12 エピローグ
「わーい、やーすーみーだー。お休みだー!」
「つっても短期だから気をつけろよー?」
浮かれて走り回るヒューイに「あとで出席日数足りないとか言われてもどうにもできないからなー」と、微妙に怖い脅しをかけるアル。
「ところで教官。あの学者や道化師の件は今後どうなるんでしょうか?」
当然といえば当然の疑問をアルにぶつけるエルンスト。休みを前にした学生でありながら、生真面目な彼らしい質問。
「まー、あれだけのことをやらかした訳だし当然騎士団預かりだな。近々、指名手配もかけるとかなんとか……」
「なんだか曖昧な答えっすねー」
もごもごとハッキリしない返答のアルにローレンツの野次が飛ぶ。
「一応、機密事項なんだよ! ……多少は関係あるってんで教えてもらえたけどなぁ!」
いわゆるオフレコというやつだ。あと一歩というところで因縁の相手に逃げられた学生たちに気を回してくれたハインツ気遣いの賜物である。さすができる紳士は違う。
「……とりあえず、今後は余程の事が無い限りはあいつらと戦う事は無いだろうな」
「余程の事、とは……例えば何があるんじゃ?」
フェルがアルに問う。
「学徒動員が掛かるくらい大量の魔物が出て、かつ奴等が俺たちの近くに潜伏してた時……ぐらいじゃないか?」
「それって、もう国存亡の危機とかなんじゃあ……?」
「まごう事なく危機じゃなぁ……」
かなり限定された状況である。特に後者の条件だと、もうメンバーの中の誰かがターゲットにされていない限りはありえない。
「ま、流石にないだろ…………無いよな?」
あの学者の無駄に高い技術力と目的を考えれば、前者の可能性が皆無とは言い難い所であるが……。
「………………タコ技術、応用」
「やめろテオドール! 不吉な予言は止めてくれぇぇぇ!!」
「ああー、あれ使ったらあり得るよねぇ。国存亡の危機」
「ヒューイお前も止めろよ! 本当になったらどーすんだよ!?」
「きょーかん知らないんですか? あえて言葉にする事でフラグをクラッシュするという高等てくにっく!」
「俺はコトダマ派なんだよ!!」
フラグクラッシュ派とコトダマ派。その間には超えられない谷があった。
「でももう言っちゃいましたしー」
そもそも最初にフラグ立てたのは教官ですよね? というヒューイの言葉で、はじめて事態に気付き顔を真っ青にするアル。
「あああああああっ! キイテナイっ、俺は何もキイテナイしイッテナイからなあぁぁ!」
学者や道化師との縁が切れたかどうか。それは時間が経たなければ分からない事である。だが敵の目的が『魔王を人工的に作り上げること』で、こちらには『プライドの高い天然モノの魔王』がいる時点で、縁の切りようがない事に誰も気づいてはいなかった。……今はまだ。
活動報告にあとがきっぽいものとかのせてるので、そちらもドウゾ!
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