3話
「はい、到着でーす。新人くんはココで作業をして貰います。内容は簡単、上から四角形がコンベアーで流れてくるから、ここの青いスイッチをポチッと押してね。で、10秒のカウントが横に表示されるから、0になったら赤のスイッチを押してね。0になれば良いけど、早過ぎるとダメだから気を付けてね。はい、以上! 何か質問は?」
ただボタンを押すだけだなんて。本当にこれだけ?
いや、それより“質問”して良いのだろうか。先程は“何も考えず与えられた業務をこなせ”と……。まあ、ダメ元で気になる事を訊いてみよう。
「お、良いねー。此処に来る奴は大概が無気力スカスカ野郎だから、言われた通りに仕事するしか出来ないんだよー。本当に質問する人、ボク初めてで嬉しいよ!」
――此処は何をする工場なのか。国家運営やら機密やらとは。四角形の流れてくる物は何なのか。班長に訊いてみた。
彼は嬉しそうに手を叩き、一層の笑顔で答える。
此処は、星を作る工場。星は人々の心を癒し支える。国は、そんな人々の為に星を作り出す。
あの四角形は、星の元。
……そう説明すると、彼は笑顔でこう言った。
「これ内緒ね! あと、UFOとかあるでしょ? テレビで見た事あるよね? あれね、実はCGなんだよ。しーじー。これも内緒ね!」
驚いて良いのか、星に興味の無い俺からすれば正直どうでも良い内容なのだが、取り敢えず感心したフリをした。
――此処に来て、どれ程の月日が経っただろうか。
青いスイッチを押して、10秒待って赤いスイッチを押す。
青いスイッチを押して、10秒待って赤いスイッチを押す。
青いスイッチを押して、10秒待って……。
これは意識せずとも、ご期待通りの思考する事が無い機械の様な人間になりそうだ。
青いスイッチで四角形は星型となり、赤いスイッチは星を打ち上げる。成形と打ち上げとは、この事だった。
毎日毎日、白い作業着を身に纏い、スイッチを押す。毎日毎日、繰り返す。
「だいぶ慣れてきたみたいだねー! こう、押し方が様になってきたよ! ロボットみたい!」
褒められているのか貶されているのか。班長がいつもの笑顔で喋る。
「ねーねー、コンベアーの先にさ、見えるでしょ? おじさん。真っ白で分かり難いけどさ、真っ白な髭を生やしたおじさん」
班長が指差す方を見ると、確かに年輩の作業員が見えた。……と云うか、班長も充分おじさんだ。笑顔の所為か、顔は笑い皺が目立つし痩せているので老けて見える。少なくとも俺よりは年上だろう。
「あのおじさんさ、訊かれたんだって! 此処に来た癖に、奥さんと子供が居るみたいだけど、その子供に……
―― パパのおしごとは、なぁに? ――
……って訊かれたんだってー! 勿論、答えられなくてさ、可哀想だよねぇー」




