4話
……可哀想なのか?
妻や子は勿論、友人すら居ない俺からすればどうでも良い。何なら適当に嘘でも吐いておけば良いのに。
引き籠りなんて消費しかしない生き物が仕事をしているんだ。それも冗談みたいな“お星さまを作る”と云う事を。
別に、多少の嘘を吐いても罰はあたらないだろう。
それにしても、この班長はペラペラとよく話す。私語厳禁とは何処へやら。
面倒な思考は置いておき、また作業へ戻る、
……スイッチを押す、待つ、押す。
スイッチを押す、待つ、押す。
この待つ時間。0秒丁度のタイミング。長い視野で見ると作業効率が良い。その分、星が早く多く増える。
――仕事を終えると、白を脱いで普段の自分に戻る。
擦れ違う人々は、あの空に浮かぶ星を俺が作っているなんて知らないんだろうなぁ。
現実的な地上とは違い、幻想的な天上と思われた世界までもが陳腐な作り物だったなんて、人が知れば世界に幻滅してしまうかもしれない。
確かに、これは言うべきではないな。
引き籠って5年。人との繋がりを遮断した事が幸いか、話す相手は居ない。
……考え様では、これは天職かもしれない。
家路につく頃には空を彩る星が見える。使命感を満足させるには充分な景色だった。
少しだけ、星を好きになれた。
「おはよう、新人くん! ……と云っても君が此処に来て、もう一年経つか。ボクは今日も相変わらず班長なんだけど、君は明日から配置換えでコンベアー担当になるよ。あっ、これ栄転的な変更だから給料上がるよ。おめでとう」
出勤早々、班長から部署の異動を通告された。
何か問題を起こさなくとも、人事異動が行われるのだろうか。
「あーー、普段は事情の無い異動なんてしないよ。これでも離職率は低いし、人も足りてるからね。多いんだよ、ニート。
君が異動するのはさ、あのコンベアー担当だったおじさんが居なくなったからなんだ」
不可思議な職場だが、待遇は悪くない。否、むしろ良い方だ。
今迄の経歴も背景も関係無く、ブラックな職場も在る中で世間一般的な優良企業並みの待遇なのだ。辞めるなんて考えられない。
「ほら、前に話したの覚えてる? 子供にさ、仕事は何か訊かれたってやつ。あれさぁ、答えちゃったんだってさ。んで、クビ。
担当変わるし丁度良いや。ちょっと来て」
コンベアーが設置されているエリアへ向かうのか、景色だけと認識していた壁にある長い階段を上へ上へと昇る。
其処には、真っ白な色に似つかわしくない真っ赤な機械が有った。
細々とピストンを繰り返す未知の機械。真っ赤な煙を所々から噴き出している。




