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突然の婚約話

あの日、無事に私のデビューが終わり……。

あれから半年ほどたった頃、突然にアラン王子との婚約話が持ち上がった。

朝一に母は嬉しそうに私の元へやってやってきたかと思うと、満面の笑みを浮かべながらに私を抱きしめた。


「さすがわが娘だわ!アラン王子の婚約者候補にあなたの名前があがったのよ、よかったわね!」


えええ……どうして今更……?

あの時はっきりと断ったはずなのに……。

幻聴かしら……、そうよ……私はまだ夢を見ているんだわ。

抱き締められる腕から逃げ出し、徐に頬を引っ張ってみると、鈍い痛みが走る。

あぁ……夢じゃない……。


嬉しそうな母の様子に、思わず苦笑いを浮かべる中、父は悲しそうな顔で部屋の扉前に佇んでいた。


「うぅぅ……まだ嫁に行くには早い、早すぎる……」


嫁……いやいやちょっと待って……。

もう婚約は実ったものように話す二人の様子に私はとても焦っていた。

嘘でしょう……。

待って……このまま婚約しそうな勢いじゃない!!!

私は絶対に王子となんて、婚約しないんだから!!!


「お父様、お母様ちょっと待って……私はアラン王子と婚約しないわ!社交界の時に、はっきり断ったもの!」


私はそう叫ぶと、二人を部屋から追い出し、バタンと勢いよく扉を閉めた。



そうして私は自室で、どうやって婚約者候補から外れようかを思案していた。

王子様からの婚約話だ……そう簡単に断れるものではない。

なら……悪事に手を染めてみる?

無理無理……私にはそんな度胸は無いわ。

もしくは……この国を、家をでる?

これもダメね……。

両親や皆に会えなくなるのは、寂しすぎる。

後は……処女を喪失する?

……うぅ、これはもう未知の世界ね……。


うんうんと頭を悩ませる中、どれも実行するには相当な代償が必要そうだ……。

よし、これは……アラン王子に直接話をしに行ってみたほうがいいかもしれないわ……。



そう結論に達すると、私はとりあえずアラン王子に会いにいくことにした。

思い立ったら吉日、私は朝早くに父の書斎へ訪れると、アラン王子との面会を願い出る。

父は切羽詰まった私の様子に、少し考える素振りを見せるが……すぐに面会の日程を調整してくれた。


それからというもの、どうやって王子に伝えようか、どう話を持っていけば断ることが出来るか。

毎日毎日、そんな事ばかり考えていた。

魔術の勉強にも身が入らず、失敗の連続だ。

そんな自分に嫌気がさす中、何も見いだせないままに時間だけが過ぎていった。




そうしてとうとう……王子に会う日がやってきてしまった。

もちろん……いい案は思いついていない。

もうこれは……素直に自分の気持ちを伝えるしかない、そう思っていると、部屋にメイド達が押し寄せてきた。


またこの日の為に作ったのだろうか……私は初めてみる赤いドレスを纏い、化粧を施すと、王宮へと向かう準備を進めていく。

そうしてメイド達に押されるままに部屋を出て、廊下を進んでいくと、エントランスに人影が現れた。

誰が来たのだろうか……そう思い顔を上げると、そこにはよく知るグレイの姿があった。

グレイは余所行きの私の姿に、何かを考えるように立ち尽くしている。


「グレイ、どうしたの?ごめんなさい、今日は忙しくて……このまま出かけるの」


そう声をかけると、グレイは真っすぐに私を見据えた。


「いや……突然来てしまってすまない。……アラン王子へ会いにいくのか……?」


彼は複雑そうな顔でそう問いかけると、私は大きくため息をつくと、グレイへ視線を向けた。


「えぇ……そうよ。あのね……何とか婚約者候補から外してもらえないかお願いをしようと思っていて」


その言葉に彼は目を丸くすると、先までの難しそうな顔から、ほっとしたような表情に変わっていく。


「そうか!なら……。まぁ。気をつけてな。また来る」


彼は小さく手を振ると、そのまま静かに屋敷を去っていった。



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