53話 思わぬ才能
「ふむ、しかし……」
神殿のじいさんは納得できない様子で、なにから水晶を調べていた。
「どうしたんだ?」
「いえ……お二人が手を触れた時、水晶は確かに輝きました。それはつまり、なにかしらの適正があるということなのですが……」
「「えっ!?」」
「しかし、実際は適正なし、という結果です」
「「……しゅん……」」
じいさんの言葉に反応して、ユナとアズが一喜一憂する。
そこまで気にしなくてもいいと思うんだがな。
適正があろうがなかろうが、ユナとアズは仲間だ。
あるなしで接し方を変えるようなバカじゃない、俺は。
とはいえ……
「……一人前になりたい、ってのは誰でも思うことか」
ふと、師匠のことを思い出した。
師匠の下で修行をしていた時。
俺は、いつも焦り、無力感を覚えていたような気がする。
師匠はなんでもできて。
俺は、なにもできなくて。
そんな劣等感と。
そして、大事な人の力になれないという虚しさはあった。
ユナとアズも、それを抱えているのかもしれないな。
だとしたら、気にするなと言っても無駄ではあるが……
しかし、適正がないのだとしたら、どうすればいい?
「あぁっ、もしかして!?」
ふと、なにか閃いた様子でじいさんが大きな声を出した。
「どうした、じいさん?」
「もう一度、検査をさせていただけませんか? 今度は、お二人で同時に水晶に触れてください」
「え? 私とお姉ちゃんで?」
「それくらい、別になんてことないけど……」
言われるまま、ユナとアズは同時に水晶に触れた。
すると、今までのことが嘘のように、水晶が強烈な光を放つ。
「うわっ、なんかすごい反応だね!?」
「これは……」
「やはり、そういうことでしたか」
驚く俺達を尻目に、じいさんは一人納得した様子だった。
おい。
勝手に納得してないで説明をしろ、説明を。
「ユナ殿とアズ殿は、一人一人では適性を持たないのですが……二人となれば話は別なのですよ」
「あん? どういうこった?」
「つまり、二人で一つの適正、スキルを持つということですな。珍しいことではありますが、過去に例がなかったわけではありません。兄弟などに多いパターンなのですが……ユナ殿とアズ殿は双子なので、なるほど、納得です」
「っていうことは、あたし達……」
「お姉ちゃんと一緒なら、なにかしらの適正やスキルがある、っていうこと?」
「はい、その通りです」
「「っ……!!!?」」
ユナとアズは互いの顔を見合わせて。
「「やったーーー!!!」」
喜び一色の表情で抱きしめ合う。
ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねて……すごい喜びようだな。
「よかったね、セイル」
「なんで俺が良いことになるんだよ?」
「鏡、貸してあげようか?」
「……いらねえよ」
――――――――――
「「うぅ……」」
適正検査が終わったユナとアズは、がくりと肩を落としていた。
検査結果が関係している。
ユナは『鑑定』。
アズは『鍛冶』。
その結果に満足していないらしい。
「鍛冶とか、ぜんぜん戦闘向けじゃないわ……」
「お姉ちゃんはいいよ……私なんて鑑定とか、不遇スキルだよ……」
戦闘で活躍したかったらしい。
ただ、諦めるのは早い。
「二人共、んな落ち込むことはねえぞ」
「「え?」」
「戦闘で活躍してぇんだよな?」
「「うんうん」」
二人は同時にこくこくと頷いた。
さすが双子。
動きもぴったりだ。
「なら、いくらでもやりようはある。というか、ユナとアズのスキルは『最高』だぜ?」




