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ブレイカー・セブン  作者: スズサイケイ・チュウ
1/1

ブレイカー・セブン(前)

戦局は相手側に傾いていた。



「...なんでっ、.....なんでだよォっ...」



兵士は瀕死となった兵士を抱えて絶望していた。


なぜなら目の前に、機械歩兵マシーンが銃を構えて迫ってきていたからだ。



兵士は生きることすら諦めた。



「諦めるのはまだ早いんじゃねーのっ!!」



背後から愉快な声が聞こえた。


すると同時に機械歩兵に電撃が飛んだ。



「俺らが来たからには、もう大丈夫だぞ。」


眩しいくらいの金髪に鍛えられた体は服を着ていてもわかる。



「レイショウ...様...」


さっきの雷はレイショウの持つ武器だったのか。



兵士は安堵した。


彼らが来てくれた。



彼ら...“ブレイカー・セブン”が...。






兵士はバリアで応戦していた。


下手に戦えば死ぬことは明確だった。

だからこの捨てられた街を利用してひたすら逃げと守りに徹していた。



だからこそ兵全体の4割を超えた負け同然の戦いでもまだ生きていた。



「はぁっはぁっ、はぁっ...」



走ることにも、バリアをはるにも体力と魔力がいる。


もう体力も魔力も底付く寸前。

身体強化はもう途切れ途切れだった。


「(次のバリアが最後...)」



一寸の光も見えない闇だった。



一か八か。兵士は決めた。

「(どうせ尽きる魔力なら...)」



兵士は機械歩兵の前に飛び出し、構える。



「焼き尽くせ…!幻炎の蛇(ファイアスネーク)!!」



兵士は機械歩兵に手のひらを向けた。

そこから魔法陣が出来、炎の蛇が機械歩兵に向かっていった。


自らの意思を持たぬ一直線上にまっすぐ向かっていく炎の蛇は、見事機械歩兵に命中した。



だが、それで倒される代物ではなかった。



「...なんで、...効いてない!?」



魔力は尽きた。

逃げる気力も体力も残っていない。

そもそも身体強化がなければ追いつかれる。



「(あぁ、...死んだ。)」



兵士が涙を流した時、


「いい魔法だねっ!」


語尾に音符がつきそうな声が聞こえた。



ピンクの髪をツインテールにした女の子。


「あなた、は...もしかして...!?」



女の子は振り返り人差し指を唇に当てウインクをして見せた。



「ブレイカー・セブンのミーシャだよっ!...あとは、任せて。」



ミーシャは兵士の前に立ち、構える。



「炎はね、こうやって使うの。



我が身に宿り、我が力となれ...ファイアードレイク!!」




ミーシャの右腕が炎を纏い、大きな鉤爪に熱された鉄のような色の鱗の腕になった。


そしてそのまま、機械歩兵へと突っ込んでいった。


機械歩兵は胴体の中央に穴が開き、思考と動作を停止した。



それを見届けたミーシャは振り返り、兵士の元へと歩き出す。



「怪我...してるね。救護の所まで一緒に行こっか!」




あんなに苦戦した機械歩兵が、1発で...。



兵士は力の差を感じながらも、安堵。



「(これならすぐに、戦局はひっくり返る。)」




兵士はそっと、笑みを零した。





兵士は、さっきまで戦っていた。



魔法で機械歩兵を地面に作った穴に落とし、岩で貫き機能を停止させていた。



兵士はこの戦争に何度か参加して生き残り帰っていた。



他の兵士より経験値は高かった。



兵士は決して油断していたわけじゃない。

友人や同期の仲間、上司や部下が機械歩兵に撃たれ、切り裂かれ、焼き殺されていた。



大地の穴(グランドホール)尖った岩(ポインテドゥ・ロック)。」



「(これで終わりか。)」



周辺を見渡し、次のポイントへと向かう。



その時、後ろから機械歩兵らしき音が聞こえた。

後ろを振り返って見ると


複数の影が見えた。



「(五体確認...。まとめて来てるから、団体戦...、2人は厳しいな。)」



兵士は今回唯一生き残っている部下を呼び、応援を呼ぶように言ってこの場から離脱させた。



大地の壁(グランドウォール)!!」



街の道全体に広がった分厚い土の壁。


機械歩兵の銃弾くらいなら通さない。



「(ここで足止めをして、みんなで...)」



と、安心してしまった。

油断こそ命取りのこの場(戦場)で。



突如、風を切る音が聞こえた。

瞬間。背後にあった家が爆発した。



爆風と共に現実を知る。



機械歩兵《奴ら》が放ったレーザービームだ。

と知るのに、時間はかからなかった。



土の壁はビームが貫通した穴が開き、武装した機械歩兵がハンマーで叩いていたのが見えた。



「(武器持ちなんて聞いてないっ!?)」



兵士は絶望した。



自分が死ぬことと、部下や上司、友人達に誓った復讐を成し遂げられないことに。



「ごめんっ、みんなっ。」



兵士は俯いたまま涙した。



「若造よっ!戦意喪失とは、まだまだよなぁ!!」



上半身裸の大きい図体、ボサボサの長髪に放ったらかしの髭、2本の白い角の生えた甲。



「帝国の守護神...ヘドビュッド.....」



兵士は思わず口にした。



「おっ、俺のこと知ってんのか。...なら、尚更死なせてやれねぇな!!」



ヘドビュッドは大きな槌に手をかけ、右手で持ち構えた。



「俺ぁ、魔法に関しちゃお前さんより下だが、壊すことに関しちゃぁ...お前さんより上だ。」



ヘドビュッドは槌で壁を壊した。

たった一撃での粉砕。



そしてそのまま、機械歩兵達を叩き潰した。



あっという間。



魔法が発達したこの帝国で、魔法もなしの圧倒的強さ。



魔法妨害の結界などがあっても、一切関係なしに壊せる力。


それが守護神の由来。



「おい、お前さん。大丈夫かい?...間に合ってよかったよ。お前さんの部下に感謝しな。」



そう言ってヘドビュッドは兵士の頭を撫で、踵を返した。





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