第二話 「最強の凱旋」03
事務所に戻るとアルバーが一人で書類を書いていた。
彼は商家の出身で冒険者として戦うが経理、総務的な仕事もこなす。
どちらにも才能と実力を発揮し、シュンにとっては頼もしい片腕だった。
長めのブロンドと青い目で物腰も柔らかく、出自を納得させる。
「お帰りなさい」
「ああ」
他の隊員は仕事に行っているので事務所の中は静かだった。
「ギルドに行きますか?」
「そうだな……」
大方の予想ではシュンのトップ、最強の称号は確実とされているが、正式にはギルドで正規の手続が必要だった。
ギルドとは元々は退役した軍人がベヒモスを狩る為の、バックアップをする組織が発祥だ。
そして今は戦闘的冒険者たちの元締組織として機能している。
ランキングを管理しベヒモス討伐の賞金を出し、クエストと呼ばれる金になる企画を提供する。
また、冒険者やチームへのスポンサーを申し出た貴族たちの窓口にもなっていた。
「アルバー、付き合ってくれ」
「はいっ!」
アルバーは正式なトップ認定を待ちかねている、といった感じだった。
ギルドの事務所は北門の広場に面している、石造りの大きな建物だ。
昨日はシュンの雄姿を一目見ようと群衆でごったがえしていたが、今の広場は人もまばらだった。
二人で中に入ると、まだ冒険者たちがクエストに出ている時間の為、閑散としているホールが小さくざわついた。
シュンはお馴染みの女性職員がいるカウンターに座る。
「おめでとう、シュン」
「いや、まだ分からないよ」
「大丈夫よ」
そう言ってミレリラは微笑む。
シュンが初めてこの街に来た時に対応してくれた受付嬢だ。
当時は彼女もまた新人だった。
魔導石板が出されシュンは手を乗せる。
【鑑定】のスキルを持つミレリアがその上に手を添えた。
「うん、スケラーノの力はやっぱり凄いわね。予想通りよ……」
暫くの間、ミレリアはシュンのスキルに集中する。
「スケラーノのスキルは何だったのかしら?」
「分からないな……」
ベヒモスが発揮する力を取り込んだとしても、人間である戦闘種がそのまま再現できるわけではない。
「そう、私にも分からないわ。調べてみる?」
「いや、戦いながら自分で探ってみるよ」
「分かったわ」
ギルドへの依頼は金が掛かるし、今までも手に入れたスキルは自分でモノにしてきた。
取り敢えずは自分で探ってみようと、シュンは考えていた。
「待っててね」
ミレリアが奥の部屋に向かう。
石板をギルドの魔導師が探り、倒したスケラーノの力を導き出す。
そして、スケラーノの賞金額、新たに得たレアクリスタルの力を計り、合算されるポイントが計算される。
数人の職員が脚立を立て、壁に掛かっているランキングボードが直された。
予想通りシュンはランキングトップに躍り出た。
それはここの登録から最強までの、北城塞グロッセナの最短記録でもあった。
ギルド内には自然と拍手が沸き起こった。
「なんだかんだ言っても悪い気分じゃないな」
「もちろんです。我々チームのメンバーにとっても名誉なことですよ」
シュンはランキングよりベヒモスを狩り、賞金を得てレアクリスタルを手に入れ、強くなる事が優先だと常々言っている。
実際ランキングに拘り、功を焦り怪我をしたり敗北したりする冒険者も大勢いた。