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9 機械仕掛けの蒸気ロイド 前

 ここは最先端科学の都市ファルミアだ。おそらく全市民を探しても魔法を遣える人間は数えるほどしかいないだろう。


「まさかこんなに簡単に魔法で開けられるとはね。ウチも知らなかったわ」


 暗がりの中に入ると、ジェイクがランプをかざして室内を詳しく(うかが)う。


「マリアさん、魔法装置の場所ってわかるかしら」

「ええ、強い魔力を感じる場所ならば、その奥ですわね……」


 爆破事件現場の床には、爆発があった周辺にテーピングがされている。マリアが指差したのはその奥にある倉庫代わりに使われていた理科準備室に抜ける扉の方向だった。


「ここに魔法装置がある訳じゃないのか」

「恐らくその奥ですわね」

「この先は確か倉庫代わりに使われていた部屋のはずよ。マリアさん、やってちゃって!」


 妙に偉そうな具合でジェイクはマリアに開錠を指示すると、彼女は無言でうなずき返してもうひとつピッキングの魔法を遣ってみせた。

 カチャリと鍵が開く音がして、ドアノブにリチャードが手をかけた。


「よしいいか、あけるぞ」

「ゴクリ……」

「ええ」


 リチャードがドアを開くとランプをかざしたジェイクが入り、マリアが後に続く。


「きったねえ部屋だな。まるでガラクタ置き場だ」


 ランプをかざしてみると、無数の木箱や何に人体模型図、瓶詰のカエルのようなもの、壊れた意味不明の機械や工具が散乱していた。壁には天文図なのかもよくわからないものまである。


「マリアさんどれかしら」

「いくつか魔法装置があるみたいだけど……」

「え、いくつか?」

「例えばこれとかはそうだわ。魔法陣か何かみたいだし」


 壁の天文図を指したマリア。


「それじゃ一番怪しそうなのは……」


 そんなジェイクの言葉に、リチャードが口を挟む。


「おい、これは何だよ。この模型人形みたいなの……」

「これですわ、これから一番大きな魔力を感じます」


 布のようなものが被せられた物から体のパーツ、つまり手足がはみ出していたのだ。かなりの大きさで、ほとんど人間と同サイズだ。

 リチャードが被せられた布をはぎ取ると……。


「――!?」

「なんだこれ……」

「わたくし、ですか……?」 


 そこには、外見がマリア・ノールズにそっくりな顔をした機械人形が壁にもたれかかっていたのだ。

「どういう事よいったい! これがその魔法装置の正体って訳?」

「俺にわかる訳ないだろ、そんな事」


 膝をついて細部を調べ出したリチャードとジェイク。


「これ、胸部が何かの機械になってるな」

「蒸気機関ね。ほらだって、背中側にエントツがあるもの」

「じゃあ蒸気機関で動く人形って事か? でも魔法装置なんだろこれ」


 ジェイクとリチャードのやり取りの横で、マリアはしばらく放心した顔をしていた。何でこんなところにマリアの顔をした人形があるのか。けれどもハっとなって、


「ただ蒸気機関で駆動する機械人形なら自立制御は出来ませんわ。けれどもし、これに魔法回路のようなものが組み込まれていたら、自分で起動することが出来るかもしれません。古い魔法研究の中に、この魔法回路を使った機械人形(オートマタ)というものがありますもの……」

「なるほど、科学と魔法の組み合わせた装置って訳か」


 リチャードがうなりながら、マリアの顔をした機械人形の手を取るったり、無数のパイプや部品で出来たそれをベタベタと触った。

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