表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/53

34話 ふざけるなよ?

 クライブは単純な男だ。

 思考も単純で、そして、プライドが高い。


 勇者なのだから、それ相応の宿に泊まるべき。


 そう考えるだろうという予想は的中して、わりと簡単にクライブ達が泊まる宿を突き止めることができた。


 そして……


「邪魔するぞ」

「なっ……!?」


 扉を蹴破ると、中にいたクライブ達が驚きの表情を浮かべた。

 いきなり乱入してくれば、まあ、当然の反応だ。


「な、なに……? セイルか?」

「おいおい、なんだい、いきなり? 扉を蹴破るなんて、品がないね」

「あー……わかったわ。この前の話、やっぱり受けたいんでしょ? 私達のパーティーに復帰したいんでしょう?」

「なるほど、そういうことか。やはり、痩せ我慢をしていたというわけだな?」


 なにを勘違いしたのか、三人は、ニヤニヤと笑う。


 あー……苛つくな。

 本気で苛つくわ。


 チェルシーの怪我は、重度の打撲。

 全身に打撲を負い、瀕死の状態に陥っていた。


 怪我の具合から、一人ではなくて、複数人による犯行ということは簡単にわかった。


 つまり……

 このクズ共は、よってたかって仲間のはずのチェルシーに暴行を加えたわけだ。


「俺達のパーティーに復帰したいか、セイル? 俺は寛大な男だ。どうしても、と土下座をして頼むのなら、まあ、少しくらいは考えてやらないでもぐはぁ!!!?!?!?!?」


 全力でクライブを殴り飛ばした。

 こちらの手も傷つくが、関係ない。


 鼻の骨を折り。

 それと、前歯も折る感触。


 吹き飛ばされたクライブは、窓を割り、そのまま外に落ちていく。


「「……え?」」


 突然の展開についていけない様子で、ティトとルルカが間抜け顔を晒した。


「……お前!? いったい、いきなりなにをはぐぅ!?!?!?」


 ティトも殴りつけた。


 上から下に殴りつけたため、ティトは、頭から床にめり込む。

 たぶん、一人では抜け出せないだろうな。

 まあ、知ったことじゃない。


「あ、あんた、いきなりやってきて……!? まさか、女の私まで手を……」

「うるせえ、んなこと知るかボケ」

「ひぐぁ!!!?」


 ルルカを殴りつけて、壁まで吹き飛ばした。

 途中、テーブルを巻き込んで、嫌な音が響いたが、まあ、知ったことではない。


 床にめり込んだティト。

 壁にめりこんだルルカ。

 二人は、ひとまず放置して、俺は外に出た。


「ごほっ、がはっ……!?」


 ティトやルルカと違い、クライブは意識が残っていた。

 鼻血などで顔を汚しつつ、こちらを睨みつけてくる。


「き、貴様っ……いきなり、このような蛮行に及んで、この俺に対してがはぁ!?」

「黙れよ」


 今度は、顔を殴り上げた。


 顎を砕く感触は……ない。

 ちっ、残念だ。


「おまっ……おまええええええぇぇぇっ!!!」


 完全にブチキレたクライブは、抜剣して、血走るような目で睨みつけてきた。


 ティトとルルカと違い、なかなかに頑丈だ。

 でも、それでいい。

 すぐに倒れられたら、殴る機会が減るからな。


「このような、ふざけたな真似をいきなり……貴様は死ねっ!!!」

「ふざけた真似? ああ、そうか。そうだな……」


 クライブは駆けつつ、剣をまっすぐに突き出してきた。


 速度、威力は十分。

 普通に考えるのなら、俺は、クライブの刃で串刺しにされてしまうのだろうが……


「そいつは俺のセリフだ」

「なぁっ!?」


 クライブの剣を殴り、砕いた。


 国から賜った、至宝の一品だったか?

 いつも、この剣は素晴らしいぞ、と自慢していたが……

 それを、粉々に砕いてやる。


 それから、もう一度、クライブを殴りつけた。


 今度は腹部。

 クライブはえづいて、その場に膝をつく。


「ば、かなっ……!? 俺の剣だけ、ではなくて……なぜ、この俺が、こうも簡単に……!!!?」

「なぁ……理由はわからねえけどさ、クライブは、俺のことが鬱陶しかったんだよな? うざかったんだよな? 能力うんぬんは適当にこじつけて、うざいから俺を追放したんだよな?」

「ぐっ……!」

「ま、それはいいさ。俺ももう、クライブとやっていくのは限界だと思っていたからな。ちょうどいい機会だった。追放されたことに関しちゃ、もうなんとも思ってねえよ……ただな」

「がはっ!?」


 再び殴りつけた。


 思い切り顔を殴りつけて、クライブを吹き飛ばす。

 全力で顔を殴れば、こちらの拳も痛めてしまう。


 治癒師にとって大事な手を痛めるなんて、あってはならないことなのだが……

 どうしても手加減ができない。

 次から次に怒りが湧き上がり、自制することができない。


「なんで、チェルシーに手を出した?」

「な……なんのことだ、俺は、なにも……」

「てめえの履いている靴。それと、ティトとルルカの靴。それらは特注品で、他にはない。そんな靴で蹴れば、いい感じにしっかりと跡が残るんだよ。てめえらがやった以外、考えられねえんだよ」

「ぐっ……」


 言い逃れできないように逃げ道を潰すと、クライブは苦い顔をした。


「繰り返しになるが、俺のことはどうでもいいんだよ。うざかったから、素直に追放された。そのことも、どうでもいい。ただな……なんで、仲間であるはずのチェルシーに手を出した? あんなになるほど痛めつけた?」

「……自業自得だ」


 クライブは、暗い笑みと共に言う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
直接報復に向かうとは…。
まさか直接殴り込むとは
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ