58話 こういう時だからこそ、しっかりとアピール
「あつっ」
レジャーシートから出ると、砂の感触が足裏に伝わる。
太陽に熱されていて、ついつい声が出てしまう。
ただ、この感触は悪くないな。
海に来ている感覚がするというか……
どこか心地よさを感じさせてくれる。
「あっ、セイルさん!」
「こっちよ、こっち!」
ユナとアズが手を振る。
隣のチェルシーも笑顔を向けてくれた。
「やっとセイルも遊ぶ気になったんだ?」
「こいつに急かされてな」
「オンッ!」
一仕事したぜ、という感じでソルがどこか誇らしげに鳴いた。
「よーしよしよし。ソルは偉いね」
チェルシーは笑顔でソルを撫でた。
ソルは喜んで、その場で飛び跳ねる。
当然、水飛沫が舞うわけで……
「きゃっ、やったなー?」
「ユナ、あたし達はソルに加勢するわよ!」
「うん。チェルシーさん、覚悟してくださいね?」
再び水のかけあいが始まる。
ソルも尻尾を器用に動かして水を跳ね上げていた。
楽しそうだな、おい。
「ま、たまにはこんなのも……」
「隙あり!」
アズに思い切り水をかけられた。
「ほら、セイルも遊びましょ!」
「そうそう、アズちゃんの言う通りだよ? 海に来て水遊びとか泳がないなんて、人生の八割は損しているって」
「そこまで言うか」
「そこまで、なんだから♪」
……なら、仕方ねえか。
「じゃ、まずは反撃だな」
「え? あ、ちょっと……」
「おらぁ!」
「「「ひゃーーー!?」」」
――――――――――
波打ち際で水遊びをして。
泳いで競争をして。
砂遊びもして。
たっぷり遊んだところで、一度、レジャーシートを広げたところまで戻った。
「ふぅ……わりと楽しめるな」
「ふふ。セイルさん、子供みたいでした」
「なんだかんだ、あたし達の中で一番楽しんでいたわよね」
やめろ。
生暖かい笑顔を見せてくるな。
お前らは近所のおばちゃんか。
「ねえねえ。そろそろお腹が空かない?」
「くぅーん」
チェルシーの言葉に賛成だ。
ソルも空腹らしく、最初の時ほど元気がない。
「じゃ、あたしとユナがなにか買ってくるわ」
「二人はゆっくりしててください」
「え、悪いって。あたしも一緒に行くよ」
「いいからいいから」
「気にしないでください」
ユナとアズはそう言うと、テテテと駆けていってしまう。
「大丈夫かな?」
「んな心配することねえだろ。ガキじゃあるまいし」
「そうじゃなくて……」
「?」
「ナンパされないかな、って」
「んな心配……」
……必要ないか?
二人は幼いが、ただ、美少女であることは間違いない。
年齢なんて気にしない、とかいう変態も世の中にはいるわけで……
「ちっ、めんどくせえ」
「ふふ」
「なに笑ってんだよ?」
「セイルは、やっぱりセイルだなー、って」
「なんだそれ」
チェルシーと二人でユナとアズを追いかける。
すると、チェルシーが危惧した通り、二人組の男に話しかけられていた。
「ったく……」
うざいな。
手っ取り早く殴るか?
そんなことを考えていた時……
「なにをしているのですか?」
一人の女性が二人組の男に声をかけた。
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