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人間の悪意

とある住宅にガタイがいいスキンヘッドでサングラスをかけた厳つい男達がドアの前で誰かを待ち構えている。


『そろそろ返してもらう約束だぞ。出てこいよ!引きこもってんならこっちから行くぞおらぁ!』


借金を背負っているある男性の家で怒声をあげながら男性が現れるのを待ち構えている。彼らはここに来て10分も待っていた。ずっと男が現れてくるまでドアの前で脅し続け、ドアを叩き、強引にでも金を返してもらう。そのために彼らはここの家主がどんな状況だろうと構わずに車に傷をつけたり、窓を割ったり、裏口から入れるように仲間を動員していた。


ここの家主が女の子を抱きながら闇金達が帰るのをずっと待ち続ける。


『もう嫌だ…早く帰ってくれ』


家主の男性がずっと闇金の男達からの脅しに耐えるばかりである。


『パパ。もう凛嫌だよ…。こんなの』


『ごめんな。凛。俺のせいで…』


この家には凛という6歳の女の子が住んでいた。母は父と離婚し、この家を出て行ってから二人の前に現れることがなかった。ずっと凛の面倒は今借金取りから脅されている父親のみで見ている。

もともとなぜ借金をしたかというと、父親が同僚に『一人で楽して出来るビジネスがある』という話にのってしまい、同僚に騙され同僚が背負っていた借金の片棒を背負わされたさてしまったのが原因。仲間のためとはいえ、借金は減ることがなく、あくどいやり方でどんどん返済額が膨らんでいき今に至る。


『元はと言えば、俺があんな奴に騙されたから』


恐怖と怒りを交えながら小さな声で凛に告げる。


『パパ。助けて…。もう嫌だよ』


『凛。俺が絶対にお前だけは苦しい目に遭わせないからな』


そう言って凛を放し、闇金のヤクザ達がいるドアへと向かう父親を凛が怖がりながら見る。


『どこへ行くの?』


『追い返してやる。だからここにいなさい。絶対こっちに来ちゃダメだぞ』


父親は家にあった金属製の野球バットを念のために持って玄関のドアに向かう。

手には大量の汗がバットのグリップに染み込む。


『おらぁ!いい加減出てこいや!松下!』


『お前の餓鬼がどうなってもいいのか?あぁ?』


『さっさと出てきた方が身のためだぞ!二度は言わねぇからな!』


凛はあまりの恐怖に近くテーブルの下に潜り込んだ。早く帰ってほしい。そんなことは二人とも同じである。テーブルの上で身を小さく潜めながら父親が追い払うのを待つばかりの凛。すると裏口から突然室内に響きわたるくらいの何かが割れる音が聞こえた。


『パパ!』


あまりの怖さについパパと叫ぶと、その声の方に近づいてきたのは、闇金のヤクザ達だった。そしてデスクの下を数人のスキンヘッドの男が覗き込む。ニヤリと笑みを浮かべ、凛の方へ手を伸ばし髪の毛を引っ張ってきた。


『嫌だ!パパー!』


泣きながらも父親を呼ぶがスキンヘッドの男が頭の毛を引っ張って側から離れないようにさせた。

さらに腕もつかみ、喉元も締めるように強く握る。

凛の呼吸がどんどん苦しくなっていく。もはや声も出せない状態だった。


『可哀想にな。パパもこんなことしなかったらお嬢ちゃんもこんな目に遭わずに済んだのに。もう最悪なパパやなぁ』


『餓鬼に痛い目に遭わせたらあかんやろ。父親失格やぞ』


そして凛は大泣きをしてとっさにその男達から逃げようと暴れるが力の差で逃げられずにいる。


『パパッッ!だぁすげぇでぇぇ!嫌だぁぁぁ』


父親が凛の方に来るのだが、何もできずにただ放してくれ!というばかりだった。

すると凛の体から黒い霧が出てきた。その霧が部屋中に響き渡る。周りが黒い霧に染まりあたりは騒然となっていく。


『凛!ど、どういうことだ?』


『……。お腹すいた…。食べていい?』


黒い霧から現れて姿形が人型の怪物が父親に向かって言う。凛はもうスキンヘッドの男達から解放され、怯えているヤクザ達はただ怪物を見てその場に動けなかった状態である。



『修二』


この前のメンヘラ女のクレイジャーを仕留めてから自分の正体がバレてしまった。こりゃまずいことだ。なんでまずいか?まぁ自分の立場上こういう姿を見られてしまったら何よりめんどくさい奴らが追いかけてくるからだ。めんどくさい奴らって言うのが、この国治安を守るための組織と呼ばれる『警察』って呼ばれる奴らのこと。

奴らは以前にお世話になったことがある。それは俺が、1年前に起こしたある事件がきっかけだった。俺がこの国にあの赤い空から黒い霧が現れる以前の現象の前に奇妙なことばかりが起きた。

俺の済んでいた地域には災害がかなり頻繁に起きていた。災害っていうのが、大雨、大地震、巨大台風による自然災害。あの時は、数えてみれば一ヶ月に5回は起きた。立て続けに二回起きだこともあった。台風の次に大雨。片思いきや、地震と大雨が同時に起きて大量の死者を出した。

俺はその時には務所の中だった。なんで務所の中だったのかは、まぁ話せば長くなる。

んで、そこでは自然災害が続いて起きていることに不思議に思っていた。小さく冷たい檻の中では台風や大雨、地震の影響も受けて雨漏りや窓が割れるなんてこともあった。

しかし、俺はその災害によって自由を手に入れた。地震により地面が大きなヒビが起きそこから台風によりあたりの建物が潰れまくった。そしてその影響で俺のいた務所が出口となって犯罪者が次々と逃亡することができた。

そして俺は警察から逃げるために服装を被災者から盗み、警備員や警察から武器を奪い逃亡しやすくするために犯行を繰り返し逃げてきた。

そして今となっては俺は『クレイジャーハンター』として人間が生み出した化け物と戦う者として生きている。今のところ、こんなことをできるのは俺くらいだ。他にやってる奴なんて見たことないし、ましてやみんなクレイジャーを見ると恐れ逃げてしまう。だからこいつらをハンティング俺は特殊なのかもしれないと何度も思った。


『あーあ。これからどうすっかなぁ。警察にバレなかったらいいけどねぇ。黙っててくれよ。善良な市民の皆さん』


俺は今メンヘラ女配信者がいた場所のビルの屋上で高みの見物をしている。何を見てるのかというと警察の動き、そして新たなクレイジャーが現れないかを見張ってる。

すると俺は偶然にも騒動となったその現場にあの二人がいるのを見つけた。


『あらあら?あの子達は』



『嶺華』


『この辺なんでしょ?あの配信の現場』

私が龍斗に尋ねた。龍斗は動画配信コンテンツが好きだったことがわかった。何かあればスマホで何かの動画配信を見てる。画面の前で面白い企画を有名人でもない一般人がやっているのを見て『僕の息抜きはこれだ』と言っていた。そうか、龍斗の趣味はこういうのだったのか。別に変じゃないけど、でもこういうのが好きな人ってなんか変な人なイメージがある。私にとっては遠い存在のような感じ。今ではそう言った動画配信サービスなんてものが若者達の間では人気である。そして学生が暇つぶしによく見ているのも見たことがある。でも私からしたらどこが面白いのかさっぱりわからないのだ。


『ミュウあ@さんの心霊現象が起きたあの配信。なんか身に覚えのある場所なんだよなぁって思ってたんだよ。そしたらこの辺だった。行ってみたら本当に騒動になってるね』


『うん。その心霊現象ってどんなの?』


『黒い霧が現れて突然画面がその霧に包まれるっていう現象』


『黒い霧?』


何か私はその現象を見たことがある。私が死のうとした時も、龍斗が私を助け出そうとした時も。この黒い霧の正体はなんなのかわたしにはわからないけど、人間なら誰でも起きてしまう現象なのかもしれない。特に共通点として何があげられるか?

確か配信者のミュウあ@さんはメンヘラで辛い過去があったって龍斗が言ってた気がする。辛い過去…メンヘラ…。!?もしかして!わたしの時もそうだった。何か心の中に闇を抱えている人間がこの黒い霧の現象に巻き込まれている。っていうことは龍斗も。


『龍斗…。私、わかったかも。黒い霧の正体。実は黒い霧の現象、わたしも見たの』


『嘘!どこで?』


『龍斗知らないの?龍斗がわたしを一軍のメンバーから助けてくれたあの時、龍斗の体からも出ていたんだよ。黒い霧が。でも気を失ってたから見上げなかったのかも』


『え?僕にも?でもなんで?』


『龍斗が自分が無力な人間だってずっと悩んでいたでしょ?そういう負の感情みたいなのを抱え込んでいたからかもしれないの。私も、ミュウあ@さんっていう人も似てる。この共通点から多分心に負の感情って言うものがありすぎる人なら起きやすいのかもしれないね』


『負の感情か。僕も、君を助けることができなかったその無力さは確かにあった。もしかしたらそういうのに繋がってるのかも。でも、ぼくたち以外にもそんな人いるんじゃないの?』


『多分、私達だけじゃないのかもしれないよ。その黒い霧の現象が起きるのは。人間は心がある。それが引き金で何か負の感情を抱え込みすぎて黒い霧が発せられるのかも』


すると龍斗の後ろから、見たことのある男の姿が見えた。黒い衣服で銀髪の少年。修二だ。なんで彼がこんなところに!?

すると修二は何か気配を感じたかの如く辺りを見回し、逃げていく。


『あっ、修二!』


『修二?誰?』


『修二って言う人がその黒い霧のことを知ってるんだ。後ろにいたんだよさっきまで』


龍斗が後ろを振り返るとそこには誰もいなかった。周りの人も私の声に気づいて龍斗の後ろを見る。でも誰もいなかった。


なんで逃げていったんだ?考えている私の後ろから警察がゾロゾロと現場を見に来た。


『現場はここらしいな。すぐに周りの人達に避難するように伝えてくれ』


そういうと私達をどかしていった。


『凛』


気がつくと、私は家の中で寝ていた。さっき何か黒い霧が凛の周りに出てきて急に意識を失ったような。そして私は周りを見回した。


『え?なにこれ』


なにがあったの?周りには血だらけにって倒れている男の人たち。パパを虐めてくる人達だった。でもみんな血だらけになってビクとも動かない。


『なにがあったの?』


『僕が食べたんだよ』


後ろに誰かの声が聞こえてくる。凛はその姿になさ言葉が出てこない。


『君が僕を生み出したんだよ。ねぇ?僕と一緒に遊ぼうよ。名前は?』


パパと同じくらいの身長がある怪物が凛に話しかけてくる。でもなにも言えない。目の前のことに現実を受け止められないから。


『ねぇ?名前はなんて言うの?』


私は何か言わなきゃと思い言葉を発してみた。


『あなたは?ねぇ?この人達を食べたってどういうこと?』


『僕は君によって生まれたクレイジャーなんだよ。君が僕と言う存在を生み出して、この人達を食べたんだよ。ほら、周りを見てごらん。みんな死んでるんだよ。一番美味しかったのは…』


凛は言葉が出なかった。次の言葉を聞いて、頭の中が真っ白になった。



『修二』


警察があの現場からから出てきたらもう最悪事態になっただろうが、まぁここまで逃げたら追いかけやしないだろ。俺は誰にも真似できないくらいの運動神経で遠くへ逃げてきた。そしてここまできたのは、なにかクレイジャーの気配がする。この辺なら誰にも見られていない場所だし存分に戦えるからな。いつでもかかってこいって言う気分だ。でもあの子達に挨拶を出来なかったのが残念だ。警察が来なけりゃなぁ。まぁ、あの付近で俺の姿を見られたから現場にいた人たちもいるかもしれないしどっちみちこうなっちゃうわけかもね。

すると俺は、俺にしかわからないクレイジャーの気配が漂ってくるのを感じた。すぐさま俺の相棒の邪鬼斬刀を出して出てくるのを待ち構える。物音が後ろから聞こえてきた。俺は後ろを振り向きその動作の途中でクレイジャーハンティングを開始するはずだったが現れたのは。


『パパ…そんな…。凛は、なにも悪くない…』


完全に目が死んでる女の子の姿だった。衣服には大量の血が付着している。なにがあったんだ?


『凛は、悪くない…。パパ…そんなはずない…』


その姿にあの夢に出てきた人間を思い出す。

俺の目の前で平和に暮らす人間達だったが急にこの子のように周りが死んだ目で俺をみる。そして後ろには麗華が。俺は夢の中で似たような人間を見た。この子から何故かクレイジャーの気配が漂う。


『なぁ?君?どうした?なにかあった?おーい。聞こえてますかー?』


あの夢の時と同じ何を言ってもわからない人達と同じだった。

そして俺の1メートル付近前で急に倒れ出した。なんだこの餓鬼は。俺はその子に近づこうとしたが俺はクレイジャーの気配が強く感じる。この子が歩いてきた向こう側にクレイジャーがいる。間違いない。俺はその子を置いていきクレイジャーの気配がする方へ走り出す。


『龍斗』


『嶺華ちゃん!どこへ行くの?』


僕は走り出した嶺華ちゃんを追いかける。するととある公園に到着した。その公園の遊具に子供が倒れていた。その子の方へ駆け寄る嶺華ちゃん。一体修二って言う人とは誰なのか?そしてこの子の関係があるのか。


『!!。何これ』


嶺華ちゃんが驚いているから何かと見てみると、女の子の体が血だらけだった。まさか死んでいる!?

すると女の子の口が妙に動いているのがわかった。何か喋っている。


『凛。悪くない…。パパが……死んだ』


『どうしたの?大丈夫?』僕がその子に声を掛けると、女の子は目から涙を流した。そして女の子が僕を見ていきなり抱きついてきた。


『凛が、怪物を作った。その怪物が、殺した!』


『怪物?どんな怪物?』


『いきなり黒い霧から現れて。それで…』


すると嶺華ちゃんがその子に話しかける


『まさか!その怪物が殺したのって…』


そして僕を抱きしめる力がなくなった女の子は嶺華ちゃんを見て言った。


『……パパ。凛の…パパ。一番美味しかったのは、パパ…』


『修二』


ようやく見つけることができた。今回は人型のクレイジャーだな。どんな感じで掛かってくるかしらんけど、とりあえずテンションは上がった。俺の獲物だあり、誰にも殺せない敵。もしかしてこのクレイジャーはあの餓鬼から出てきたやつなのかもしれない。まぁ、そんなことよりさっさとハンティングを楽しもうぜ。

俺は邪鬼斬刀を手に取り刃をだした。


『遊んでくれるの?やったー。じゃあ遊ぼうよ』


『オッケー。ハンティングって遊びを楽しもうぜ。怪物ちゃん。もうお腹はいっぱいなんだろ?食事の後の運動を兼ねて遊んでやる』


『お兄ちゃんなかなか面白そうだね。あの女の子はつまらなかったよ。だってパパを食べたよって言ったら何も言わなくなって遊んでくれなかったんだから』


そうか。あの餓鬼は遊び相手だったのか。じゃあまだ遊んでもらってないわけだな。俺もこいつのハンティングはどれくらい楽しめるか楽しみだ。


俺はすぐにクレイジャーの方へと高くジャンプして刀をまっすぐ縦に斬りに行く。だがそんなに簡単にやられるとは思はないため、すぐさま体のあちこちを動かしてアクロバティックな動きで相手の攻撃をかわす。


『へいへいへーい!なんだなんだ?全然動けてないぞ?怪物ちゃーん』


俺は何度も目の前の怪物にフェイントをして楽しませてやってる。でも食後の後なのか全然動けてなかった。やがて暴れだしたクレイジャーが俺にイラついてきて無茶苦茶な動きで襲いかかってきた。


『どうせ適当にやってりゃ当たると思ってんの?無理無理』


そして俺は邪鬼斬刀を相手の喉元に真っ直ぐ突き刺し血が俺の体に付着する。


『ギャーーーー』


そして消滅したクレイジャーが霧になって消えていく。するとその霧が晴れ、目の前には嶺華と一緒にいた男の子と血だらけの餓鬼が立っていた。

餓鬼が泣きながら何か叫んでいた。


『パパーーー!』


『嶺華』


私達はその後警察に子供を預けた。修二は遠くから私達を監視しているように見ている。どこにいるかわからないけど。

後から子供に聞いたら、子供が怪物を生み出して知らないうちにパパも食べてしまった。絶望をしてしまった女の子は何も信じられずに徘徊していたという。

可哀想なことだ。特にあの小さい子ならまた怪物を生む可能性がある。

私は、龍斗と一緒修二のいるところへ向かうと修二がニッコリと笑って手を振った。


『お久しぶりじゃん。嶺華ちゃん。んでどちら様かな?あの時の彼氏さん?』


修二が龍斗と私は付き合ってると思っているようだ。あの時以来修二とは出会ってないため龍斗のことは話していない。


『龍斗って言うの。クラスメイトの一人で、あの時私を助けようとしたの』


龍斗が軽く修二にお辞儀する。


『助けてくれたって言うのはどういう状況?』


修二が私たちに尋ねた。


『いじめられているって言う話知りません?僕は彼女が学校でいじめられているって言うことを知っていて助けようとしたけど助けられなかったんです。でもあの時何も覚えていないんだよ。それからの記憶が』


『あぁ、なるほど。まぁいじめなんてどこにでもあるよね』


『ところであなたが修二さんですか?どういう関係なんですか?』


『ただばったり出会っただけの知らない他人でーす。そういうことだよねー』


『え?そんな関係?』


私は龍斗に気まずい感じで頷いた。


『あの。あの時はごめんなさい。酷いこと言ったよね。修二が私達を助けてくれたのにあんなこと言って』


『うん?何のこと?それよりもあの子供はもういいのかい?』


『あの子供は警察に保護してもらうんだって』


『そういえばあの子がいた付近で死体が発見されたな。まさかあの子の親とかいたんじゃあ』


そういえばあの子のお父さんが怪物に食べられたということを聞いた。そうだ。あの子は自分が生み出した怪物のせいで大切な人を殺してしまったことに絶望していた。もし黒い霧が負の感情によって生まれるならあの子はまた…


『あの子は何も悪くないのに。何であの子はあんな辛い思いをしなきゃいけないだろう…』


私はそんなことを言い出した。だがそれを聞いた龍斗が彼なりの答えを言った。


『別に理由とかもないんじゃないかな。あの子はこれからも家族がいない孤独の中で生きていかなきゃいけない』


そうか…。あの子は何も悪くないのかもしれない。環境が悪かった。生まれてきた環境がどんな感じかわからないけどあの子はある意味被害者なんだ。可哀想に。


『僕達だってそうだろ?いじめなんてなんで起きるんだって言われたら、理由なんてないよ。ただ人間はそんなことをしなきゃ生きていけないのかもしれない。だから理由はないけどいじめは起きてしまう』


私たちも理由なんてない悪意に巻き込まれた被害者。あの子と同じなのかもしれない。そう思った。

だが、そこに修二が口を挟んできた。


『人間はみんなバカなやつばっかだからなぁ。たしかにいじめだってそうだな。理由はないけどそうなことしないと生きていけないのが人間。じゃあ、いじめをなくすことができるかって言われたら難しいよなぁ。だって人間の本能みたいなものだからな。考えてみたらそんなの悪意だらけだ。被害者はただ仕方ない、運が悪かったって言うことでしか片付けられない。でもな、意味がないなら別にやらなくてもいいことだろ?だったらそんなことをする人間のことなんかどうでもいいと思えないか?もしいじめられる奴が悪いっていうなら意味のないことをしてる人間のいうことなんて聞いても意味がないと思わないか?』


その言葉に何か私の中で考えさせられるものがあった。


『確かににそうだね。修二みたいな考えの人なら少なくともいじめなんてしないと思う』


『人間なんて善悪を言い出したら答えなんて出ない。何をやろうと悪もクソもねぇんだよ。だからいじめをする奴がいるならそんな奴は意味のないことをする馬鹿な奴らなんだって思えばいい』


私は修二の顔を見てニッコリと笑顔になれた気がする。





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