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12 エピローグ

 しばらくした寄宿学校が休みの日。


「先日の件で、ジェイクとリチャードのお二人にはちゃんとお礼をしたいと思ってましたの」

「何言ってるのマリアさん、ウチらはお友達じゃない!」

「ですけれど、あなたが犯人捜しをしようと切り出していなければきっと、あの事件の事で教室内にいたわたくしは居心地の悪い思いをしていたはずですもの」


 ふたりは寄宿舎の中を歩いていた。向かっている先はリチャードがいる男子区画である。

 男女それぞれの区画は相互に夜中の異性立入を禁じていたけれど、昼間の時間帯に限りそれが許される。


「まぁあの時のリチャードはたいして活躍したわけじゃないけどね! あいつ錠前も開けられずに結局マリアさんがやった訳だし、最後も蒸気ロイドにぶら下がってただけだもん」

「それはそうですけれども、やっぱり気持ちとしてお礼は言っておきたくて」

「そんなの、学校がある時に言ってやればよかったのよ。わざわざアイツのために休日を無駄にする事なんてないのよっ」

「で、ですけれども。ほら、教室でお礼を言うとなれば何かと気恥ずかしいじゃないですか……」


 少しだけ頬を赤く染めているのを見て、ジェイクは狐耳をピコリと動かしてみせた。


「まあそういう事なら付き合うけれど。ウチらはちゃんとお友達になれたんだしね!」


 あれから、マリアは少しだけ物腰が柔らかくなった。

 今でも教室内では積極的にみんなとの会話に参加してくるわけではなかったけれども、ジェイクやリチャードが話しかければ、その話題に少しは乗ってくる。いつも表情のない顔をしているわけでもなく、笑って見せたりむくれてみせたり、今の様に気恥ずかしそうな顔だってするようになった。

 以前にくらべれば随分とマリアは変わったのだ。


「そういえば、あの蒸気ロイドはどうなったのかな」

「確か、実況見分が終わった後に学校にもどされたはずですわ。けれどキッシンジャー先生はまだ謹慎中のはずですし。そうですわね、どこに行ったのかしら……」


 ふたりがそんな事を言っているうちに、リチャードの寄宿部屋前にやってくる。

 ジェイクは普段とかわらず下町仲間の部屋を訪ねる時のようにドアを数度ノックすると、勝手知ったるという風に返事をまたずにドアを引きあけた。すると。


「……あ!」


 そこにはマリアの顔をした機械人形と、工具を使ってそれを熱心に修理しようとしているソバカス少年の姿があった。間の悪い事に、リチャードはちょうど機械人形の大きめな胸をいじっているところだったのである。


「蒸気ロイドはここにあったのね!!」


 わなわなと振るえるマリア。


「……リチャード。これはどういう事は、説明してくださいますわね?」

「いやほら。なんか友達の顔をした機械人形だったし、引き取り手がないとなると後味悪いし可愛そうじゃん? メカマリアたんが……」

「それがどうして、わたくしの胸を揉みしだく事になるんですの! 説明してくださるかしら!?」

「え、揉みしだくとかじゃなくこれは修理――」


 バチーンと、いい音がソバカス少年の寄宿部屋に反響した。

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