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第一八話 「海洋の悪魔」02

 シュンは日課の農作業に汗を流し、森の奥まで安全確認の偵察に赴いた。

 一通りの仕事を終わらせて村のギルドへと帰り着く。


「おっ、帰って来たな。そっちに獲物はいたか?」

「ええ、小物が三匹だけですが……。平和なものです」


 戦いに明け暮れるサンドリオ、第八六地区とは違う毎日であった。

 シュンは小さなレアクリスタルをジョルジュに差し出す。


「うん、ここの子供たちが冒険者になる時に、コンテナに合わせて一定数を渡すんだ」


 村の子供、戦闘種の才能がある者はスキルの使い方を覚えて、小物相手に戦闘の訓練をする。

 シュンもそうだった。

 それからカンパーニのギルドで登録し、街と周辺の村々を守る冒険者となる。


 シュンのように、いきなり村を出て城塞都市サンドリオに行くのは、常識的には無謀なのだ。


「もうここは大丈夫そうだな……」


 ジョルジュは主にカンパーニで戦っている。

 バルトアンデルスを排除し、その後も安全なので明日からはそちらに向かうそうだ。


「ところで……」

「はい?」

「俺は管轄外で知らなかったんだがな。カンパーニでの海洋クエスト、何か聞いてるのか?」


 ジョルジュにまで話が回って来たので、シュンは意外に思った。


「ええ、ここに来る時、船でサンドリオからカンパーニに向かう冒険者に会ったんです」

「ほう……」


 シュンはツァレーナとの一件をジョルジュに説明した。


「失敗したそうだ」

「えっ!」

「相手は名指しでお前を指名してきたよ。クエストは継続するらしい」


 ツァレーナは控えめながらも、自信があるように思われた。

 不安なども口にしていなかった。シュンは、失敗などはしないはずだと思っていた。


 原因があるとすれば、情報の間違いなどがある。

 未知の敵が現われ足元をすくわれたのだ。


「分かりました。様子を見てきます」

「頼む。あちらのギルドも、なんとか今回でケリを付けたいようだ」


 ジョルジュは今夜、一人でランツィアの森を見回る。

 村の冒険者たちには農作業に集中してもらうそうだ。



 シュンは施設に行き、マヤに伝えてからカンパーニのギルドに赴いた。


 夕刻も過ぎて、ひともまばらになった受付でどうしようかと思案する。

 すると、運良くツァレーナ一行が帰って来た。


「悪かったわね。休暇中に」

「目の前にベヒモスが――、いや、リヴァイアサンがいれば戦うのが冒険者だよ」

「そうね」


 ツァレーナはホッとしたような笑顔を見せる。


 戦いの本能が戦闘種の遺伝子に刻み込まれているとの噂があるが、真実はシュンにも分からない。


 確かに戦闘中毒(ジャンキー)になり死ぬまで戦いを止められない戦闘種、冒険者はいた。


 シュンの頭の中に、おっちゃんの姿がよぎる。

 あるいは職業軍人などもその類いかもしれない。



 全員でこの街の冒険者たち、行き付けの酒場に移動する。


 予め打ち合わせしていたのか、シュンとツァレーナ、それともう一人で奥のテーブルに向かい、他の冒険者たちは予約していた大テーブルに座った。


 他のメンバーに聞かれたくない話もするのだろう。


「さっ、座って。紹介するわ。昔からの知り合いでこの街の冒険者、シルヴァーノよ」

「シュンだ。よろしく」

「こちらこそよろしく。ツァレーナから話は聞いているよ。俺は西城塞で戦っていたこともあったんだ」

「ほう……」


 簡単に挨拶を交わして三人は小さなテーブルに座った。

 ウエイトレスがやって来たので人数分のビールを注文する。


「一体どうしたんだい? それほど難しいクエストだとは思わなかったが……」

「そうね、予定通りならね……」


 シュン問いに、ツァレーナは歯切れが悪い。苦戦しているなどとは、やはり話しにくいのだ。


 ビールが運ばれたが乾杯はなしだとツァレーナは言う。

 ちびちびと飲みながら状況の説明を始めた。


 当初のクエストは順調だった。三個艦隊でいくつかに分散している、スクアーロの群を討伐しつつ追い込んだ。


 数日間で包囲を狭めて、予定通りに殲滅できると誰もが思っていた頃に新たなリヴァイアサンが出現した。


 艦隊司令は撤退命令を下し、ツァレーナとシルヴァーノが乗った艦は遁走する。


 そして軍の水兵が主力の第一艦隊は最後尾で撤退戦を行い、水兵二人が犠牲になった。


「状況はだいたい分かった。しかし俺は海で戦ったことはない。それでもいいのか?」

「もちろんよ。私とあなたでその大物に対処するわ。作戦を説明するから、納得出来たなら手伝って欲しいのよ」


 シュンはしばし考える。頭の中で懸念を整理した。


「撤退の決断が遅かったと想像するな。それを繰り返す心配がある」


 安全で慎重派のシュンとしては、その辺りの判断を再び軍に任せるのは心配だ。


「大丈夫よ。司令部に直談判したわ。私に決定権があります」

「ふむ……」


 シュンは感心した表情でツァレーナを見た。


「分かった。しかし、よく了解したな」

「抜けるって脅したのよ」


 ツァレーナは悪戯っぽく笑った。


「それは、それは……」


 それからシュンは討伐作戦を聞き、いくつかの疑問点を確認して自分なりの意見も言う。

 シルヴァーノは自身と街の冒険者が乗り込んだ艦が、どう援護するかと提案した。

 ビールを飲むのも忘れ、三人は作戦の立案に没頭する。


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