第五話 「ベヒモス狩り」03
ある日の夕刻、レイキュアがいつもながらの、派手な姿でランツィアの事務所に顔を出す。
胸元が大きく空いた赤いブラウスには、白いフリルが大量に付いていた。
そして白いジャケットを羽織る。ぴったりとした黒革のパンツは、脇に大きくにスリットが入り太ももが露わだ。
白地に花柄、長めで薄手のストールを肩に掛けている。
「ちょっと出ない?」
「ああ、俺はもう上がる。後は頼んだぞ」
「はい」
「それからこれ、このあいだのレアクリスタルの売り上げ」
レイキュアがギルドの小切手が入った封筒を差し出した。
「半分でこんなになったんですか?」
小切手の金額を見てアルバーが驚く。中身は二分割した金額だ。
「ええ、ついてたわ。上客に売れたのよ」
シュンたちはアルバーたちに仕事を任せて事務所を出る。
二人は石造りの建物が並ぶ、石畳の路地を歩いた。
この街は使用技術の退化に合わせて、風景もまた中世を思わせるような街並みになっている。
これはこれで風情もあり、シュンは気に入っていた。
大戦では歴史ある、多くの古い街並みも破壊しつくされた。その再生の祈りが込められ、この街の姿が作られたとも聞いていた。
シュンとレイキュアはいつものバーに入りカウンター席に座った。
今日はビールと食事も注文する。
「最強から落ちちゃったのか。残念だったわね」
二人で大盛りの一皿からフォークでパスタを絡めとる。
「構わないよ、そのうちまたチャンスが来るさ」
「ウチの隊員に聞いたのよ。チーム・ディボガルドは凄いわね」
「ああ、あんなのがデス・キャニオンに行けばいいのさ」
「これ……」
レイキュアが内ポケットから紙片を取り出して広げる。
それはデス・キャニオン見取り図だった。
「やる気満々だなあ……」
「ええ、見て。街に近い南付近の出入り口を何カ所か封鎖するの」
「うん――、北から侵入するのか。妥当だな」
それにしても、まだ発表もされていないクエストなのに、随分とレイキュアは詳しい。
こんな地図まで用意していた。
「チームを分けてもいいのよ。トップランカーが中に入って、他を封鎖部隊に志願させてもいいの」
「う~ん……」
チームを分けるのはどうかとシュンは思ったが、現実的に分けるのは仕方がなかった。
二つのチーム全員で集団行動などはできない。
「ここがポイントね」
レイキュアが指さした場所は渓谷が交差して広くなっている。
「ポイント?」
「台地に観覧席を作ってここで戦うのよ。こんな場所がいくつかあるの」
「なるほどねえ……」
レイキュアのネタ元はどうやら貴族のようだった。
ただこれだけ大仕掛けの理由が戦闘の観覧では納得できない。
報酬にしても準備にしても金がかかりすぎる。
何か他に意図があるように思えた。
「誰に聞いたんだ?」
「内緒よ」
「貴族だろ?」
「まあね」
レイキュアはそう言って笑う。
ジェンヌも父親が企業貴族だから、その辺からも情報を得ているのだろう。
チーム・ディボガルドが何かをやるための仕掛けなのか? シュンは一瞬そう思った。ディボガルドが全力で行く、とのジェンヌ言葉を思い出す。
「ねえ、出る気になった?」
「そうだな、封鎖に参加させるだけでも金になるなら、どのチームも助かるだろう。稼げないチーム、特に金のないところはな。ウチも出すよ」
「もう! 中に入って戦う方よ!」
レイキュアはそう言いながら、シュンの腕をつかんでブンブンと揺らした。
「やってみるか……、お前の所でカノーアの次は誰になるんだ?」
「そうねえ……、ヒュミユとクーリアね」
「二人か……」
シュンは顔を思い出した。
先日の合同訓練の時、前列の中心にいた二人だ。
力がどの程度か後でブレイソンに実力を確認してみようと思った。
「そうだなあ……、その二人にブレイソンを付けるよ、封鎖部隊の指揮を取ってもらおうか」
「分かったわ」
「俺とアルバー、そしてお前とカノーアで中に入ろう」




