スモークエンペラー
初めて書いた短い小説になります。
見にくい部分があったり拙いストーリーかもしれませんが、是非楽しんで見ていただけたらと思います。
「んん〜今日も良い日和ですねぇ。こんな日はのんびり外で散策するのも悪くは無いでしょう。」
私はこの世界で最も※紳士なジェントルマンであり、煙草をこよなく愛する男「シモーカー・ブレイズ」
人々は私の事を「ブレイズ」と呼び親しんでくれます。
※自称
「おーい、ブレイズさーん!」
おや、あの方はご近所のノールさんですね。
あの方は正直苦手なのですが、まぁそれでも私は紳士。
どんな相手であれ紳士的に接しなければ。
「ごきげんよう、ノールさん。本日はどのような…」
「ブレイズさーん!!ちょっとマズイんだ!!街に変な奴らが攻めて来てさぁ!!!」
えぇ…。話を遮ってくるとは…しかもそんなの街の冒険者にでも頼んで対処して貰えれば良いのでは…
と思っても、私は紳士。その様な事は決して口にはしません。
「そうなのですか。それで何故私の所へ?」
「それが、『煙の皇帝』を呼べって叫び回っててさぁ!!!!呼べないのなら片っ端から街の住民を殺し回るって脅してきたんだ!!!」
それは大変だけどいちいち声がデカいなァ!!
…おっと失礼。紳士たるもの冷静にならないとですね。
「それは大変ですね。わかりました、すぐに向かいます。」
私、本当は今から外でのんびりと散策しようとしてたのですが…まぁ丁度良い。
運動ついでに相手にしましょうかね。
「おぉ!!ありがてぇ!!頼んましたよブレイズさん!!!!」
ノールは心底嬉しそうに叫んだ。その表情は、確実に解決すると心の底から確信しているようだ。
それはそうと―。
うっさ!!!お前マジで声うるさっ!!!!
…。はぁ。朝からとんだ災難ですよまったく。
「ではノールさん、私は一足先に街に行かせて頂きますね。では後程。」
そう言うと、私は懐を漁り煙草を取り出した。
本当はゆっくり吸いたいんですけどねぇ…。
「ああ!!助かるぜブレイズさん!!!!」
ノールはとてつもない速さで私に手を振っている。
その様子を横目で見つつ、私は煙草に火をつけ口から吐き出した煙を体に纏わせる。纏わりついた煙がさらに周囲に広がっていき、瞬きもしない内に辺りを覆った。
煙幻『煙瞬幕』
「…ッ!?うぇっほごほっ…あれ?ブレイズさんが消えた…?」
…
私は昔から煙草を吸うのが好きだった。
なんの能力も持たない私は、成人してから周りの異能力者に蔑まれ嘲笑われた。
煙草に出会ったのは、たまたま家に帰る途中にある店で煙草を買った時だった。
煙草は最高だ。
この世の喧騒も我が身の精神負荷も、全て煙となって自分の中から吐き出されていくような気がして。
束の間であろうとも、その煙草から出る煙は自分をしがらみから解放してくれた。そして、いつしか私は煙を自由に操れるようになっていた。理由は分からない。ただ、煙と私自身が一体化したような感覚だった。
いつしか周りの異能力者に蔑まれる事も無くなった。
私は、気付いたら周りの異能力者よりも強くなっていたのだ。
…
ガヤガヤとした雰囲気の中であちらこちらから悲鳴が飛び交っている。
…
「おいテメェら!!死にたくなけりゃさっさと『煙の皇帝』を呼べや!!!いつまで待たせやがるんだ畜生ッ!!!」
「兄貴!女子供の人質はこんなもんで良いっすかね?」
『キャッ!うっ…すいませんすいませんすいません…お命だけはどうか…どうか…』
『うわあああん!!怖いよぉお!』
「ああん??おー、そんだけいりゃ流石に『煙の皇帝』とか言うやつも下手に手を出せねぇだろ。」
「兄貴〜、終わったらコイツら俺らで楽しんでも良いっすよね?最近全然女抱けて無いんすよね〜」
「ああん?好きにしやがれ!!てかお前ら浮かれんのは後にしやがれってんだ!」
…
シュー…
「ん?おい!なんだこの煙は!!クソっ!前が見えねぇ!!おいお前ら、離れんじゃねぇぞ!!」
ザシュッ…
「…?おいお前ら!返事しろや!!あぁ!?………ッ!」
「煙よ…煙…宙を包め…我が身を包め…」
「すぅー…ふぅ…」
私の煙草の煙が完全に敵共を覆い包んだ。
「…!!」
「チッ…おい!テメェが『煙の皇帝』とやらか?あぁ?隠れてねぇで目の前出て来いよ!それともなんだァ?恥ずかしくて出て来れないのか〜??ヒャヒャヒャ!」
コツ…コツ…
足音を響かせながら、私は煙草を消して敵へ近付く。
「…あなたでしょうか。レディ達に手を出しているというのは。」
辺り一面は既に濃い煙で覆われている。敵の頭らしき相手は私の事を認識出来ていない。
この煙の中を自由に動けるのは例外なく私だけ。私以外の人間は視界を奪われまともに動く事は出来ない。
「…っ!くそ!煙の中でちょこまかしてんじゃねぇ!!」
やれやれ。現状を把握出来ていないとは、とんだ駄犬だ。だが、こんな駄犬でもこの街の冒険者では敵わない程の実力の持ち主らしい。「煙瞬幕」でここに飛んで来た時、勇敢にも時間を稼いでくれていたであろう冒険者が何人も倒れていた。
面倒ではあるが、私が来て正解って訳ですか。
「おらァ!」
敵の頭である男は、手に持っている棒のような物を素早く振り回し風を巻き起こしていた。
「煙なんぞ風で飛ばしちまえば無意味なんだよ!!」
はァ〜…。
「常識に囚われている愚かな者は、相手の力量を正確に見抜けない。そう思いませんか?」
「あぁ?うっせぇな!」
「はぁ…まだ分かりませんか?」
「…ッ!!」
そう言うと、男はやっと今の状況が理解出来たのか、さっきまで武器を振り回していた手を止めた。
「やっと理解出来ましたか。貴方は既に『詰み』なんですよ。」
「煙を強い風で飛ばせば、相手は何も出来ないなんて浅はかな考えをしていたのでしょうが…残念ながら、私の煙は環境による影響など無効化出来るのですよ。」
男は震えだし、辺りをキョロキョロと見渡しはじめた。
「そ、そんなバカな…!そ…そんなの有り得ねぇ…!…でも、そうだとしたらどうやって勝てば良いんだよ…ッ!」
「何故私が『煙の皇帝』なんて呼ばれてるのか、まさか知らずに私に挑んでいたのですか??つくづく愚かだ。」
「くっ…」
「私は煙を無尽蔵に生み出し、操れる。そして私の煙は特殊でね。ありとあらゆる環境による煙の弱点を無効化出来る。つまり、水の中だろうが嵐の中だろうが私の煙が消える事は無い。」
「そ、そんな…」
「さぁ。お仕置の時間ですよ。レディ達に手を出した事を後悔しなさい。」
「ひっ…!や、やめろォ!!くるなっ!!」
煙刀…
「う、うわぁあああああああああっ!」
「…瞬刃煙舞」
ザシュッ___________
やれやれ。身の程を知らない輩の相手程疲れるものは無いですな。
「あ、あのっ!」
捕まっていた女性や子供達が私に話し掛けてきた。
「おや、どうしましたか?レディ。ああさっきのなら、もう大丈夫ですよ。早くお家に帰ると良いでしょう。今日はゆっくりおやすみくださいね。」
「本当にありがとうございます…っ!!」
女性達は泣きながら私に感謝の言葉を述べていた。
「おお…本物の『煙の皇帝』だ!!」
街の人らも集まってきた。しまった。面倒になる前に退散しようか。
「おにいちゃんありがとぉ!!」
「ありがとーー!」
子供達も喜んでいるようだ。笑顔が眩しいですね。
「いえいえ、当たり前の事をした迄ですよ。では私はこれで。」
「Until we meet again!(ごきげんよう!)」
閲覧ありがとうございました。
もしもまた小説を投稿する機会がありましたら、見ていただけると嬉しいです。