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クレイジャーハンター

とある世界。人々が至る所で楽しげな会話を弾ませている。世間話をする主婦、同僚と駅のホームでビジネスについて話し合うビジネスマン、学校の帰りにどうするかを話し合う子供達。とにかくいろんな人間が楽しげに暮らす世界。だが、この人間社会には安心ばかりが存在するわけではない。この社会にも、もしかしたらなんらかの理由で身近な人間を殺すものがいる。あるいは、裏切ったり利用したり、さらには犯罪に手を染めたりと。どんな人間が身近にいるかわからない。中には罪悪感など一切感じない人間もいてそれが間違った事であると分かっておらず行動に起こし犯罪に手を染めたりするケースもある。

とにかく世の中笑顔が絶えない人間にもなんらかの事情で理性を失ってしまうことがある。それの引き金が絶望感、孤独、悲惨な現実を受け止められないなど様々である。


とある女子高生が元気のない様子歩道を歩いている。体に力がなくゾンビが歩くようにゆっくりと歩いていた。背中に背負った学校カバンを降ろして、制服を着た女子高生はそのまま道路に誰もいない事を確認した。そして歩行者信号が赤になっているのを見た。


『…終わりにしたい』


小さな声で低く呟くと女子高生が車が走る歩道に進んでいく。目線がまっすぐと反対側の歩道を向いており、ゆっくりと歩いている。歩道から車道までの距離は徐々に近づいてきておりあと三歩前へ進めば確実に車にはねられる。二歩目の足前に出して最後の一歩目を強く地面に浮かせる。

あと一歩出せば、私は楽になれる。今日でこんな現実からサヨナラする。全部…終わりに出来る…。そしてあと一歩地面まで付かせようとした。その時だった。急に体が重くなった気がする。それだけじゃない。なんだか胸が苦しい。まるで何かに取り憑かれていた者が勢い良く体から出て行くような感じがする。

胸を押さえそのまま後ろに下がってしまう。


『うっ…。た…すけっ…て…。だ…れか…。たっ…すけ…』

すると女子高生の目の前に黒い霧が出てきた。よく見るとそれは女子高生の体から出て来ている。しかも大量の霧が目の前で渦巻いていた。

そして女子高生はその場に倒れた。気を失っており、ピクリとも動かなくなった。

女子高生の髪が風でなびいている。黒い霧とともに。

すると霧がだんだんと人の形に変わってきている。ちゃんと手脚が存在し、見た目が二足歩行の生き物に形を変えている。

そしてその姿がだんだんと見えてきた。見た目が物凄くグロテスクな怪物であり、長い爪が両手について獲物に食らいつき、喰いちぎるかのような牙。さらには翼が生えており大きくその場で開かせた。


『ウッッッ…グゥッッ…』


怪物が倒れている女子高生を見つめる。


『美味しそう。いただきまーす』


その声はなんだか子供じみた感じだった。さらにノイズがかかったようにブレている。

勿論怪物から出ている声である。

そして女子高生に手を出そうとしたその時だった。


『やっと見つけた。食いしん坊の赤子ちゃん』


なんだか低い声の男の声だった。女子高生を食べようとした怪物の後ろで誰かが立っていた。その姿は全身が真っ黒衣類でネックレスをつけており、髪の毛は所々に銀髪に染まっている。年齢的には15歳から18歳くらいの、倒れている女子高生と同じくらいの年齢である。そんな若い男の子が堂々と怪物の後ろに立ってニコッとにやけている。


『何?僕に何か用?今お腹が減ってるんだ。お兄ちゃんも後で食べてあげるから待っててね』

怪物がそう言うと男の子がポケットから何かを取り出した。それは縦に長さ15センチほどの長い物で何やら筒状になっている。そのアイテムのスイッチを押すと、突然先から刃が勢い良く長々と出てきた。刃が光の反射で怪物の視界を邪魔し、思わず手で視界を隠す。


『そんな若い子食べても上手くないだろう。いい感じに熟した食い物はうまい。でもまだ熟してない食い物は味気ないのと同じだ。その子は小僧の腹を満たさないぞ。むしろ腹壊すかもしれないからやめときな』


『なんだよ!いきなり物騒な物出しといて。しかもカッコつけながら偉そうに。お兄ちゃんは後で食べてあげるから待っててよ。今はお腹が空いているの!邪魔しないでよ』


そして長い爪で男の子を引っ掻こうとした。だが男の子は優れた運動能力を持っており、アクロバティックな動きで次々とかわしていく。それだけじゃない高く飛んだり、怪物の腕を簡単に掴むほどの腕力もあり、おまけに剣さばきも見事だった。そのせいで怪物の体が切り裂かれていく。

歩道の手前には公園がありそこで次々と戦闘を繰り広げる。公園の遊具は怪物の攻撃によって破壊されていく。だが男の子には全く通用していない。


『はーい。そろそろお片づけするからねー』


男の子が怪物がフラフラになっている状態を見てにやけた。そして怪物の前方に刀を右手に持って刃を地面に引きづりながら近づいていく。


『もういいよ。お兄ちゃんから先に食べるから。だから…もう何もしないでね…。そのまま動かないで!』


物凄い勢いで男の子の方へ飛びついてくる。だが男の子はじっと怪物を見つめながら距離を詰めるのを待った。

まさか向こうから来てくれるとは。ご愁傷様です。

怪物が口を大きく開いてこちらに襲いかかってきた。だが、男の子は動じない。そしてあと少しで食われてしまうところまできた時だった。

一瞬怪物の顔に物凄い速さで何かがかすれた。見ると男の子がいる怪物の前にいない。


『あれ?お兄ちゃん?おに…いちゃ…ん』


顔の上唇から上がゆっくりと地面に落ちていく。そして怪物の顔から大量の人間と同じ赤い血が溢れ出てきた。そして怪物はその場をゾンビのように歩き回る。

何歩か歩いているとその前を男の子が立った。そして刀を横に振る。そして男の子は振った方向に移動していた。そして筒の形をしたアイテムのスイッチを押して刃を直す。


『クレイジャー…斬滅』


そう言って怪物に背を向けたままその場を離れていく。

後ろではさっきの怪物が上半身と下半身が真っ二つとなっていた。そのまま地面に倒れた。体は徐々に霧になって風に吹き飛ばされて消えていく。そして赤い血も地面に吸い込まれていくように消えていった。


『お仕事。おーわり』


男の子はフードを被り女子高生の倒れた方へ歩いて行った。




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