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性悪貴族?なにそれおいしいの?  作者: ぽて
味噌を求めて三千里&もう一体の魔王?編

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ダイエットと童話作家


「…………今日も今日とてカリカリオンリー…………」


 彼女の口に広がるのは、味気ない魚の風味。半月前までは美味しいゴハン食べ放題だったというのに何故こんな事に……? せめてもの救いは一昨日から過酷な食事制限(三食カリカリのみ)が緩和されて、アステルちゃんのクッキーが解禁された事か。


「しかもなんかよくわからん体操とかさせられるし意味わからんのだ! てゆーか、びりーって誰にゃ!!」


 ダイエット開始後に毎日ナゾの体操をさせられるようになり、彼女の我慢の糸はブチ切れる寸前だった。まあ体操のおかげか腹筋が割れてきたのは密かな自慢になりつつあるのだが。


「……………………よし、逃げるにゃ」


 そうして彼女の脱ダイエット逃走大作戦が幕を上げたのだった。





「ノーチェがいない?」

「……はい。クッキーを届けにノーチェさんのお部屋に行ったんですけど」


 部屋はもぬけの殻だったとアステルは告げた。


「うーん。最近は僕もノーチェとは別行動が多いからなぁ……」

「やっぱりダイエットが苦で家出とかしちゃったんでしょうか?」

「遠征先で家出とか失踪とそう変わらない気がするけど」


 ちゃんと帰ってこられるかなぁ……?


 ヒューイとしても少しやり過ぎたかな? とは思っていたのだが、心を鬼にして事に当たっていた。生活習慣病は恐ろしいものなので。野生の魔王が食っちゃ寝しすぎて肥満とか笑い話にしかならないのである。


「ねえ、アステルちゃん。猫に帰巣本能ってあると思う?」

「帰巣本能もなにも、ここ本来のお家じゃなくて仮宿ですよ……?」

「……もしかしてノーチェは帰ってこれない?」


 導かれた答えにサァァっと血の気が引く。出会ってからは日中こそ別行動だがそれ以外は大体一緒に過ごしているので、別離となると存外ショックを受ける事に気がついた。いつの間にか当たり前になっていた重みがなくなるのは……悲しい。


「……うぐっ、ぐすっ」

「ああああっ、ヒューイさん泣かないで……!」

「このままノーチェが帰ってこなかったらどう゛じよ゛う゛ーー!?」


 うわーんと唐突の精神不安定情緒不安定に陥るヒューイ。そしてそれをあやすアステル。混乱する場に救世主が現れた。


「話は聞いたっすよ!」


 隣室にいたローレンツがババンと扉を開いて飛び出してきた。


「ちなみに俺っち、早晩こうなる事はわかってたんで対策しといたんすよね!」


 ノーチェのことだから割と早いうちに根を上げると推理していたローレンツは、猫の通り道にノーチェの魔力に反応する罠を仕掛けていたというのだ。


「まー、一ヶ月も保つとは思ってなかったんすけど」

「ノ、ノーチェさんもお年頃の女の子ですから。……少しは気にしてたんだと思います、よ?」

「罠にかかっても大人しくしてるかな……ノーチェって割と賢いし魔術だって使えるしさ」


 今でこそ家猫みたいな暮らしをしているが元は野生。攻撃魔術も使いこなす彼女なら罠くらいは破壊して逃げおおせそうではある。


「い、一応、魔法生物とかにも対応してる器具とか使ってるんで、多分、大丈夫……だといいっすねー……」


 たらりとローレンツの頬を冷や汗が伝い落ちた。



 ──一方そのころ。ノーチェは網でできた袋の中でもごもごしていた。木に吊るされているので身動きすることもままならない。


「ぐぬぅ、これ多分バンダナの罠なのだ……不覚!」


 あまりに焦がれていたからかレプリカだと気づかず、道端に落ちていたケーキに飛びかかった結果が今現在の醜態である。なんか魔術も使えないし。もごもご。


「ニセモノでワガハイを釣ろうなどと──まんまと釣られてしまったが! 仕方ないのにゃーー!!」


 誰か助けろー!と、声をあげる彼女だが、行き交う人々は忙しなく視線すら向けてこない。


「……せちがらい世の中なのにゃ。ワガハイこのまま美味しい食べ物も食べられず餓死するウンメイなのか……」


 辛いダイエット生活で精神がすり減っていた彼女は珍しく弱気だった。ご飯ならさっき食べたばっかりでしょ!と言ってくれるヒューイは今いない。


「ぅぅぅ。食べられないと分かると余計に腹が減ってきたのにゃ……」

「──あら、あなたお腹が空いているの?」

「うにゃ?」


 あわやごちそうの幻覚が見え始めたノーチェに声をかける人影があった。茶色の髪を後ろで団子にして留めた動きやすそうな格好をした冒険者風の若い女性だ。この学園都市においてはあまり見かけない風貌だが、ノーチェにとってはどうでもいい事なので気にもならない。重要なのは──


「──ニンゲン。ワガハイになんかごちそうしてくれるのか?」

「ネコさんのお話を聞かせてくれるなら、お礼は弾むわよ」

「おはなしとは……。ワガハイそこまでおもしろエピソードは持ち合わせてないが」

「しゃべるネコという時点で面白いと思うのだけれど……?」

「ワガハイ、おもしろ生物だった!?」

「うふふ。普段の生活についてでもいいからお話してほしいわね」


 話をしながら女性は網を木から下ろしノーチェを罠から解放してくれた。


「オマエにワガハイがお話してやる! 一宿一飯のオンギというやつにゃ!!」



 ノーチェと女性が去ること数十分後。罠が反応した事に気づいたローレンツがヒューイと共にくだんの場所へやって来ていた。


「うーん、おかしいっすねー。罠にかかった形跡はあるのに姿がない……」

「自力で脱出したなら罠が壊れててもおかしくないのにそんな感じはしないね」


 罠に使用されていたと思しき網は、わざわざたたまれて邪魔にならない場所に置かれていた。ノーチェにはできない気遣いである。網には破れた形跡もない。


「通りがかりの人に助けてもらったのかな?」

「あのノーチェさんが素直に助けを求めるとは思えないっすけど」


 ついであの無駄に偉そうな性格である。助ける気持ちもしぼむというもの。


「まさかマッドな学生さんに捕まっちゃったり……!?」

「捕まるどころか逆に叩きのめして逃走しそうなもんっす」


 何より気になるのはやはり綺麗に折り畳まれた網である。言ってはなんだがこの街の学生にそんな気遣いできるほどの余裕があるとは思えない。


「これは通りがかりの貴族……それも女性に連れ去られた可能性が高いんじゃないかと」

「ちなみになんだけど、この国における喋るネコの位置付けは?」

「フツーに魔物か魔法生物の括りっすねー」

「……使い魔狙いの誘拐、トカ?」

「それなら本人にその気がないだろうから抵抗はするっしょ?」


 抵抗したならなにかしらの跡は残るはずだが……。


「暴れた跡、ないね?」

「もしかしたら騙されて連れ去られた可能性は……あるっすね」

「ゴハンに釣られたら……付いていっちゃうねぇ、ノーチェなら」


 僕もやぶさかではないです。と続いた。ごはんに釣られたならば仕方ないという持論らしい。


「さすがヒューイさん。説得力が半端ないっすねー」


 疑うまでもなく事実なのでローレンツも呆れて半眼になってしまった。この主従は食べ物の執着で繋がってるようなものだし……というのは身内全員が認めるところである。


「これは貴族を当たった方が良さそう──ん? 使い魔といえば、ヒューイさんの魔術で探せないんすか?」

「………………あ」


 使い魔の行方を調べるのに、主人と使い魔の魔力の繋がりを利用した探査魔術を試すのは基礎中の基礎とかヒューイが知る由はなかったのであった。



 学生に人気のオープンカフェ。その一角。


 人型をとったノーチェの前には色とりどりの焼き菓子やケーキ、パフェといったスイーツがこれでもかと並んでいた。


「にゃぁぁぁーーーん♪」


 言葉を忘れるとは今の彼女の状態を指すのだろう。口から漏れ出すのは言葉にならないため息。目はキラッキラに輝いている。でもまだ手は出さない。彼女は今や『待て』のできる猫であった。


「にゃっ、にゃにゃん? にゃにゃにゃにゃにゃ??(これ、本当に? 本当に全部食っても良いのか!?)」


 このひと月、夢にまで見ていた光景にまじで言葉を忘れていた。過酷なダイエットはそこまで彼女を追い詰めていたのか……。


「ええと……食べてもいいのかって事なら、全部貴女に食べてもらうために注文したものだから……」

「にゃーーー!! にゃにゃにゃにゃにゃーん♪(恩に着る。オマエ良いやつ!!)」


 許可が出たので身近にあるものからがっついていくノーチェ。


「にゃーん。甘くてふんわりしてうまいのにゃー」

「そんなに嬉しそうにしてくれたなら、ご馳走した甲斐もあるわ」


 幸せそうな顔で菓子を平らげていく彼女に釣られて、女性の顔もほころんでいく。やはりスイーツはすごいとノーチェは思った。


「ふむ、そういえば名乗っていなかったな。ワガハイの名前はノーチェという」


 オマエの名は? と問うと。


「私はアナというの。冒険者と作家を兼任しているわ」

「サッカ? 絵巻を作ったりするのか?」

「私の専門は童話ね。普段は妖精が主人公のお話を書いているのだけれど……」

「妖精かー。種類にもよるが、あいつらウザくない?」


 可愛い見た目に反してイタズラ好きで群れる者が多いのでノーチェはあまり彼らが好きではなかった。嫌悪までいかないのは祖母がわりの存在もまた妖精の一種だからだろうか。


「あはは、今の妖精女王は割とまともなのだけれどね?」

「会ったことがあるのか。ばぁばの話だと妖精郷は関係者以外立入り禁止と聞いたが」

「特別に許可をいただいているのよ」


 以前に一度迷い込んで以降、色々あって出入りできる許可をもらったのだとアナは話す。


「そういえば女王もお菓子が大好きだからノーチェちゃんとは気が合うかもしれないわ」

「えー、それ競争相手が増えてるだけなのにゃー」

「あらまあ」


「──と。そういえばワガハイの話が聞きたいんだったか」


「じゃあまずは、ノーチェちゃんの種族から。まあ獣人あたりな気もするんだけれど……」

「ふむ。ワガハイの種族、種族かー……」


 初っ端からピンチである。ここで馬鹿正直に「ワガハイは野生の魔王なのだふははははー!」とか言わない辺り成長が見て取れる。アルフレッドの教育の賜物である。まあ元から進んで街のど真ん中で正体を明かす気はないのだが、こうまで直球に聞かれたこともないので答えに窮する。


「エーット……ワガハイ、人化できる化け猫的な……?」

「あら、まぁ」


 意外なことを聞いたという風に「そうだったの」と、ひとまずは納得してくれたらしいアナの様子にノーチェは胸をなでおろす。これで納得してくれなかった場合の案が浮かばなかったので。


「もしかして尻尾が2本あったりするのかしら?」

「……なんで2本?」


 これは妖精女王に聞いたのだけど、とアナは前置いて話しだした。


「東方にはネコマタという化け猫がいるらしいのだけど、尻尾が二股に分かれているそうよ」

「んー、ワガハイの尻尾は分かれてないが」

「……そのようね。種類が違うのかも?」

「まぁワガハイこの大陸の生まれだしな」

「世界は広いのねぇ……」


 しみじみ。しばしノーチェがスイーツを貪るだけの時間が流れる。「うまぁー」とか「ここが天国か!?」とかいうコメントがたびたび上がり、アナの表情もほっこり。


「そういえばこの街にはいつから住んでいるの?」

「住んではいないにゃ。ウチのアイボーが短期リューガク?とかいうのをしてるから着いてきただけだにゃあ」

「相棒さんがいるのね」

「ちょっと口うるさい時もあるが、ワガハイと互角の力を持っている頼もしいやつにゃ!」


 アナはえへんと我がことのように語る彼女を眩しそうに見る。これが青春ってやつねと一方的な感想を抱いていたりする。もしこの心の声がノーチェに聞こえていたなら、照れ隠しにこの店が吹き飛んでいたかもしれない。


「そういうアナはなぜこの街にきたのにゃ? ここ、頭でっかちばっかで冒険のぼの字もない……いやスリルとサスペンスはあったにゃ……」

「……ああ、この街の洗礼を受けてしまったのね」


 アナ曰く。

 この街には倫理観が吹っ飛んだ学者なども多いため、冒険者を必要とする騒動が何かしら起こっているそうである。うごうごフルーツなど序章に過ぎなかったのだ!


 とはいえそれを知っている冒険者もそう多くはないために穴場のような扱いらしい。


「たまに洒落にならない騒動が起こることもあるけれど、良い稼ぎになるのよねぇ……」

「……まあ先立つモノがなければおやつも買えないからな、仕方ないのにゃ」


 しみじみとつぶやく二人。


「あーーーっ! 見つけたぁぁぁ!!」

「あーあ、こんなにスイーツ貪り食っちゃって……ダイエットが水の泡っすよ……」


 空になった皿の山をめざとく見つけたローレンツがため息をつく。


「げっ!? アイボーにバンダナ!!」


 ──クッ、もう逃走がバレてしまったか!


 改めて逃げるにしても距離を詰められすぎている。何より目の前のスイーツたちを見捨てて逃げるのはいかがなものか。


「……あら、噂の相棒さん──ってヒューイくん?」

「あれ? もしかしなくてもアナさん……?」


 知り合いっすか?というローレンツの問いに、文化祭準備の時にお世話になったのだと話すヒューイ。


「冒険者ってお聞きしてましたけど、なんでこの街に?」

「ノーチェちゃんにも話したけれど、この街って少しだけ物騒でしょう? 実入のいい依頼が多いのよ」

「………………少しだけ?? めっちゃやばい気がしますけどもー」


 先日ヒューイたちが遭遇した植物園のうごうご植物による被害は、行方不明者怪我人盛りだくさんで割とシャレになっていなかった。救出が遅れていれば死者すら出ていたかもしれない。


「倫理観がぶっ壊れてる連中の所業は予測がつかないっすからねー……」

「金銭感覚の崩壊も相当なものだから、こちらとしては助かるけれどね」


 意外や意外、研究者たちの金払いは良いのだそうだ。領主が学術都市の研究事業に力を入れているおかげで困窮している者があまりいないというのもあるらしい。特許バンザイ。


「それにしても逃走、ってノーチェちゃん一体何をしたの」

「三食カリカリ生活に嫌気が差して……」


 改めて問われると、野生の魔王を自称する者としては情けない理由で逃げ回っていると思い至ったらしいノーチェの顔は赤い。


「猫なら一般的な食生活だと思うのだけれど……」

「ノーチェは人と同じゴハンも食べられるのでー」

「なるほど。でも食事制限するほど太っているようには見えないわよ?」

「…………え?」


 お腹のお肉がつまめるのですがー。という一同の主張にアナは──


「これくらいなら誤差の範囲でしょう。無理な食事制限ダイエットはむしろ健康を損なってしまうわ」

「ふっくらしててもいいのか……にゃ?」

「──そもそも、最近の若い子は痩せ過ぎなのよ!」


 唐突に持論を展開し始めた。


「ガリッガリの皮と骨だけみたいな格好じゃあ冒険者はやっていけないわ!!」

「ワガハイ、冒険者じゃなくてネコだけどにゃー」

「でも体が資本なのは同じでしょう?」

「そうだにゃあ。ヘロヘロな姿を子分たちに見せた日にはボスの座が危うくなってしまうなー」

「そう、つまり女の子はぽっちゃりしてる位がちょうど良いのよ!」


 わかるわね? と同意を求めてくる彼女の勢いの強さに、ヒューイたちは頷くことしかできなかった。



 なんとかアナを落ち着かせ事情を説明した一行。


「それじゃあノーチェちゃんはヒューイくんと使い魔契約をしている、と」

「まあ色々事情がありましてー……」


 ヒューイとしてもノーチェが魔物かつ最上級の魔王だなんて言えるはずもなく。しかも理由が魔物避けの結界がうるさかったからだなんてもっと言えない。


「アナさんは資金稼ぎで街に滞在してるんですねぇ」

「ええ。本を出版予定なのだけれど、実家からの援助が見込めないのよねぇ」


 彼女の実家としては「貴族の勤めも果たさずに道楽にふけるとは!」ということらしい。ゆえに自力で資金を稼ぎつつ執筆活動をしているのだそうだ。出版社探しから販促まで忙しい日々を送っているとのこと。


 それほどまでに彼女が入れ込んでいる本にヒューイは興味が出てきた。


「どんな本を書いてるんですか?」

「童話を少し、ね。妖精と人族のお話なの」


 『童話』で『妖精と人族の話』と聞いてヒューイの脳裏に引っ掛かるものがあった。だが何が引っ掛かっているのかわからない。ごく最近どこかで聞いたようなそうでないよう。そして妖精さんかぁ、あの残念な妖精さんかぁ……。


「今日ノーチェちゃんにお話を聞いてたのも、本のネタになったら良いなと思ってのことよ」

「ノーチェは妖精とかじゃないですけど。まぁネタには事欠かないのかな……?」

「どういう意味にゃ!? ワガハイそんなネタまみれな猫生は歩んで無いぞ!」


 魔王が猫型だったり人型とってる時点でネタでは?と思ったが賢明なローレンツは黙っておいた。そもそも魔王が人間と仲良く共生できているのがおかしいことなので。


「それにしても妖精さんかぁ……」

「ヒューイさん、なんか含むところがある感じっすね」

「いや、中の人の記憶的に人族と仲良くなる妖精さんって異端だったような……って」


 実は中の人、妖精さんのオトモダチがいたのだが……。

よくよく思い返してみるとその妖精さんははぐれ者だったのだ。


「妖精は基本的に妖精同士で行動するから、他の種族とは馴れ合わないとかナントカ」

「それは先代女王の時代ね。今の女王は交流派なのよ」

「代替わりしたんですか?」

「ええ、何十年か前のことらしいけれどね」

「というかそれを知ってるアナさんって……」


 妖精の内情に詳しいアナに疑問を覚える一同。それに気がついたのかアナは「やっちゃった」という顔をして、観念したように白状した。


「あー、ああ。今の女王とはお茶飲み友達で、ね」

「お茶飲み友達」

「あの方はお茶菓子に目がなくってね」

「お茶菓子」

「お土産の対価に若かった頃の体験を話してくれるのよ」

「若かった頃とは」


 妖精女王は一体何歳なのか……気になる。若い頃ということは今は年老いたおばあちゃんなのだろうか?


「まあ見た目も中身もまだまだ若いんだけれどね」

「それ成長がないって言ってませんか……?」

「女王は妖精の中では落ち着いているほうだと思うけれど、妖精自体が成熟とは無縁の存在だから……」


 フォローすればするほどボロが出てくる妖精の実態。ヒューイ的には「まあそんなもんじゃない?」程度の印象ではあったが、彼らに憧れを持つものならどうか。そういえば身近に妖精さんに夢を抱いていた女の子が身近にいたなとヒューイは思い至る。


「アステルちゃんがここに居なくて良かっ…………あーーーーっ!!」


 ついでにこの街に着く前に彼女とした会話も思い出した。妖精と人間の友情を描くとある童話作家のこと。


「アナさん!! アナさんって……!」

「うん? 私がどうかした?」

「童話作家の……あ、あ、アナベル・へーレン!!」

「ええ、そうだけど……今更すぎないかしら」


 ある意味運命の出会いであった。


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