表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
性悪貴族?なにそれおいしいの?  作者: ぽて
ドキドキワクワク学外研修編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/45

閑話 技の名前



「技名が欲しいです」

「なんだ、唐突に……」


「エルンスト君の武技には『カマイタチ』っていうかっこいい技名があるのに、僕のには特にないのでかっこいい技名が欲しいです」


「普通に『発勁』とかでいいだろ?」

「ありきたりなので、もっとかっこいいのが良いです」


 ——書き文字とセリフが違う感じのやつで。


 そんなヒューイの無茶振りに言葉を失うアル。「おま、それ数年後に思い出してアイタタタタってなるやつ——!!」とか、言えない空気。男子(と一部の女子)なら誰もが一度は患う奇病である。


「…………」

「きょーかん、何かないですか?」

「ヒューイ、悪い事はいわない。やめとけ」


 後悔するのはお前だぞ、と言外に想いを込めた真心溢れる言葉だった。


「きょーおーかーんー」

「ダメなものはダメだ。そんな事したら、お前が技名を叫ぶたびに俺が(精神的に)死ぬ!」

「意味がわからないです?」


 ヒューイにアルの説得は全く届いていなかった。彼は「きょーかんが何を言ってるのかわかりません」と首をかしげている。そこには世代間の壁が立ち塞がっていた。経験者と未経験者という名の壁が。


「きょーかーん、贅沢はいわないから、とにかく何か! 何か無いですかっ?」

「——烈破……とか?」


 こうなるともう、何かしらの反応を返さなければヒューイは止まらないだろうと、アルは観念した。そしてちゃっかり考えていた候補の中から、比較的にダメージが低そうなものをひっぱりだした。


「……むぅ。カッコいいとは思いますけど、僕の希望とちがいますよね?」

「ばっ、おまっ、俺にマジで死ねっていうのか!?」

「だからなんで技名決めたらきょーかんが死んじゃうんですか?」

「恥ずかしいからだよっ——って言わせんな!!」

「カッコいいのに……?」

「……オトナにはな、羞恥心という物があるんだ」

「シューチシン、ですか。僕にもありますけど、別に恥ずかしくないですよ?」

「あるのかよ!? って、黒歴史確定事項が恥ずかしくない時点でお前に羞恥心は無ぇよ!!」


 勘違いだ勘違い! とまくし立てるアル。


「あー、もう。そもそも自分の武技だろうが。自分で考えようとは思わねぇのか?」

「——あ」

「おい」


 言われて初めて気がついたという顔になるヒューイ。


「じゃあ、アドバイス! アドバイス下さい!」

「アドバイス、ねえ……」


 本気でこの話題には関わるのすら嫌だったが、答えない限りは解放されなさそうである。


「とりあえずかっこよさげな単語繋げていきゃあ良いんじゃね?」

「ふむふむ。かっこよさげな単語、と」

「後はまあ、異国の言葉とか使うのもアリだな」

「ふむふむ。異国のことば、と」

「——以上だ。後は自分で頑張ってみろ」


 熱心にメモをとるヒューイへ「俺はこれ以上関知しない」との言葉を残してアルは去っていった。これ以上の羞恥に耐えられなかったともいう。



 その後、ヒューイの武技には無事名前が付いたのだが……アルの心労は増すばかりだったという。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ