73話 探りを入れてみよう
領主は、なぜ孤児を嫌うのか?
なぜ施設の存在を認めようとしないのか?
まずはそこを突き止めるべきだろう。
そう考えた俺は、領主の屋敷の近くまでやってきた。
街を見下ろせるような高い丘。
その上に建つ豪華な屋敷。
「あれが領主の屋敷か……」
派手な建物ではあるが……まあ、貴族なら普通か。
無駄に彫刻などの美術品が飾られているわけではなくて、税を無駄遣いするような悪徳領主らしさは感じられない。
パッと見ただけだから深いところはわからないけどな。
「で……お前ら、本気でついてくるのか?」
「もちろんよ!」
「セイルさんあるところ、私達あり、です!」
アズとユナが意気込んで言う。
迂闊だった。
今朝、さりげなく領主の様子を観察してくる、と口を滑らせてしまったのだけど……
アズとユナもついてくると言い出した。
同行を認めないのならバラしてやる、とも脅してきた。
出会った頃は、こんなアグレッシブさはなかったんだけどな。
誰のせいだ?
もしかして俺の影響か……?
「……まあ、いいか」
なんだかんだ、アズとユナはもう一人前の冒険者だ。
あまり無茶をしなければ足を引っ張ることはないだろう。
逆に助けてもらえるところも出てくるだろう。
ちなみに、チェルシーは留守番だ。
来たがっていたものの、孤児院の様子を見ないといけない。
それに、ソルの面倒も。
「それで、どうするの? あの屋敷に乗り込んで、領主をぶっとばすの?」
「任せてください。私、最近、また魔法が上達したんですよ」
「あたしは拳の威力が上がった気がするわ」
「んなことするわけねえだろ」
やはり、アグレッシブさが増している気がした。
「今日は近くで散歩をする……フリをして屋敷を観察だ。なにか違和感を覚えないか。なにかおかしなところがないか……そういうところを徹底的に探すぞ」
「オッケー」
「でも、領主さまがなにかしらの犯罪に加担しているかもしれないって、どうしてそう思うんですか?」
「ガキに優しくすることもできないヤツってのは、心に余裕がないヤツか悪党の二択だ」
「それは極論では……?」
「そう思うだろ? でも、わりと合ってるんだよ」
子供のことをどう思う?
一般人にそんな質問をした場合、可愛いとか守らなくてはいけないとかいつか欲しいとか、そんな肯定的な答えが返ってくる。
それが当たり前であり、子供=庇護すべき存在と誰もが認識する。
ただ、悪党になると答えは変わる。
都合のいい存在、搾取しやすい、鬱陶しい……などなど。
ふざけた答えのオンパレードになるだろう。
「ま、このたとえはユナが言うように極端かもしれねえが……それでも、ガキへの接し方でその人間の底ってのはわかる。まっすぐなのか、それとも歪んでいるのか。すごくわかりやすいんだよ」
「なるほど……」
「そう言われてみると、あたし達が奴隷だった頃、あいつらは酷いことばかりしてたわね。でも、中にはこっそりとごはんをくれる人もいたわ」
子供を相手にすることで、その者の善悪を測ることができる、と俺は考えている。
そして領主は孤児を毛嫌いしている。
孤児だから、という理由もあるかもしれないが……
孤児だろうがなんだろうが、子供は子供だ。
溺愛しろとまでは言わないが、普通に接することもなく、毛嫌いするというのは人間性が歪んでいるとしか思えない。
そんなヤツが領主をやっていたら、施設はいつまで経っても自立できないだろう。
それどころか途中で潰されてしまう可能性がある。
それは認められない。
「必要があれば、しっかりと治療しねえとな」
「物理という名の治療ね」
「私は魔法で治療ですね」
この二人、本当に誰の影響を受けているのやら……
俺しかいない。
やれやれ、とため息をこぼすしかないのだった。
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