For the Justice For the Peace
プロローグ
ここには人以外の知的生命体がいる。人はそれを総じて「セトロ」と呼ぶ。そしてセトロの中には一般的な人間の力を大きく上回り一般人では抵抗も許さず殺傷することができるモノもいる。そんな一般人を守るために世界機関はセトロと戦う戦士「コクター」を招集。コクターの実力は上から下まであり、一般人より少しだけ強い者もいれば、ほぼ全てのセトロを単独で殺戮できるとまで言われているものもいる。
そんな人間達とセトロの戦いの歴史が変わる物語である。
本編
「はぁ………。」
やっぱり理解できない。なんで同じところに住んでいるのにわざわざ現地集合にするのか。しかもそれぞれ別の手段を使うだなんて明らかにどうかしてる。そんな不満を考えながら自分の停車駅についたので電車から降りる。
駅を出て少し歩くと見慣れた2人の顔が見えて来た。
「遅ーい!」
スピカが開口一番文句を言って来た。
「カルラが遅刻だなんて珍しいな。電車に乗れなかったのか?」
「まぁそんなとこ……。」
アレックスが助け舟を出す。ここはそういうことにしておこう。電車で行く気になかなかなれずにいたら遅れてしまったということは黙っておこう。
「ジョンたちは先に行っちまったから現地集合だ。行こう。」
とりあえず頷く。目的のファミレスに着くまでに5分とかからないが文句を言っておこう。
「なんでそれぞれ別の交通手段で行こうだなんて言ったの?」
「もう!何度も言ってるでしょ?中学校を卒業したわけだから同窓会気分を味わおうって言うこと!」
やっぱり理解できない。スピカかそんなわけのわからないことを言うのはいつも通りだけども他のみんながそれに納得したことがまったくわからない。
「アレックスもスピカと同じ?」
「まぁそんなところだな。」
「頭おかしくなったのかしら……。」
「口に出てるぞ。」
当たり前だ。わざと口にしたのだから。
文句を言っていたら目的地の前に来た。5分どころか2分もかかっていない気がする。ファミレスだが中学生からしたらいい外食だ。
「6人程度なら予約しなくても良かったんじゃないの?」
「入れないと困るからな。」
「そうなの?」
「あっこっちこっち!」
メアリーが手を振ってる。ジョンもケンもいるしやっぱり私が皆を待たせてたみたいだ。
「遅れてごめんなさいね。」
「まぁカルラが遅れたんなら何かあったんだろう。」
皆の良心がこころに少し刺さる。
「まぁそんなことはどうでもいいさ。それよりもカルラはこっちに座っくれ。」
その席位置を見て気づく。
「もしかして誕生日……」
「流石にこの席に見たらわかるか〜。カルラってば以外と鈍いからなかなか気づいてくれないんだから!」
スピカが茶化しながら言ってきた。
「まぁ誕生日の人への割引があるからここにしたんだがな。」
「ちょっとケン!変なこと言わないでよ!」
メアリーがケンに対して叱責する。ケンは本当に考えずに喋るからなぁ……。でも、
「ありがとう。私の誕生日を覚えててくれて。」
これは心からの本心だ。素直に嬉しい。
「まったく………ちゃんと誕生日プレゼントもあるんだぞ?」
ジョンが長方形の箱を私に差し出して来た。
「もらっていいの?」
「うん。というか早く開けて開けて!」
何故かスピカが答えた。何が入ってるのかと考えながら開けて行くと一冊の本が出てきた。その本の表紙には「魔導学書〜入門〜」と書かれていた。
「これって私が前に……。」
「そ!ほしいって言ってから皆で金を出しあって買ったんだよ!」
ここに来て改めて思う。私には両親はいないけれども友人がいるおかげで寂しくないと。
「カルラの夢は魔導士のコクターだろ?それでしっかり勉強して俺とタッグを組もうな!」
「ケンってすごい……あれだな……。」
ジョンが少し呆れながらいう。私も少し呆れるがやはりいつものことだ。
楽しい時間は過ぎるも同じ寮なので帰路は同じだ。
「ねぇスピカ、行き方をわけたのって私を待ち合わせ時間通りに来させるため?」
「そうだよ?じゃなきゃ普通そんなこと言わないよー。」
スピカなら言いかねないだろう……なんて考えていたらサイレンの音が響く。
「え!?は、はやく避難シェルターに行かなきゃ!」
セトロがディフェンスエリアに侵入したことを伝える警報にスピカが焦る。
「落ち着け。ディフェンスエリアに侵入しただけだ。今までにも何度もあったろ。」
アレックスの言う通り前にもあった。三ヶ月に一回ペースでこのサイレンは鳴る。そして毎回なにもない。
「なんだ……よかった……。まったくサイレンは心臓に悪いよ……。」
「小学生でもサイレンの種類は知ってるわよ……。」
メアリーが呆れる。他の皆も少し呆れている。こんなので私と同じ進学校を卒業できるのだから本当に世の中はわからない。
「ねぇカルラ、なんでセトロが来たってわかるの?」
バスの中で信じられないことをスピカが私に質問する。
「…………結界って知ってる?」
「し、知ってる………。」
「カルラもそうじゃなくてちゃんと教えあげなさいよ………。」
メアリーき言われてしまった。スピカの頭が悪いのは今に始まったことじゃないし確かに意地悪だったかもしれない。
「…まずディフェンスエリア内と外を境に結界があるの。そこの結界を誰かが超える時に結界が自動で立ち入った者の判別を行う。何で判別するのかは極秘情報だから知らないけどそれで人間や小動物以外だとサイレンが自動で鳴る仕組みなの。そこでもしセトロだと判断されたら、そのセトロをマーキングしてコクターがリアルタイムで位置がわかるようなっていて、同時に半径10キロメートル以内のコクターの連絡機器に情報が行くの。それでセトロを倒すのだけど、もしディフェンスエリアを超えてライフエリアにセトロが到着し場合私たちにもー」
「スピカにそんな長い話が理解できるわけないだろ。」
ケンが口を挟む。質問に答えるのが面倒なのでこんな風に説明してるのだから当たり前だだろう。
「うぐぐ…………じゃ、じゃあなんでケンとカルラはコクターを目指しているの?」
「俺は昔コクターに助けてもらったことがあるんだ!その時の姿がすごっいかっこよくて憧れたんだ!それに適性検査でもまぁまぁ良かったしな!!」
「コクターに助けてもらったことがあるってあなたがライフエリアから外に出たってこと?」
「……メアリーは勘が鋭いんだな…。」
「セトロがライフエリアに入ったら大問題だから当たり前でしょ。」
「カ、カルラはどうしてだ?」
強引に私に話を向けて来た。
「適性検査の結果が良かったからよ。」
「えー?それだけ〜?」
もちろんそれだけな訳がない。スピカはこういうところが鋭いから困る。
「それだけよ…。」
私の両親がセトロに殺されたのかもしれないからだなんて重い話をしたくない。
そんな話をしている最中に乗客の男性が急に苦しみだした。
「お……おぁぐ…………うごぉぐ………」
「く、くさい…。」
スピカが不満を漏らす。確かに嘔吐したのだろうから臭いだろうけどあんまりでしょうに。
「大丈夫ですか?」
アレックスが心配して近く。ケンじゃなくてアレックスがコクターになるべきだと思う。
「おぉ………」
「大丈夫ですか?とりあえずバスから一旦降ぐ…………」
何か嫌な音がした。そしてアレックスの首から何か生えてきた。赤い刃物のようなものが。
「………………………………………」
「どうしたの?アレックス?」
スピカ以外が固まる。いつのまにかバスも止まっている。
ドサッ
力なくアレックスがうつぶせに倒れ苦しんでいた男性が立ち上がりこちらをみる。その顔は血だらけで口から何か尖ったものを持った手のようなものが出ている。
「あ……アレックス!!!」
メアリーが叫ぶと同時にケンは非常ドアを開けようとしていた。私はどうしたらいいかわからず動けない。
「おい!速く開けろ!なにやってんだ!」
誰かが怒号をあげる。
「メアリー!バスから降りるぞ!」
ジョンの叫び声で私もするべきことがわかる。逃げなくては。セトロかどうかはわからない。アレックスもわからない。けれど目の前に口から手が出てる人間がこちらを見ている。それが私たちに対して害があるということは理解できた。
ガッチャン
非常ドアが開いた。皆がもみくちゃに一箇所に集中し団子になる。
「ぐがぎゃぁぁぁぁ!!!ぁあぁ………」
何かが聞こえたような気がした。何か液体が落ちたような気がした。
ケンや皆が逃げた方についていく。ケンが目の前の廃ビルに入り、他の何人かも入る。
「ああぁぁぁぁぁアアアァァァ!!」
「助けて!!いやぁぁぁあ!!!」
「速く通報しろ!!!」
通行人の叫び声が聞こえた。私達の方にはこなかったようだ。
「速くコクターに通報しろ!」
「アレックスが………アレックスが…………。」
メアリーがアレックスの心配をしている。誰かは電話をかけている。ケンは震えている。
「ねぇ……ジョンは?」
スピカが言った。確かにいない。でもどうしようもない。人の心配をする余裕なんてない。今の私の場所が安全で助かるということが一番知りたい。
「ジョンもアレックスも殺された…あの変な手に…………。」
「やめて!!」
ガシャン!
その音が工事現場を塞ぐフェンスが倒れた音だとすぐわかった。考えるよりも先に私は階段に向かっていた。
「コクターだ!コクターが来てくれたんだ!」
「コクターなわけがない!どけ!」
ケンが私を押しのけて階段を上がっていく。私もそのあとに続こうとするがスピカたちが動こうとしない。
「なにしてるの…速く……」
「俺が見てくる。」
「わた、………私も行く……。」
そう聞いて私は階段を上がる。2人のわけのわからない行動を理解しようする必要はない。階段を上がった先のフロアにケンは見当たらなかった。どこかに隠れたのか。私は隅のフェンスの後ろに隠れる。
サイレンが鳴った。何分経っただろうか。10分は経ったように感じる。ここでようやく私も携帯で非常通報のために携帯を出す。携帯にはセトロが侵入した可能性があるとだけの通知があった。
「いや!いや!い」
「スピカァァ!!!ー」
スピカの悲鳴とメアリーの声が聞こえた。
2人になにがあったのか?ジョンは?他の人たちは?そんなことが少し脳をよぎったが、今私は動かずに息を殺してずっと待つことしかできない。してはいけない。
ペタペタペタ
何か音が聞こえる。そしてその音はこちらに向かって来ているように感じる。来ないで。来ないで。来ないで。音が止む。
ガシャン!
明かるくなる……。そして人影見える。絶望しながら顔を上げるとそこにはジョンがいた。
「………ジョン………」
ブシャァ!
ジョンの頭がいきなり爆発した。そして首から上がなくなった。
「フゥ………ヤッパリオモッタトオリダ。」
口もないジョンの体が喋りだした。ジョンの声じゃない。
「ケッカイヲコエルトキニニンゲントハンダンサレタラマーキングハツカナイ!ハハハ!ハヤクカエッテミナニジマンスルカ。ト、カエルノニモアタラシイカラダガヒツヨウダナ。」
足に力が入らない。立つこともできず這うことしかできない。
「セナカカラハイルカ。」
「あぁぁぁ!ううぅぅ………。」
背中を何かが擦っていったような気がした。すぐに背中を切りつけられたとわかった。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない!嫌だ嫌ー
あ………れ…………?私は…………生きている…………?体のあちこちが痛いが生きている。死ななかった?周りを見渡す。四方には大量の血と何か赤い塊が散らばっていた。あ………私の体の中にセトロが……………鏡………私はわたしで…………。電源の付いてない携帯の画面を見る。そこ顔半分に血がかかった私がいた……………頭から左右にツノを生やして。
「ヒッィ!」
携帯を落として情けない声を漏らす。気配を感じて振り返ると鏡があった。そこに映る私は血まみれで服が汚れいて…………………………髪と素肌は白く頭にツノがあり背中には一対の羽があった。
続く(かも)
【人物紹介】
・カルラ
主人公。年齢は15歳。両親は不明。不明児童養育施設という孤児を育てる施設で成長していたが、コクターになるべく進学。一定以上の成績を収めコクターへの就職を約束されたため授業料は全額無料となる。無料にならなかったらどう返そうかあまり考えていなかったり遠くをあまり見通せない。しかし待ち合わせなどの予定には5分前に来るために外面はとてもいい。コクターへの適性検査の評価は10段階中6。上位にはならずとも下位にはならない程度の評価である。検査の結果魔道士として素質がある。もっとも結果は上位にはなれないほどだが。ちなみに地毛は茶。
・スピカ
カルラの同級生。勉強できるが一般常識が欠如している。そのせいか、ムードメーカーでありトラブルメーカー。ちなみに偏差値はカルラを超えている。普通科高校に進学予定。
・メアリー
同級生。スピカの監視役のような立ち位置にいる。将来は看護師になるべく勉強中。
・ケン
同級生。カルラと同じくコクターになるべく進学した。トラブルメーカー。コクターを目指す理由はストーリー中の通りである。適性検査は5。魔導の素質は皆無であり科学性の武器を使う予定。
・アレックス
同級生。みんなのリーダー。義理深く困った人は放っておけないタイプ。その性格が災いしてすでに死亡。ちなみに趣味は折り紙。
・ジョン
同級生。一欠片の勇気を持つためコクターになれたかもしれないがすでに死亡。その為他割愛。
・嘔吐してた乗客男性
セトロが体に潜んでいた。つまり登場した時点で死亡している。
・他の乗客A
廃ビルに入るまでに死亡。
・他の乗客B
一緒に廃ビルに避難する。通報しろって叫んでた。
・バスの運転手
いつのまにか運転席から逃げていた。存命。
・通行人
歩いてたらセトロに殺される。とても可哀想。
・セトロ
乗客Aの中にいた。その後通行人を経由してジョンの中に入った。ディフェンスエリアに入る時点で人の体内にいたためマーキングがされずにサイレンもならなかった。