17話 いざダンジョンへ
冒険者が稼ぐ方法は、主に二つだ。
一つは依頼を請けること。
ただ、ランクに応じて制限がかかるため、最初はなかなか稼ぐことはできない。
そして、二つ目の方法は……
「今日からダンジョンに潜るぞ」
「ダンジョンですか? えっと……」
「ざっくり言うと、お宝いっぱい。でも、魔物もたくさんの天然の迷宮よ」
「アズの説明で大体間違っていない。けっこう稼げるし、魔物もたくさんいるから良い修練になるぜ」
「だ、大丈夫でしょうか……? 私達、まだまだだと思うんですけど……」
「うっ……そ、そう言われると、あたしもちょっと不安になってきたわ」
「気にするな。俺がサポートしてやるから、怪我なんてさせねえよ。思う存分にやればいい。めんどくせえが、守ってやるさ」
「……セイルさん……」
「……セイル……」
ユナとアズが、どこかぽーっとした様子でこちらを見た。
「……お姉ちゃん、どうしよう。私、セイルさんと夜を一緒に過ごしたいよ」
「……ストレートすぎるわよ! お姉ちゃん、妹がむっつりで困るわ」
「……む、むっつりじゃないもん!」
「……普段、なんてことない顔して、時々、ぐいぐい行くからむっつりなのよ」
なんの話をしているんだ、二人は?
「まあ、二人の意思を無視するつもりはない。行きたくないなら、これまで通り、普通の依頼を請けるが……」
「が、がんばります!」
「あたし達に任せてちょうだい!」
「決まりだな」
と、いうわけで……
さっそくダンジョンに挑むことになった。
――――――――――
街の近くに、初心者向けのダンジョンがある。
稼ぎはあまり出ないだろうが、ユナとアズにダンジョンに慣れてもらうには、ちょうどいいだろう。
そこでダンジョンに慣れてもらい……
少しずつランクアップしていこう。
「わぁ……ここがダンジョンなんですね」
「洞窟と違って、床とか壁とか天井とか、しっかり整備されているのね……」
ユナとアズは、興味津々という様子であちらこちらに視線を飛ばしていた。
遠足じゃないのだが……
まあ、いいか。
俺も、あんな頃があったからな。
今日はダンジョン体験を第一に考えて、二人のサポートに回ることにしよう。
「あっ!? お姉ちゃん、魔物だよ!」
「ウルフが三匹……ねえ、セイル。ここは、あたし達に任せてくれない?」
「大丈夫か?」
「平気よ! 日頃の稽古の成果、見せてあげるわ!」
「うん、がんばろうね、お姉ちゃん!」
「よし。なら、やってみろ。泣いても助けてやらねえからな?」
「ふふん、逆にセイルを驚かせてやるわ、そこで見てなさい!」
ユナとアズはやる気たっぷりだ。
ここは任せることにしよう。
「はっ!」
「ウインド!」
アズが駆けると同時に、ユナが風魔法を唱えた。
突風が吹いて、ウルフ達の足が止まる。
反対にアズは背中を押される形となり、さらに加速した。
そのままの勢いで拳を振り抜いて、先頭のウルフの頭部を強烈に痛打する。
「ギャン!?」
「まだまだ!」
アズは勢いを止めず、さらにもう一匹を蹴り飛ばす。
「ファイア!」
ユナも追加で魔法を唱えて、最後の一匹に火球を当てた。
「……こんなところね! やったわね、ユナっ」
「うん、お姉ちゃん!」
姉妹は、いえーいと笑顔でタッチをした。
それから、はっとした様子で表情を引き締めて、こちらを見る。
「ど、どうでしょうか……?」
「あたし達、けっこう、うまくやれたと思うんだけど……」
「ああ、文句ない見事な連携だ。成長したな」
「えへへ」
「やった!」
ユナとアズは笑顔になり、もう一度ハイタッチを交わした。
いざという時は、俺が動こうと思っていたが……
いやはや。
本当に見事な連携だ。
双子の姉妹だけあって、息がぴったりだ。
「セイルさん、あの……」
「あたし達、うまくやれたから、その……もっと褒めなさいよ!」
「あ?」
どうしろと?
「「……」」
二人は、なにかを求めるような感じで、じーーーっとこちらを見る。
少し迷ってから、俺は、ユナとアズの頭を撫でた。
「ま、ほどほどにがんばったんじゃねえか? よくやったな」
「はふぅ」
「ふゆぅ」
ユナとアズは、猫のような感じで気持ちよさそうに目を細くした。
「えへへ、なでなでされちゃった♪」
「ま、まあ、悪くないわね」
「これでいいのか……というか、二人共、猫みたいだな」
「え、えっと、セイルさんが望むなら、セイルさんだけの猫になりますよ?」
「にゃ、にゃーん……とか、こんな感じ?」
それ、人前ではやるなよ。
色々と俺の人格などが疑われてしまう。
「セイルさん、もっと褒めてほしいにゃん」
「なでなでしなさいにゃん」
「も、もっと色々なところを触ってもいいですにゃん?」
「せ、攻めるわね……にゃん」
「ぐっ、あからさまなのに可愛いな、ちくしょう……!」
今度、猫耳のアクセサリーを買おうか?
それを二人につけてもらい……って、なにを考えているんだ、俺は!?
なんて……
ちょっと思考が暴走してしまうくらい二人は愛らしい。
そんな感じで、ダンジョンの攻略中ではあるものの、のんびりとした時間が流れるのだった。
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