70話 いらっしゃいませ
「「「いらっしゃいませ!!!」」」
孤児院を一部改装して作られた食堂。
フリルのついた『らしい』エプロンを身につけた子供達が笑顔で客を迎える。
来店した客達は、これは愛らしい、とほっこりした表情に。
まるで我が子を見守る親のよう。
店員である子供が水を運び、オーダーを取りに来た時は、ついつい笑顔で雑談をしてしまうほど。
とはいえ、相手は子供。
そしてここは、孤児院の内部に開店された、孤児院の子供達が運営する食堂。
所詮は子供。
愛らしい姿はよし。
ただ、料理には期待していない。
一流店には遠く及ばないし、なんなら保存食にも劣るだろう。
わざわざ足を運んだのは興味本位。
愛らしい子供で癒やされたから、食事代はチップとして払おう。
……などと。
客はそんな気持ちでいただろうが、それは大きな間違いだ。
「おまたせしました!」
「ど、どうぞ!」
アルルと、もう一人の子供が料理を運ぶ。
体格と体力の問題上、さすがに一人で全ての料理を一度に運ぶことができないので、ここは二人から三人で対応することになっていた。
「おぉ……!? これは、また……」
「思っていたものよりも美味しそうというか……えっ、なにこれ。すごくいい匂いなんだけど」
客達は運ばれた料理に目を大きくして驚いた。
香辛料とハーブで香ばしく焼き上げられたステーキ。
オリジナルドレッシングがかかったサラダ。
そして、スイーツ。
どれも本格的なもので、その匂いが客の鼻腔をくすぐり食欲をそそらせる。
「い、いただきます……!」
「まぁ!」
老齢の男女の客二人は、料理を口にして再び驚きの声をこぼした。
とろけるような笑顔になり、慌てているような感じで料理に手を伸ばす。
感想を聞くまでもない。
二人の客の心をバッチリと掴むことができたようだ。
別に来店した客達も同じ様子。
最初は子供が回す店と侮り、しかし、本格的すぎる料理に夢中になる。
次なる客が来店。
そちらも同じような反応を見せる。
その次の客も……
「……おいおい、すげえな」
接客のための猫かぶりを止めたアルルが、店の奥で様子を見る俺のところにやってきて、やや呆然とした様子で言う。
「あんたの話を聞いた時は不安しかなかったけど、まさか、こうもうまくいくなんて……」
「ま、初回ブーストってのはあるけどな」
聖女様が運営する養護施設で、子供達が食堂を始めた。
話題性は抜群だ。
あの聖女様が関わっているのなら……と、誰でも一度は足を運ぶだろう。
ここは師匠の名声を利用した。
そして、迎える子供達。
可愛く着飾り、大人に好かれるであろう無邪気な子供を装う。
これも嫌いなヤツはそうそういないだろう。
合わないヤツもいるだろうが、それは少数。
そんなものは無視して、大多数を狙えばいい。
最後に料理。
これは、ユナとアズ。
それとチェルシーをメインに担当してもらうことにした。
彼女達の料理は素直にうまい。
ちゃんとした調理器具と素材があれば、さらにうまいものが作れる。
店で出してもまったく問題はない。
いくらかの子供達は三人のサポートだ。
サポートついでに料理を見て学ぶ。
三人にいつまでも料理を作らせるわけにはいかないからな。
まずは、三人の元で基礎を学ぶ。
後に儲けた金できちんとした調理人を雇い、交代。
それで、さらに学び……
いずれ子供達が調理も担当する、という予定だ。
「まあ、予定は予定。全てうまくいけば儲けもの、という感じだが……」
客の笑顔を見る。
「案外、思っている以上にうまくいくかもな」




