74話 積み重なる違和感
領主の屋敷は丘の上に建っているため見晴らしがいい。
散歩をするフリをしても、よほどおかしな行動をとらなければ怪しまれることはないだろう。
アズとユナと一緒に、屋敷の周りをぐるっと回り。
それから表の方に移動して、少し離れたところの公園で休む。
「けっこう離れちゃいましたね……屋敷は見えますけど、なんとなく、くらいしかわかりません」
「そうか? 俺は細部までしっかりと見えるぞ」
「セイルさんって、視力がいいんですか?」
「標準の十倍くらいだな」
「高っ!?」
「す、すごいですね……」
「目が悪くて病巣を見逃すとか、笑えない事態になるのは避けたいからな」
目が悪くなるようなことは避けて。
長い時間、遠くを見るなどして目を鍛えておいた。
遠くを見ると、けっこう視力は鍛えられる。
「まず、俺がここから屋敷を見張る。アズとユナは、屋敷に入るものを調べてくれ」
「そう言われても、どうやって……あ、そっか」
ユナが納得した様子でぽんと手の平を叩いた。
「私の鑑定を使えばいいんですね?」
「正解だ」
ユナの持つ鑑定は優れた能力だ。
色々なものを見分けることができる。
さすがに悪人を判別することはできないが……
ただ、武器を大量に持っているとか、危険な薬を持っているとか、そういうところを見分けることができる。
それを材料にきなくさい相手を見分ける、ということだ。
「さすがユナね、あたしの妹よ!」
アズが誇らしげに言う。
アズの手柄じゃないぞ……?
「なにかあればアズの鍛冶で捕縛する道具を作ればいい」
「そのつもりよ」
「いい答えだ」
二人共、自分のやるべきこと、役割をきちんと理解している。
これなら周辺のことは任せてもいいだろう。
「……」
俺は屋敷の監視に集中した。
門の前。
屋敷の周辺。
中庭。
今のところ外に怪しいところは見当たらない。
異変らしい異変もない。
まあ、外に問題を放置するほどのバカはいないか。
窓から建物の中を見る。
いくらかの窓はカーテンがかけられていたものの、中の様子を見ることができる。
一つずつ確認。
客間だろうか?
普通の部屋に普通の内装。
特に人はおらず、怪しいところもない。
次は物が乱雑に置かれていた。
たぶん、倉庫だろう。
その次は……
――――――――――
「……セイルさん、すごく集中しているね」
「……邪魔しないように気をつけないとね」
ユナとアズは、じっと遠くを見るセイルを見て、小声で話をした。
よし、と気持ちを切り替える。
周囲をしっかりと見て、怪しい人物……もしくはなにかしら問題がないか確認する。
「……」
「……」
じーっと見る。
見る。
見て、見て、見て、見続ける。
見つからない。
特になにもない。
今日は空振りかな?
成果がないと思った時、
「……あれ?」
ユナが小首を傾げた。
「どうしたの、ユナ?」
「えっと……あの人なんだけど」
ユナが指さしたのは、表通りをまっすぐ歩いていく年老いた男。
杖をついていて、ゆっくりと足を進めている。
「もしかして、あのおじいちゃんが怪しいの? 武器とか変な薬を持っているとか?」
「ううん、そんなことはないんだけど……あのおじいちゃん、どうして杖なんて持っているのかな、って」
「どういうこと?」
「だって……あのおじいちゃん、すごく元気だから」
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