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59話 聖女……様?

「なにをしているのですか?」


 とある女性が二人組の男に声をかけた。


 足まで届きそうな長い金髪はリボンで束ねられていた。

 陶器のように白い肌。

 空のような青の瞳。


 街を歩けば、十人中十人の男が振り返るような美女だ。


「おっ、お姉さんすごい美人だね。今日は運がいいな」

「お姉さんも一緒に遊ぼう。絶対楽しい思いをさせるからさ」


 二人組の男はニヤニヤして。


 ……一方で俺は、顔を思い切りしかめていた。

 たぶん、顔色は青くなっていると思う。


「大変。セイル、あの人も早く助けないと……セイル?」

「……なにやってんだ、あの人は?」


 なにやら清楚なお嬢様という雰囲気をまとっているが。

 ただ、俺の目をごまかすことはできない。

 間違えるわけがない。


 あの人は……


「あら。私に声をかけていただけるので?」

「もちろん。お姉さんみたいな美人は大歓迎!」

「この子達も、もちろん大歓迎だけどね」

「ちょっと、あたし達があんた達みたいなへんてこと一緒するわけないでしょ!」

「そうです! というか、そこのお姉さんも巻き込まないでください!」

「へんてことか、傷つくなあ……」

「慰謝料要求したいところだけど、一緒するなら許してあげるよ?」

「だーかーらー……」


 アズがキレかけたところで、女性が前に出る。

 にっこりと笑み。


「ところで、私の顔に見覚えはありませんか?」

「え?」

「お姉さんみたいな美人さん、一度会ったら絶対に……って……ま、まさか」

「あっ……!? お姉さんは……い、いや!? あなた様は……!?」

「その反応、思い出していただけたみたいですね」

「し、ししし、失礼いたしました!?」

「俺達は、そのっ、あのっ……!?」


 途端に慌てる二人組の男達。

 女性はあくまでも笑みを絶やさない。


「このような場なので、少し開放的になるのは構いませんが、ほどほどに……お願いいたしますね? 無理に、ということは決してあってはなりません」

「「はい、もちろんです!」」

「では、どうぞ」

「「はい、失礼しました!」」


 二人組の男達は、何度もぺこぺこと頭を下げながら立ち去る。


 その様子を、ユナとアズはぽかーんと見ていた。

 チェルシーもぽかーんとしていた。


 俺は……

 変わらずしかめっ面を作っていた。


「あ、あのっ……ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」


 ユナとアズが女性にお礼を言う。

 その目はキラキラと輝いていた。


 突然現れた美人。

 しかも謎の圧を持ち、言葉だけでナンパを追い払う。


 同じ女性として憧れるものがあるのだろう。


 気持ちはわからないでもないが……

 その人に憧れない方がいいぞ。

 期待もしない方がいい。


 すればするほど、後でとんでもない失望を味わうことになるからな。


「いえいえ、気にしないでください。同じ女として、あのような場面は見過ごせませんからね。当たり前のことをしただけですよ」

「「か、かっこいい……!!」」


 ユナとアズは目をキラキラと輝かせた。


 憧れるな、というのはもう手遅れかもしれない。


「すみませーん」


 チェルシーが三人に声をかけた。


「あ、チェルシーさん。それにセイルも」

「二人も来ていたんですね」

「ごめんね。あたし達がもっと早くに気付けばよかったんだけど……」

「いえ、大丈夫です」

「この人が助けてくれたし」

「いえいえ。私は大したことはしていませんよ」


 女性は謙遜した様子で言うが……

 その猫撫声を聞く度に、背中がざわざわっと震えた。


「あの……なんだかすごい人に見えますけど、もしかして、癒やしの聖女様ですか?」


 ユナがそんなことを尋ねた。


「あら、どうしてそのようなことを?」

「さっきの人達、お姉さんの顔を見て逃げていったから……それに、なんだか品があるというかオーラがあるというか」

「それ、あたしも思っていたわ。お姉さんってば、只者じゃない雰囲気よね」

「ふふ、ありがとうございます。今は、こっそりと遊びに来ているので、私のことは秘密にしてくださいね?」

「それじゃあ、やっぱり……」


 ユナとアズは、ますます憧れの表情を強くした。


 だから、やめておけ。

 この人の本性を知ったら、すごく複雑な気持ちになるぞ。


「ふふ」


 女性がこちらを見る。

 お前、今よからぬことを考えていたな? という感じの圧を感じる。


 ため息を一つ。


 できれば、ここで見て見ぬふりをして立ち去りたかったが……

 さすがにそういうわけにはいかないか。


「あー……久しぶりだな、師匠」

「ええ、久しぶりですね」


 そんな会話を交わして、ピタリとユナとアズとチェルシーの三人の動きが止まる。


 ややあって……


「「「師匠っ!!!?」」」


 驚きの声が響いた。

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― 新着の感想 ―
師匠から色々受け継いだんだよね。口の悪さとか(笑)この後3人がどのような精神汚染いやいや、影響を受けるのか楽しみです(笑)
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