「アマテラス」
僕はずうと、髪をのばしている。
そのことが僕をしあわせにしていた。
ながい髪の毛のながれ。髪の毛ははだかの僕の腰のあたりまで覆うくらいだった。
それは単純に時の推移を感覚させるげんしょうだし、しかも僕のわかい髪はツヤをうかべて綺麗だから、時間のながれのうつくしい部分だけがそこに凝り、結晶をつくっている様だった。
それは脈々としていた。
脈々として結晶だった。
結晶は脈々とうつくしさをつむいでいた。
だけれど、あるころ。
髪がのびるのをやめた。あれだけの脈々。すこやかな脈々。くろく脈々とそだっていた髪が成長を停止したんだった。
僕はしぬことさえ考えた。
髪の毛のうつくしさ、たけだけしいくらいのエネルギーが、もはや僕の存在意義になりかわっていたから。
だから放心して過ごした。
どれくらいか。
いっしゅうかんか。
とおかか。
一年か。
いやごねんかじゅうねん。
もしかしたら千年。
だけれど髪はのびることをしなかった。
それは諦める必要がありそうだった。
というより、いつからか思考は僕のなかで不思議なうずを巻き、なにか不自然に回転していて、まさに脈々とした思惟が構築できなかったのかも。
ああ、そんなとき。
今度は髪がちぢみだしたんだ。
時間がさかさまにながれだしたんだろうか。
ここからは月と太陽がどうじにみえる。