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10話 冒険者ギルドの定番といえば?

「よし!」

「やった!」


 ユナとアズは、やや苦戦しつつも、それぞれゴブリンを討伐することに成功した。

 二人は笑顔で拳を握る。


「セイルさん、やりましたー!」

「あたし達、ちゃんとゴブリンを倒して……」


 二人が固まる。

 その視線の先に、十匹のゴブリンを討伐し終えたセイルの姿があった。


「「いつの間に……」」


 ユナとアズが一匹ずつ倒す間に、セイルは十匹倒していた。

 差が圧倒的だ。


「お姉ちゃん……私、ついていけるか、ちょっと自信なくなったかも……」

「安心して、あたしもよ……」


 平原にユナとアズの乾いた笑い声が響くのだった。




――――――――――




「よし、到着だ。ここが冒険者ギルドだ」


 ユナとアズを連れて街へ戻り、宿の延長をしてから、冒険者ギルドに移動した。


「「……」」

「んな緊張するな。二人は条件を満たしているから、登録は問題なく終わる」

「で、でも、こういうところで絡まれることが多いんですよね?」

「そうそう。『はあ? お前達みたいなガキが冒険者? 笑わせるな』って感じで」

「あー……まあ、一昔前は、そういう連中はいたけどな。今は、ほとんどいねえぞ」


 以前は、質の悪い冒険者がいた。

 新人や気に入らない相手に絡むという事件も起きていた。


 ただ、そんな横暴を許せば冒険者全体の評判に関わる。

 ギルドは厳しく取り締まり、罰則も強化したことで、そういう者はほとんど消えた。


「ほっ……なら安心ですね」

「さっそく登録に行きましょう!」


 安心とわかると、途端に元気になるアズ。

 らしいといえばらしく、ついつい苦笑してしまう。


 中に入り、受付嬢のところへ。

 そこで、ユナとアズの登録したいと告げる。


「はい、登録ですね? では、こちらの書類に必要事項の記入を」

「えっと……終わりました」

「これでいい?」

「……はい、問題ありません。これで登録は完了です。こちら、お二人の冒険者証になります」

「「おー」」

「再発行にはお金がかかりますので、紛失などに注意してくださいね? それと……」


 受付嬢から一通りの説明を受ける。

 事前に軽く説明しておいたので、二人共、スムーズに理解している様子だ。


「……以上になりますが、なにか質問はありますか?」

「えっと……大丈夫です」

「あたしも問題ないわ」

「かしこまりました。では、良き冒険者ライフを」


 これで、二人は正式に冒険者に……


「おいおい、こんなガキが冒険者? 笑わせるな」


 突然、そんな声が割り込んできた。


 質の悪い冒険者は、ほぼほぼ消えたのだけど……

 いる時はいる。

 今日は、とても運が悪いみたいだ。


「遊びじゃねえんだ。今すぐ冒険者証を返して、家に帰れ」

「むっ……あなたに、そんなことを決められるなんて心外です」

「そうよ。あんた、まったくの無関係じゃない」

「うるせえ! 先輩である俺の善意の忠告が聞けないっていうのか!?」


 こいつ、かなり酔っているみたいだ。

 依頼に失敗してヤケ酒……という感じか?


「……失礼ですが、あなたは」

「待て」


 受付嬢が注意しようとするが、ストップをかけた。


 ちょうどいい機会だ。

 こいつには、ユナとアズがステップアップするための踏み台になってもらおう。


「そんなにこの二人のことを認められないなら、ここで決闘でもしてみるか?」

「あぁ? なんだ、てめえは!?」

「この二人のパーティーメンバーだ。で、どうする? ま、無理にとは言わねえよ。あんたが口だけで、実際に決闘する勇気もないチキンってのなら逃げてもいいぜ」

「上等だ、やってやろうじゃねえか!」

「「ちょ……」」


 ユナとアズが慌てるものの、心配する必要はない。

 二人だけに聞こえる声で、そっと耳打ちする。


「問題ねえよ。せっかくだから、あいつと決闘して、軽くでもいいから対人戦闘っていうものを経験しておけ。まあ、触るくらいの経験しかできないだろうが」

「そ、そんなことを言われても……」

「あたし達、セイルと違って普通なんだけど……」


 まるで俺が変みたいな言い方じゃないか。

 俺は普通だぞ。


「「普通じゃないから」」


 揃って否定されてしまった。

 なぜだ?


「とにかく……あいつは、まず最初に下蹴りで体勢を崩そうとしてくるはずだ。だから、それを避けて、痛いカウンターを喰らわせてやれ。そうだな……顎と鳩尾、それぞれに一撃を与えれば終わるだろう」

「え? なんで、そんなことが……」

「ほら、始まるぞ」


 困惑する二人を前に押し出した。

 ユナとアズは互いの顔を見て、覚悟を決めた様子で男と対峙する。


「へへ、すぐに終わらせてやるぜ」

「二人共、準備はいいか?」

「は、はい」

「え、えぇ……」

「じゃあ……始め!」

「おらぁっ!!!」


 開始の合図と同時に、男は下蹴りを放つ。

 しかし、ユナとアズはぴょんと飛んで、華麗に回避。


「ファイア!」

「ていっ!」


 ユナは魔法を。

 アズは拳を繰り出して、綺麗なカウンターを決めた。


「あっ……ご……」


 男は痙攣して、そのまま倒れる。

 ちょうどいいところに入ったらしく、しばらくは気絶したままだろう。


「あとは任せてもいいか?」

「はい、お任せください。この方には、厳罰を与えておきますので」


 後は受付嬢に任せて、俺達はギルドを後にした。


「す、すごいです……セイルさんの言う通り、本当に下蹴りが来ました……」

「それに、カウンターをしたら、面白いくらい見事に決まったし……え、なんであんなことがわかったの? 未来が見えていたの?」

「まさか。単純に、予測しただけだ」


 男は酔っていて、普段通りの力を発揮することはできない。

 その上で、体の筋肉の付き方を見て、得意とする攻撃、戦術を推測。

 そうして、もっとも取る可能性が高い行動を導き出しただけだ。


「そ、それって、これまでの相手の言動から、完璧に行動を予測した、っていうことだよね……?」

「そんな高度な戦術、どれだけの人が組み立てられるか……国のお偉いさんでも無理じゃない?」

「ど、どうして、そんなことができるんですか?」

「当然だろ? 俺は治癒師なんだぞ。人体の構造には詳しいから、見てわかるんだよ」

「預言者のごとく、ここまで戦いを支配しちゃうなんて……」

「ゴブリンの時もそうでしたけど、セイルさんって、本当にすごいですね……でもでも、置いてけぼりになったり、おんぶにだっこになるつもりはありません! ねっ、お姉ちゃん!」

「ええ! いつか、あたし達もセイルと肩を並べて戦って、背中を預けてもらえるようにがんばるわ!」

「ま、ほどほどに期待しておくよ」

「あー、その言い方、期待してないでしょ!」

「そうかな? セイルさん、口が悪いから、今のは照れ隠しのような……」

「さてな」


 俺は詳細は語らず、苦笑で返した。


 ……こんな仲間がいるってのは、いいもんだな。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

今日からは、毎日20時更新でお届けしていきます。


今後も『ざまぁ』や『無双』が加速していきますので、

よろしければブクマや評価で、引き続き応援していただけたら嬉しいです!


新しい展開もお楽しみに!

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