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65話 意外な運営者

「あら?」

「げっ」


 俺とチェルシーは、せがまれるままガキ達に冒険譚を披露していたのだが……


 しばらくしたところで、なぜか師匠が現れた。

 なんでこんなところに……?


 まさか、追いかけてきた?

 俺はなにかやらかしていただろうか……?


 思わず震えてしまうのだけど、


「「「院長せんせーーーい!!!」」」


 俺の勘違いだったらしく、ガキ達がそんなことを言いつつ、笑顔で師匠のところへ。


 たまたまやってきたわけではなくて、いつものことらしい。


「……院長先生?」

「まったく……微妙なところを見られてしまいましたね」


 師匠はため息をこぼす。

 それから、一瞬の殺気。


 おいおいおい。

 やめろ。

 ここのことを隠しておきたかったみたいだが、バレたからといって弟子を半殺しにしようとするな。

 ガキ達の前だぞ。


 ……いや。

 もしかしたら全殺しかもしれないな。


「アルル」

「おう! なんだ、先生!」

「私は、この方達とちょっとお話があるので、子供達のことを任せてもいいですか? なにかあったら、遠慮なく呼んでください」

「おっけー。私に任せておいてくれよ」

「ふふ、ありがとうございます」

「へへ♪」


 アルルがあんなに嬉しそうにするところなんて見たことがない。

 師匠も師匠で、あんな優しい表情を見るのは初めてだ。


 最初、師匠と別れて、かなりの年月が経っているが……

 その間に、師匠も色々とあったのだろうか?




――――――――――




「どうぞ」


 俺とチェルシーは客間に案内されて、師匠がお茶を淹れてくれた。


 ……毒とか入ってねえよな?


「毒なんて入っていませんよ」

「……人の心を読むんじゃねえよ」

「あなたがわかりやすいんですよ」

「ちっ」


 茶を飲む。

 悔しいことにうまい。


「セイルって、お師匠さんの前だとおとなしいのね」

「あ? 俺は、別に誰の前でも変わらねーよ」

「そんなことないって。なんかこう、ビシッと従う忠犬みたいな感じになってるけど」


 ……マジか?


「セイル、お手」

「師匠も乗るんじゃねーよ!」

「ふふ。ここのことがセイルにバレてしまい、少し腹立たしかったもので、つい」

「ここのこと、そんな隠しておきたかったのか?」

「なにがなんでも、というわけではありませんけどね。私には似合わないでしょう?」

「そうなんですか? 癒やしの聖女って呼ばれているくらいですし、あたしは、ぴったりだと思いますけど」

「チェルシー、師匠の猫かぶりに騙されるな。口調は丁寧で物腰も穏やかだが、やることなすこと全部過激で……」

「セイル」


 ゾクッと寒気がした。


「余計なことを言うと……わかりますね?」

「あ、あぁ……」


 慌ててコクコクと頷いた。


 本性を隠しておきたいからって、弟子に本気の殺気をぶつけるんじゃねえよ……

 見ろ。

 隣のチェルシーも、あはは……と苦笑いしているじゃねえか。


「で……なんで、こんな施設なんて作ったんだ?」

「……はあ。見られてしまった以上、ごまかすことはできませんね。ただの興味本位というわけではなさそうですし……いいでしょう」


 師匠は、咳払いを一つ。

 それで気持ちを切り替えて、ゆっくりと語る。


 師匠は治癒師だ。

 世界トップクラスで、その実力は、たぶん、上から数えた方が早い。


 そんな師匠だけど、治癒師としての仕事に嫌気が指していたらしい。


 舞い込んでくる依頼は性根の腐った金持ち共。

 金はいくらでも払うから治療してほしい。

 むしろ不老不死にしてほしい。


 そんなふざけた依頼ばかり。


 呆れ果てた師匠は表舞台から姿を消して……

 そして、気まぐれの旅の末に俺の故郷にたどり着いた。


「そこで、あなたと出会ったのですよ」


 そう言う師匠は笑顔だ。


 どこか楽しそうで……

 そして、嬉しそうだった。

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― 新着の感想 ―
おっ、セイルがまだ純真無垢?な頃の話ね。気になる気になる!
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