さすがに姿を診ることはできず、中でなにをしているかはわからない。
ただ、声は聞こえた。
「……それで、今回の商品は?」
「ええ、ええ。とてもいいものが揃っていますとも」
声はじいさんのものだけではなくて、もう一人、聞こえてきた。
◇ お知らせ ◇
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