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王子の真実

僕はこの国の第一王子として生を受けた。


父と母は仲が良く、僕をたくさん愛してくれた。


「父上、どうやって母上と出会ったんですか?」


「それはね、パパがママに見つけてもらったんだ」


うん?どうゆうこと?僕はしばらく考え込む。


「お前もきっと出会えるよ、そんな女性に……」




僕が7歳になったある日、夢をみたんだ。

知らない町のなかで僕独り。

僕の夢はいつも孤独だった。

父上、母上どこ……ですか?


僕は泣きそうになりながらいつものように必死に町のなかを探しまわる。

人が誰もいない町中で、早く夢が覚めないかな……とそう祈りながら道端でしゃがみこんでいると、突然声が降ってきた。

僕以外の誰かが喋った声をこの世界の中で初めて聞いた。

驚きのあまり僕はハッと顔を上げ、その声の主を確認するように目を向けた。


そこには幼い可愛らしい笑顔を浮かべ少女が、僕に手を差し出してくれていたんだ。

どうやら彼女は僕が落とし物か何かを探しがしているように見えたらしい。

そんな彼女の手を握り返すと、僕は彼女に連れられながらに、探し物を見つける為、街を歩きまわる。

探し物を探してくれる彼女の背を茫然と眺めていた。

握られた手の熱を感じながら……。


ふと彼女の姿がぼやけたように見えた。

僕は焦って彼女の服を引っ張っぱると、彼女は驚いた様子で僕へと振り向き、どうしたの?と笑みを浮かべて見せる。

彼女がいなくなって……また人ぼっちになってしまう恐怖に泣きそうな顔をしていると、彼女は僕に笑ってほしいと言ったんだ。


僕はそんな彼女の言葉に自然に微笑みを浮かべると彼女は僕を優しく包み込んでくれた。

小さい彼女に抱きしめられながらに、僕は彼女の熱を感じていた。

これは本当に夢なのだろうか……?

小さな体に身をゆだねる中、彼女が何かを見つけたように僕から目を離すと、彼女の姿は霧のように消えてしまった。


あぁ……これが父の言っていたことだったんだ。


僕はベットで目を覚まし先ほどの夢を鮮明に思い出していた。

彼女は誰だろうか……?

僕はすぐに父の部屋へと向かうと、夢で見た彼女の特徴を伝える。


特徴を言い終えると、父の側近が話し出した。


「特徴を聞く限り、わたくしめの娘によく似ている気がしますね」


僕はすぐに街へと出かける手配をし、彼女の姿を確認しに行った。


間違いなく彼女だ。


愛しい君、君は僕のものだからね。




僕は父上に僕のお姫様が彼女だと伝えに行った。

父上は微笑みを浮かべよかったなと僕の頭をなでてくれる。

そうして父上は徐に口を開けると、ゆっくりと語りかけた。


「お前に大事なものができたのなら、パパの力をあげよう……きっと役にたつはずだ。だが、パパの力を手に入れるには厳しい訓練があるが……耐えられるか?」


僕はすぐに頷き、その日から父との訓練が始まった。


父の言われた課題を毎日クリアしていくが、力を受け取るにはまだまだ時間がかかるとのことだ。


そうして、あっという間に5年の月日が流れた。


よくやったな、お前に俺の力を与えよう。


これは王族だけに受け継がれていく特別な力だ。


俺は父の言葉にゴクリッと唾をのむ。

父の手の光の塊が、僕の胸へと入り込んでいく。

すべての光を僕が吸収すると、父は微笑みを深めて見せた。


「この力はな……予知夢と相手の夢を操ることができるものだ」


予知夢はわかるが……夢を操る?

そんなものいつ役にたつのだろうか……。


「まだわからないだろうが……いつか役立つ時がくる、まぁ役立たないほうがいいんだけどなぁ」


そう話すと父上は豪快笑ってみせた。


そうして僕は力を受け継ぎ、彼女のデビューパーティーへと参加し彼女に求婚をした。

しかし彼女は僕の求婚を断り、違う男と楽しそうにダンスを踊っている。

それがひどく苛立って、僕は嫉妬で狂いそうだった。


彼女のデビューが終わった後、父に彼女を婚約者にすると申し出にいったが、父の側近である彼女の父上が渋った顔をみせる。

すると側近は、婚約者候補に挙げ、まずは娘との交流を深めろと言ってきた。

僕は仕方なく婚約者候補で我慢することにしたんだ。

ゆっくりではあるが……彼女に近づくことは出来ているのだから。


そんなある夕方、机でうたた寝をしていると……僕の夢に彼女が現れた。

彼女は泣きながら、布団の中にくるまっているようだ。

愛しい君、なんて可愛らしい……早く会いたい。

でもどうして泣いているのだろうか?

僕はそんな彼女にゆっくり近づいていくと、彼女の隣にはあの日ダンスを踊っていた男が寄り添っていた。

彼は彼女に手を伸ばしたかと思うと彼女を胸に閉じ込める。


「やめろ!彼女に触るな!!!」


感情が溢れ、そう怒鳴った刹那……僕はそこで目が覚めた。

もしかしたらこれは予知夢かもしれない……。


そう思うと僕は急ぎ彼女の家へと馬車を走らせる。

するとそこには夢と同じように男と抱き合っている彼女が居たんだ。


俺は怒りを必死に抑えながらに笑顔を貼り付け、彼女を怖がらせないように……男へ表に出ろと威圧する。

もう二度と、あの男が彼女に近づかないように。


僕は一息つくと、毎月かならず一度は彼女へ会いに行った。

そうして彼女が婚約者候補となり、3年の月日が流れた。

その間に僕は彼女の交流を深め、彼女のことをたくさん知っていった。

知れば知るほど彼女を好きになる僕は重症だろう。

もう手放すことなんてできない。

彼女はなかなか婚約に良い返事をくれないが、僕に対しての態度や表情が明らかに柔らかくなった。


もうすぐ彼女が16歳になる。

16歳になれば彼女は結婚できる年だ。

婚約者になる日も近い、そう僕は喜んでいた。


しかしある夜僕は久しぶりに彼女の夢をみた。

彼女は胸が大きく開く足に深いスリットが入った服をきて、酒場へと入っていく。

その姿にあわてて彼女を追いかけた。

彼女は酒場で酒を飲みながらに、数人の大柄な男と何か話したかと思うと、奥の部屋へ消えていく。

その部屋は男女の営みを楽しむために用意された部屋だ。

まさか……ッッ。

その刹那、彼女の姿は闇の中へ消え、目の前が真っ暗になっていった。


そうして僕は飛び起きた。

薄暗い王宮の廊下を走りにぬけ、夢で見たあの酒場へと向かう。

まさか、まさか、そんな……。

あんなに僕と過ごして、笑ってくれるようになった彼女がまさかそんな……。


信じられない思い出酒場の扉を勢いよく開け放つと、男に手を組み、目を丸くした彼女と目があった。

怒りのあまり微笑むことを忘れ無言で彼女を男から引きはがし、抱きかかえる。


どうして……?


そんなに僕と結婚するのがいやなのか?


許さない、許さない、絶対に許さない……。


君は誰にも渡さない。


君は僕だけのものだ。


暴れる彼女を僕の部屋へ連れこみ、彼女をベッドへと押さえつける。

父上……力を使わせていただきます。

彼女が僕のものになるように……。

彼女は僕の目を見つめると、虚ろな瞳をしたままベッドに沈んでいった。




もういや……っっ。


外へだして……。


学校にいかせて……。


ここから出して……。


家族にも会えない……。


魔法もつかない……。


もうこんな生活はいやなの……。


許して……。


外の景色を見たのは何年前だろか……?


王子以外と会話をしたのはいつだろうか……?


暗い部屋の中、気が狂う寸前までに私は追い込まれていた。


もういや……。


もう否定しないわ。


すべてを受け入れるから……。


あなたを好きになるから……。


助けて……誰か……。


そう強く願うと、突然彼の声が降ってくる。

今、そばにいない彼の声が……。


「約束だよ」


捕らえられていた部屋の風景が歪み、あたり全体が光に覆われる。


なに……?

なにが起こっているの……?


グラングランと脳が揺れ、意識が朦朧としてくる、私はゆっくり目を閉じた。



そうして次に目が覚めると私はふかふかベットの上で眠っていた。


あれ……?

これはどういうこと……?


ベットの傍には、夢の中で見慣れた笑顔が目に映る。


「おはよう」


「えっ……おはようございます……。私は……寝ていたの?」


「そうだね……君が酒場に行ってから丸一日ぐらい寝ていたかな」


そうクスクスと笑いながらに、王子は笑みを浮かべて見せる


その笑顔に、鮮明に思い起こされる彼の夢に、私の体は小さく震えてた。


「どうしたんだい?気分が悪いのかい?もしかして怖い夢をみていたのかな……?」


彼はいつもの微笑みを浮かべながらに、私の顔を覗き込む。


「わっ……わからないわ……」


混乱する中、私は咄嗟にそう言葉を返すと、王子へ真っすぐに視線を向けた。


「ふふっ、もうすぐ君と僕の婚約発表が行われるんだけど、どうする?」


その言葉にあの夢がまた脳裏をよぎっていく……。


「婚約するわ、あなたと……」


それはよかった、と王子は私を優しく抱きしめた。


「僕の愛しい君、やっと君は僕の物だ」


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