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短編(コメディ)

悪逆組

作者: 裏道昇
掲載日:2023/07/10

良ければ読んでやって下さい。

 とある一室で、三人が集まっていた。中心でこそこそと声を潜めて話をしている。

「そういうときは無理やり言うことを聞かせるんだ」

「当然。でも、いつでも出来るわけじゃないわ」

「……馬鹿だな、餌をちらつかせるんだよ」

「なるほどね……」

 そこに、一人の男が飛び込んだ。

「さっき、拾ったんだが……」

 一枚の紙をひらひらさせながら輪の中に入っていく。

「おお――!」

「はじめて見たわ」

「ふむ」

 闖入者は誇らしげに胸を張り、

「すげえだろ! 一万円だ!」

 使われなくなった一年四組の教室で四人は密かに活動している。

 活動内容は、悪いこと。決め台詞は、ざまあみろ。

 神善小学校悪逆組と名乗っている。


「何の話してたんだよ?」

 闖入者、正太郎が訊ねる。スポーツ刈りが似合う好少年だ。

「我が家の番犬、大吉の話よ」

「ああ、あのうるさい犬か」

「可愛いところもあるのよ?」

 この教室唯一の少女が口を尖らせた。名前は良子。女の子にしては活発な性格と言えるだろう。

「そんなことより! どうしたんだよ、その一万円!」

 坊主頭の少年が興奮した様子で話の方向を変えた。

「だから、さっき拾ったんだって。とりあえず持ってきたけどさ……」

「いいなあ! 少し分けてくれよ」

「違う、そうじゃないだろ。俺らは……」

 そこで今まで口を閉ざして、静観していた小柄な少年が声を上げた。

「使い方、が問題だね」

 坊主頭が太助、小柄が阿久津、と呼ばれていた。

「そう! そうなんだ! 俺が言いたいのは」

 そこで正太郎は息を継ぎ、

「この一万円で……悪いこと、出来ないかな?」

 悪逆組とは、とにかく悪いことをする小学一年生の集まりだ。リーダーは正太郎で、目的は理由のない反抗である。

 だから正太郎の発言は当然のものだった。

「……確かに! 俺らは悪逆組だもんな!」

「うん、そうね。考えてみましょう」

「そうだね……何が出来るかな」

 三人とも、似たような反応で同意した。

「こんなのどうだ! 街の物資を買い占めるんだ! みんな困るはずだろ」

「でも、一万円じゃ足りないわよ」

「そうかぁ」

「いや、方向性は悪くないかもしれない」

「どういう意味だ?」

 落ち込む太助に正太郎は言う。

「お金が足りない。なら、まずはお金を増やそうじゃないか」

「方法は?」

「そうだな……」

 正太郎は少し考えて、

「銀行に預けよう」

 良子が驚愕に目を見開く。

「それで、お金が増えるの……?」

「ああ、利子が付くらしい。お母さんに聞いた」

「すごいわね、完璧じゃない」

 二人が盛り上がる。しかしそこに太助が割って入った。

「いや、駄目だ……!」

「何でだよ、太助」

「利率がある!」

 利率? と二人が首を傾げる。

「ああ、利子の割合のことだよ。今の利率じゃ、一年かけて倍にも増えない」

 なんてことだ、と絶望が広がる。

 そこに、

「僕に考えがあるんだけど」

 阿久津がにぃやり、と笑って言った。

「このお金を元に株を買おう、インサイダー取引だ。コネがある」

「株? いんさいだー? 何のこと?」

「それはね……」

「そうだ!」

 太助が何か思いついたらしかった。

「誰かにこのお金を貸そう! そして利子をもらうんだ!」

「なるほど。自分たちで利率を決めるんだな」

「でも、高い利率で借りる人なんているかな……?」

 良子が不安そうな声を上げる。

「確かに。俺らだって損したくないもんなぁ」

 話し合いが暗礁に乗り上げたかのように見えた。

「……待って! 私たちらしくなかったんじゃない!?」

「? 何が言いたいんだ、良子」

「悪いことをするんでしょ? お金を増やすのも一緒よ!」

「そうか! 悪い方法で増やせばいいんだ!」

 そこで阿久津が左頬を吊り上げて、

「コピーして使おう。なに、婆さんなら気付かないさ。僕らの年齢を利用するんだ」

「コピー機なんて使えないわよ」

 また阿久津がにぃやぁり、と笑い、

「じゃあ、このお金でケータイを買おう。それで振り込め詐欺を……」

「小学生がケータイを買えるわけないじゃないか」

 ここで、正太郎が考え込み、重そうに口を開いた。

「……いや、違う。俺らはお金という概念に囚われすぎていた」

「どういうことだ? 正太郎」

「つまり、お金ではなく、一枚の紙として見るんだ! この紙はこれから先も人の目にさらされ続ける。そうだとしたら! たくさんの人を不快にする方法がある!」

 結果、鉛筆で大変面白く落書きされた諭吉をコンビニで使おうとした。

「こら、お金に落書きしちゃ駄目でしょ! ちょっと待ってなさい」

 店員が店長を呼びに行く。

 よく分からないが、四人は逃げた。


 日が傾きかけた公園でもう一度、四人は相談をしていた。だが、しばらく誰も口を開かなかった。コンビニの店員が恐かったらしい。

「考え直そう。何をすれば、悪いことになる?」

 滑り台の上から正太郎が切り込んだ。

 どうにか一万円は持っていかれずに済んだ。チャンスはある。……落書きも消した。

「そうね。人が嫌がることをすれば、悪いのかも」

「具体的じゃないな」

 阿久津がキヒヒと笑って言う。

「このお金で脱法ハーブを転売すれば……」

「何のことか分からないけど、売ってる場所が分からないから駄目よ」

 珍しく黙っていた太助が、思いついた顔をする。

「待てよ、持ち主が嫌がる使い方をすれば悪いんじゃないのかな?」

「だから具体的には?」

「つまり、持ち主の利益にならなければ悪い、かもしれない」

 おお、と。三人のざわめきが起こる。

 続いて、拍手喝采が巻き起こった。


 そして、四人は成功した。

 持ち主の利益にならない……つまり、還元されない使い方だ。税金だって自分に戻ってくる。物を買っても同じ。

 ならば。

「ありがとうございましたー!」

 正太郎は思う。

 ――ハハハ、持ち主よ。お前の利益とは全く逆の方向に一万円を使ってやったぞ。お前には一円たりとも還元されまい!


 つまり、一万円は募金してやった。

 ざまあみろ!


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