表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/53

43話 過去に決着をつけるために

 街からしばらく行ったところに放棄された砦がある。


 昔は、最前線の盾として活躍したらしいが……

 戦争が終わった今、役目を終えたらしい。


 今は獣の巣になっているようだ。


「ここが、その砦だ」


 三人を砦に案内した。


「けっこう大きいですね……」

「気をつけないと迷子になっちゃいそう」

「……セイル。ここにクライブがいるの?」

「たぶんな。勘だから、根拠はねえよ」

「だいじょーぶ。あたしは、セイルの勘を信じるから!」

「私もです!」

「あたしも!」

「……もの好きなやつらだな」


 苦笑しつつ、先に進む。


 ある意味で、かつての思い出の場所。

 ここにクライブ達がいるような気がした。


 ここで俺達を消して……

 そして、過去を抹消する。


 ……クライブなら、そんなことを考えているような気がした。


 なんて。

 一瞬でも物思いに耽っていたのが失敗だった。


「っ!? 待て!」

「え?」


 それに気づいて制止するものの、遅い。

 ゴゴゴ、と地面から壁がせり上がり、俺と三人を分断してしまう。


「くっ……!?」


 急いで壁を調べた。

 耳を当てて、軽く叩いて、その音を確認する。


 それほど頑丈なものではないが……

 しかし、砦の機構と深いところで連結されている様子だ。

 下手に破壊をしたら、砦そのものが崩落する恐れがある。


「ユナ! アズ! チェルシー! 大丈夫か!?」

「……大丈夫です!」


 壁の向こうから、わずかではあるがユナの声が聞こえてきた。


 よかった。

 これで、まったく連絡がとれないとなると、かなり厳しい状況になっていただろうからな。


「そっちは大丈夫か?」

「はい、誰も怪我はしていません。ただ、どうやってそちらに行けばいいか……」


 今来た道を塞がれている以上、三人は簡単に砦から脱出することはできない。


「……わかった。なら、最深部に向かってくれ」

「最深部ですか?」

「そこで合流するのが、一番、手っ取り早いだろう。もちろん、危険もあるだろうが……チェルシーもいるから、たぶん、大丈夫だろう」

「……チェルシーさんのこと、信頼しているんですね」

「まあ、パーティーにいた頃、その力は何度も見てきたからな」

「それだけじゃなさそうですけど……でも、私達だって、ちゃんと信頼されるようになってみせます!」


 どういうことだ?


「わかりました。では、最深部で」

「ああ。くれぐれも気をつけてくれ」

「はい。セイルさんも」


 三人の無事を祈りつつ、壁から離れた。


 ここから先は、一人で行動しないといけない。


「……こんな時に弱気になるなんてな。良いことなのか、悪いことなのか」


 苦笑する。


 ユナとアズナが隣にいない。

 そのことに違和感を覚えて、不安も抱いていた。


 思っていた以上に、俺は、あの二人を大事に思っていたみたいだ。

 力とか、そういうところは関係なくて。

 そこにいてくれるだけで、とても頼りになる。力をくれる。


「とはいえ、情けないところは見せられないな。俺は俺で、しっかりとやるべきことをやろう」


 気を取り直して、俺は最深部を目指した。




――――――――――




 壁によって分断されてしまったものの、最深部に繋がる道が途切れたわけではないようだ。

 地図を確認しつつ、奥へ進んでいく。

 放棄された砦ではあるが、だからこそ、きちんとした地図が残っている。


「……おかしいな?」


 魔物の討伐依頼のはずなのに、魔物を見かけない。

 砦を調べてみると、魔物がいたという痕跡もない。


 やはり、これは……


「よく来たな。お前なら、ここに来てくれると信じていたぞ」


 突然響く、第三者の声。


 空が見える広場に出た。

 そこにいたのは……


「……クライブか」


 元勇者であり。

 かつてのパーティーメンバーであり。

 そして、幼馴染だ。




――――――――――




「歓迎するよ」

「その顔、あたし達のことは、ある程度、予想していたみたいね」


 ユナ、アズ、チェルシーも別の広場に到着して……

 そこで、ティトとルルカと顔を合わせることに。


 三人は驚きはするものの、しかし、取り乱すことはない。


 クライブがいるのならティトとルルカもいる。

 もちろん、その二人は敵だ。

 そんな想定を重ねていたから、動揺することはない。


「これってさ……やっぱり、そういうこと?」

「もちろんさ。僕達は、疫病神……いや。死神のようなキミ達を叩き潰す」

「ま、チェルシーまで裏切っていたとか、それは予想外だったわ」

「それは……」

「はぁ!? なに言っているわけ!?」

「チェルシーさんが裏切った? それは、あなた達の方でしょう! 私達は、全部、見て聞いているんですからね!」


 アズとユナが怒る。

 ソルも、グルルルと唸り声を上げていた。


 チェルシーは胸が温かくなるのを感じた。


 優しい子達だ。

 セイルとは離れ離れになってしまったけれど……

 彼がなにも気にしないで戦えるように、この子達を絶対に守ろう、と誓う。


「セイルがクライブ達の居場所を理解していたように、クライブ達も、あたし達の来訪を予期していたみたいね。待ち伏せされちゃったっぽい」

「問題ないわ。むしろ、探す手間が省けたってものよ」

「はい。ここで、叩きのめしてあげます!」

「あら、怖い怖い」

「まあ、話が早くて助かるね。これはこういうことなんだ、って一から説明するの、面倒だからね」


 ルルカとティトが武器を抜いた。


 合わせて、アズとユナ、チェルシーも武器を手に取る。


「僕達の力、見せてあげるよ」

「それはこっちのセリフよ」

「私達、三人とソルなら、絶対に負けません!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今のクライブの姿には勇者という称号は相応しくありませんね、まさに悪の帝王と呼ぶのに相応しい没落ぶりですよ。
さてどんなやられ方するかな(笑)
さあ!思う存分ざまあされて下さい(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ